私をベアーズに連れてって。
「小太郎!」
右手に持っている銃の硝煙を口で
吹いて、ばあちゃんがオイラの名前を
勢いよく呼んだ。
「な、何だい?」
ばあちゃんは銃をオイラに渡すと
バットを振りはじめた。
「まだベアーズでやってるのかい?」
その話か。オイラ小学校6年に上がって
ついにベアーズでレギュラーになる
ことができたんだ。ばあちゃんが帰って
きたら自慢しようと思ってたんだけど・・。
「もしかして・・・」
オイラは胸がドキドキしてきた。
「ああ、行くよ。明日練習だろ?]
やっぱり。
1年前のあの悪夢がオイラの頭に甦る。
「ばあちゃん、もう勘弁してくれないかな。
みんなの練習もあるし、また同じことに
なったらオイラもう・・・」
するとばあちゃんはスイングをやめて
オイラに一通の手紙を差し出した。
・・・何だろう?
「これは?」
オイラはその手紙を受け取って
ばあちゃんに聞いた。
「読んでみるといいさね」
ばあちゃんは穏やかな目でオイラに
手紙を読むようにすすめる。
とりあえず読んでみよう。
どれどれ・・・
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小太郎くん
おばあちゃんをベアーズの練習に
連れていって欲しい。
今の彼女ならかなりいい勝負ができる
はずだ。これは僕の記録に誓って言うよ。
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何か子供が書いたような下手くそな字だな。
誰からだろう?
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イチローより
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ウソくさっ!
何でこんな手紙をイチローがオイラに
書くんだよ!意味が分からん。
「ところで・・・」
そこで母ちゃんがまたおそるおそる
ばあちゃんに話しかける。
銃をぶっ放されたばかりだというのに
チャレンジャーだな。
「おばあちゃんはどうやってむこうに
渡ったのですか?パスポートは持って
いなかったはずですが・・・」
・・・ん?
そういえば・・・。
「簡単さね」
ばあちゃんは、何だそんなことか
といった感じで答える。
「船さ」
・・・船?
「戦中の日本とは違って今はあちこちの
港から船が出てるからね。色々な荷物が
乗っている船に適当に乗ったのさ」
密航かよ!
ばあちゃんがどんどん犯罪者になって
いくなあ・・・。
「これが乗せてもらった船の船長さ。
いい男だろ?手土産ももらったぞ」
そう言うとばあちゃんはいかにも
海賊!っていう感じの船長と仲良さげに
映っている写真と、小さな袋に入った
白い粉をオイラに渡す。
「証拠写真・・・この・・白い粉は?」
すごく危ない香りのする粉だ。
「何でも極楽浄土にいける・・・」
「あ~っ!!いいっ!やっぱいいよ
ばあちゃん、聞きたくない」
この話をこれ以上聞いちゃいけない
オイラは直感的にそう思ったんだ。
