思わず個人的に、馬場さんにメールせずにはいられなかった。
なんというタフなアルバムが出来たんだろう。
いろんなジャンルの、音楽への愛情が丁寧に、ふんだんに盛り込まれている12曲。
そこには僕らが小さい頃から聴いてきた、実家の居間や寝室、台所やらにまで、いつもそばにあって愛してやまなかったロック、ポップスへの愛情や感謝、憧憬などいろんなものが溢れている。
前作「キャンディー工場」は問題作だった。手作り感、スピード感、ラフ感満載の、ものすごいボリュームの2枚組。
インターネットに音楽が消費されていく時代の中で、僕らはどこへ向かっていくのか、という混沌や迷いや、叫びまでもが収録された議事録のような。時代のスピード感に一石を投じた事象になっていたと思う。
桑田(圭祐)さんが「平凡」という楽曲を高く評価した、というエピソードにも表れている、と思う。
同じ時代に、同じ視点で闘っている感、を感じたんじゃないだろうか、と思う。
そして打って変わって今回のアルバム。あえてCDと呼びたい。
先行シングル配信リリース、という手法ももちろん取り入れつつも。CDである意義、パッケージされている意味が、主張がはっきりある。これは「良いアルバム」だ。
ハイファイでクリア、くっきりした音質。淀むこと無く録音され、丁寧にミックスされた演奏。
美しいメロディ、切ないメロディ、嬉しい気持ちや寂しい気持ち、いろんな要素が職人技的に磨き抜かれて各楽曲に散りばめられ。曲順に至るまで、一切の抜かりもない。「風の中の I Love You」がここで来ることで、僕の個人的涙腺は崩壊する。
このCDに込められている音楽は、巡って来る様々な時代を見据えながら、共存しながら、諦めることも嘆くことも、迎合することも流されることもなく、ただ1人、自分の音楽だけを武器に闘って来た馬場さんにしか見れない景色。
きっと馬場さんにとっては、当たり前のことなんだろう。自分の音楽を、ただ演りたいように演るためだけに日々、ひたすら頑張っているだけなんだろう。あまりすごいすごい、と言ってもご本人もこそばゆいだけだろう。
でもやはり。今のこの時代にこのCDを堂々とメジャーレーベルからリリース出来る、馬場さんの音楽的体力は本当にすごい。強い。感動的なことだ。
僕らが大好きだった音楽、大切だった音楽。
よりタフに、力を蓄えながら次の場所、次のステージへ向かっていこうとし続けている馬場さんが、僕らにとって大切だった音楽を、取り戻そうとしてくれている、音楽とはこういう素晴らしいものだったじゃないか、とあらためて問いかけている、そんな気にすらなるんだ。
音楽はイメージだ。何か風景や情景を喚起させる、とか懐かしさを感じる、とか元気をもらう、とか。当然ながら実態は有って無いようなもの。
しかしながら、メロディがあってコードが付いて、演奏があって言葉があって、録音されてパッケージされてCDとなる。
やはり歩んで来た、積み上げて来た経験、が無ければ、それらを全て良い形で表現することは出来ない。
音楽、だけじゃないんだろう。いろんなモノ創りにおいて。
丁寧に、愛情を注ぎ込んで創る、ということが簡単に出来なくなって、何だか困ってしまってばかり、嘆いてばかりいる時代、僕ら。
でもその中から「頑張ればまたやれるんだよ」という、ごく当たり前のメッセージを一心に投げ続けて来た詩人が。またこの1枚のCDで、そのメッセージを体現した。
これはあくまでも馬場さんの道程であって決して奇跡ではないんだろうけど、でもやはり奇跡なんだとも思う。
僕らはその奇跡を、間近で目撃しているんだと思う。
今回は録音の方にもずいぶん参加させて頂いています。2曲をのぞいて、かな。
ほとんどの曲で、と言ってもいいでしょうか。
コンサートツアーなどももちろんですが、馬場さんの歴史に、音楽に参加させて頂けるのはとても光栄なことです。
この後、ギタリストとしての視点や、もうちょっと具体的な、例えばスタジオでのことや専門的な話も交えて、もう少し書いてみようかなとも思っています。
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