今日のこの辺りは

雨が降ったり止んだりの

ちょっぴり肌寒い陽気でございました。


 まぁ、お決まりではございますが

夏の終わりに涼しくなってまいりますと

物寂しい気持ちになってしまいますね。


 

 さてさて今日は、夏休みに子ブタちゃんが

悲しくなってしまったお話をしようかと思いますので

お付き合いくださいませ。



 夏休みの一か月半の間

諸事情により子ブタちゃん達は山の方に、

私は町の方にと離れて暮らしておりました。


子ブタちゃんには

夏休み前から大切に土の中に眠らせていた

カブトムシの幼虫がおりました。


そのカブト虫の幼虫は雌の成虫になって

無事に土の中から出てきました。


そして、子ブタちゃんはそのカブト虫を

ボニーと名付けて、大切に飼育をしておりました。


夏休みに入り、山の方に行く時にも

子ブタちゃんはボニーの入った昆虫用容器を

大事そうに抱えて連れて行きました。


子ブタちゃん達が山の方に行ってから

数週間も過ぎたある日


仕事を終えて、携帯電話を見てみると

留守番電話にメッセージが入っている事に

気が付きました。さっそくそのメッセージを

聞いてみると。


「母さん、今日は悲しいお知らせがあります。

 カブト虫のボニーが死にました。

 なぜ彼女が死んでいると分かったかと言うと、彼女は

 仰向けになったまま動かなくなっていたからです。


 きっと彼女の寿命だったのだと思います。

 悲しいけれど、虫の一生は短いので仕方がないですね。


 母さんが次に山の方に来る時には、

 ボニーのお葬式をしようと思うので参加してください。


 僕は早く母さんに会いたいです。お休みなさい。」


至極真面目にそして丁寧な語り口で

メッセージは残されていました。



そのメッセージを聞いた私の気持ちは



 子ブタちゃんの真面目さ加減と丁寧さ加減が

可笑しい反面、とても悲しいのだなと伝わってくる

切なさが入り混じり、 そして

昆虫の死が大そうな事にも成り得る子供の小さな世界に

その昔は自分も住んでいたのだぁ、と。


可笑しさ と 悲しさ と 懐かしさ と …


何とも言えない気持ちが心の中を、ざわざわと

通り過ぎて行ったのであります。



 数日後、私は子ブタちゃん達を訪ねて

山の方に行きました。


子ブタちゃんは留守番電話に残したメッセージの

通りにボニーと、いつの間にやら増えていた

他二匹の雄のカブト虫のお葬式を準備していました。


そして私もそのお葬式に参列いたしました。


三匹のカブト虫のお葬式は、雨の中しめやかに

執り行われ、私達は三匹のカブト虫を静かに

見送りました。細やかだけれど良いお葬式

だったと思います。


 子ブタちゃんは暫くの間

悲しそうにしんみりとしていたので、

大丈夫かしら?と少し心配いたしました。


が...



子ブタちゃん、外で遊んでくる!と駆け出して行き...

バケツを抱えて帰って来ると、


「母さん!カニがいた!カニを捕まえたよ!

 名前はピンサーにする!」



とても嬉しそうにかまぼこをそのカニに与えておりましたました…。


何の心配もいらなかった様子でございます。



 






 その人は言いました 


「子供は出来なくてもいいかなって。」と


その人は明るく言いました。


たくさん悩んで、たくさん考えて行き着いた

言葉だったのでしょう。


欲しくても授からず


繊細なご主人を傷つけたくないと思う事

無理しなくても良いと思う事

その人は、人知れず一人で考えた事でしょう。


そして・・・・


ようやく明るく言えるようになったのでしょうね、


「子供は出来なくてもいいかなって。」と



そう言える様になっても人は言いました


「子供は可愛いよ、

 あなたも諦めないで頑張って。」


良かれと思って言われた

チクリと来る言葉。


「あなた子供いないでしょ?

 あ~、やっぱりね。」


悲しくて、悔しい言葉。


そんな言葉たちを、奥歯で噛み砕いて飲み込んで・・・




その人は頑張り屋さんで辛抱強い。


毎日一生懸命に頑張っているから


ご褒美をもらいました。



赤ちゃん、9週目。


良かったね、良かったね。



赤ちゃん

あなたはとても素敵な人をお母さんに選びましたよ。



本当に良かったね。








今日のこの辺りは


空に厚い雲がかかりつつも

その雲の薄い所から日差しが

透けたりして、なんだか素敵な

空模様になっておりました。



いやはや、梅雨でござますね。



毎朝歩く子ブタちゃん達の通学路、

さわさわと木々が立ち並んでおります。


晴れた日には、生い茂った緑が

風に鳴り、目にも優しくその姿を

主張している様に見えるのであります。


が、


この梅雨のある朝、

ふ、と気が付いた事がございます。



木々のその幹です。



日頃は葉の緑の美しさの中に

ひそっりと佇んでいるのですが


梅雨の雨に濡れて

その雨を全身に吸い取り

それは黒々とずっしりと

幹のその存在を語っている様子。



まるで墨絵の中のそれの様に。



雨は

木々の、その身を立派に支える幹の

堂々とした貫録を称えているかの様に。


雨の朝は

雨と幹達が刷いてくれた墨絵の中を

歩いている様な、それはそれは

美しい様子なのでございます。