「box」と円熟の芸について | Carlos Danger Is Here

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ヘイナーウ!

世の中ではよく、円熟の芸とかいいますね。伝統芸能や音楽の世界で、何十年もの経験を積んだ人の仕事は、芸が研ぎ澄まされちゃってキレキレで、見ていてものすごく面白い、とかいうことです。

 

でも、マンガとか小説の世界では、円熟の芸というのは滅多に存在しないような気がする。ほとんどみんな、年をとると駄目になっちゃう。エンタメ作品を創造するというのは、体力仕事だからかもしれない。

 

が、俺が今年読んだ作品には、円熟の芸といえるのがいくつかあった。一流のENTERTAINMENTとしての迫力を備えながら、今までの経験の厚みがにじみ出ているような作品。

 

小説では、山田正紀の「ここから先は何もない」。山田先生は若々しく回春され、ファンとしては喜びで泣いちゃうよね。

 

マンガでは、きのう読んだんだけれど、諸星大二郎の「box」。これは、マジで凄い。凄い点が千箇所くらいあるんだけれど、イチイチ書くとネタばれになってしまうか。二つだけ書かせていただくと、キョウコさんのキャラは今までの諸星作品のヒロインの誰にも負けないくらいイロっぽい。あと、ジェンダーというトピックについて、最先端を走っているね!

 

人生の意味というのはよく判らないことなのですが、結構、人間というのはこうした作品をエンジョイするために生きているのかもしれません。どっとはらい。