《S-400》トランプ大統領がトルコに強硬策を取る理由 | にゃんころりんのらくがき

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トランプ大統領がトルコに強硬策を取る理由 牧師拘束だけではない根深い問題

Presidential Press Service via AP, Pool

 

 アメリカとトルコの関係が危機的状況に陥っている。共にNATO(北大西洋条約機構)加盟国として良好な関係にあった両国だが、近年はクルド人問題などで対立。最近はライバルのロシアからトルコがミサイル防衛システムを購入する契約を結んだことや、トルコ当局にアメリカ人牧師が政治犯として拘束されたことを端緒に、お互いが追加関税措置を取るなど報復合戦に発展。貿易戦争の様相も呈している。米識者からは関係は悪化しているのではなく、既に危機に陥ったとする声も上がっている。

 

◆トランプ大統領を激怒させた「ミサイル購入」と「牧師の拘束」
 トルコは第2次世界大戦後の冷戦時代からNATOに加盟し、西側の一員として「自由と民主主義」という価値観を共有し、外交政策でも西側と歩調を合わせてきたと、元米国務省政策企画局長のリチャード・ハース氏は語る(オピニオンサイト『プロジェクト・シンジケート』)。しかし、2000年代からエルドアン現大統領率いる公正発展党の事実上の独裁制が続き、西側がトルコとの同盟関係の拠り所とする価値観と利害の共有の構造は崩れている。

 

 昨年、トルコはロシアからS-400地対空ミサイル防衛システムの購入を決定。旧ソ連時代、NATOの不倶戴天の敵であったライバルからの武器購入は、重大な裏切りとみなされ、米議会で大問題になっている。折しも、トルコはアメリカから最新鋭戦闘機F-35を大量購入する契約も結んでいるが、これがさらに問題を複雑にしている。ロシア製迎撃ミサイルと米国製最新鋭戦闘機を同時に持つことで、F-35のミサイル防衛網に対する弱点が丸裸にされ、機密がロシアやその友好国にも流れるのではないかという懸念が広がっているのだ。

 

 もう一つの直近の問題は、米国人牧師の拘束だ。トルコ当局は、2016年のエルドアン政権に対するクーデター未遂事件に関わったとして、アンドリュー・ブランソン牧師をテロリズム、スパイ行為、破壊活動の罪で逮捕・拘束。米国の釈放要求を拒否し続けている。ブランソン牧師が所属する福音派はトランプ大統領の重要な支持基盤であり、トランプ政権はその救出を最重要課題の一つにしている。そのため、この件には一市民の人権問題を超えた政治的思惑も絡んでいるとされる。

 

◆トランプ大統領のジャブにエルドアン大統領も応酬
 トランプ大統領は今月、上記2点を主な理由に、既に3月にかけていたトルコ製の鉄鋼とアルミニウムの関税を2倍に引き上げる追加制裁を発表。トルコは現在、深刻な通貨危機を迎えており、これがトルコ経済をさらに追い込むと見られている。トランプ大統領は制裁を発表した当日、「彼らの通貨、トルコリラは我々の強力なドルに対して急激に価値を下げるだろう」とツイート。CNBCは、これを「新たなジャブに過ぎない」と、アメリカとトルコは既に貿易戦争の真只中にあるというスタンスで報じている。

 

 対するエルドアン大統領は、米国による「様々なキャンペーンを相手にしてはいけない」と牽制しつつ、石炭、紙などの米国製品に関税をかける報復措置を取っている。エルドアン氏は「彼らがドルを持っているのなら、我々には国民と神がついている」と発言し、口撃でもトランプ大統領の「ジャブ」に対抗している。

 

 ハース元米国務省政策企画局長は、「名ばかりの同盟関係は、緩やかに、しかし確実に悪化している」と述べる。そして、「トランプ政権がトルコに対抗したこと自体は正しい。しかし、間違った問題に対して間違った対応を選んでしまった」と米側の対応も批判している。アメリカが今やるべきことは、トルコ国内の空軍基地の使用をやめ、F-35の売却も凍結し、計画中のトルコへの核兵器配備を再考することだとしている。

 

◆「エルドアン政権と決別する時が来た」
 そもそも西側とトルコの対立を深めているのは、クルド人問題だ。アメリカがシリア内戦でクルド人勢力を支援する一方、自国のクルド人に弾圧を加えてきた歴史を持つトルコは、シリアのクルド人もテロリストとみなし、敵対するイスラム原理主義勢力を支持している。反米姿勢を取るイランとの接近やロシアからのS-400の購入は、この対立軸をさらに明確にした。

 

 インデペンデント紙は、「エルドアンの本当の罪は、ロシア製のS-400ミサイルを買い、アメリカのクルド人への支援の申し出を拒否したうえ、トルコ国境からシリアへのイスラム原理主義武装勢力の流入を許していることだ」と書く。ハース氏も対立の根本的な要因はトルコ側の行動にあると同調している。

 

 エルドアン大統領は、アメリカが「一方的な外交」とトルコへの「蔑視」をやめなければ、「すぐにも新たな友人と同盟国を探す」と米メディアを通じて警告している。ハース氏は、これは脅しではなく、既に実際に行われていることだとし、「アメリカとヨーロッパはこの現実に合わせる時が来ている」と述べる。それはつまり、エルドアン政権と決別し、新政権の誕生を待つことだという。トルコが西側の一員だという価値観は、既に崩壊したようだ。

Text by 内村 浩介

 

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S-400 (ミサイル)

S-400 のTEL車両 2009年5月9日のモスクワ戦勝記念日記念パレードの際の撮影

 

S-400 「トリウームフ」(ロシア語: C-400 «Триумф»、NATOコードネーム:SA-21 「グラウラー」)は、ロシア連邦で開発された多目標同時交戦能力を持つ超長距離地対空ミサイルシステムである。

なお、「トリウームフ」とは「大勝利」という意味。



概要[編集]
アルマーズ・アンテイ(ロシア語版)により、S-300 の改良型として開発された。ロシア連邦軍が最初に採用している。以前は S-300PM3(С-300ПМ3)もしくは S-300PMU3 (С-300ПМУ3)として知られていた。

このミサイルシステムは性能で従来のS-300シリーズを凌駕し、またアメリカ合衆国のパトリオットミサイルに比べ少なくとも二倍の射程距離を誇るとも言われている[1][2]。

ロシアの資料によれば、S-400は400km先の六つの目標に対する同時処理能力を有しているとされる[3]。

さらには高次元の対ステルス戦能力も備えているとされる[4][5]。

S-400はS-300Pシリーズ用のミサイルが運用可能の他、9M96系列、48N6系列、40N6という3種類のミサイルを運用する。

9M96系列は短~中距離用で、元はS-300PMU2用に開発されたもので、弾道ミサイルへの限定的な対処能力がある。9M96E1と9M96E2があり、9M96E1は重量333kg、射程40km。9M96E2は重量420kg、射程120km。小型で48N6用キャニスター1本に9M96が4本入る。パトリオットミサイルPAC-3と類似点が多く、サイドスラスターを装備しており目標突入時にサイドスラスターの噴射で弾体を直接制御するモードを備える[6]。

48N6系列は中~長距離用で、最新型の48N6DMが開発されている。

40N6は長~超長距離用で、超水平線(OTH)攻撃を可能とするセンサーとデータリンクシステムを搭載し、航空機、巡航ミサイル、そして弾道弾迎撃ミサイル制限条約の効力で縛られるため限定的だが、射程3500km、秒速4.8kmまでならば弾道ミサイルにも対処可能である[7]。

S-400は将来的にはS-500(ロシア語版、英語版)シリーズによって代替される予定である。

開発[編集]
S-400システムの開発は1990年代末から開始された。ロシア空軍による正式発表は1999年1月。同年の2月12日にアストラハンのカプースチンヤールで行われた初試験が成功。この成功によってS-400は2001年の配備が決定した。

しかし同年、計画は事故により延期に直面する。2003年に配備への準備が整ったと明らかにされたが、しかし八月に二人の上級参謀によってS-400は陳腐化したS-300Pを用いた試験ではまだその段階には無いとの発表がなされた。

最終的に、開発終了は2004年2月だとされる。また同年4月に新型迎撃ミサイル48N6DMを用いた試験で弾道弾迎撃に成功した。

配備[編集]
報道によれば、標準的なS-400装備の大隊は8機の発射機と32発のミサイル、移動司令部から構成される[8]。将来的には23個師団にそれぞれ8から12機のS-400を2015年までに調達すると計画されている。[9]

2007年5月21日、ロシア空軍は7月よりS-400をモスクワと中央ロシアへ実戦配備すると発表した[10]。さらに情報では、詳しい配備場所はエレクトロスターリ近郊だと言われる[11]。

2007年8月6日、ロシアのテレビ報道はS-400を装備した最初の連隊がモスクワ州のエレクトロスターシ近郊で活動を開始したと報じた。ロシアの情報では、この連隊は特別目的コマンド(Special Purpose Command)、第1防空軍軍団、第9防空軍師団、第606"ゼニス"ロケット連隊であるとされ、モスクワと中央工業地帯の防衛を担っている[12]。

2008年2月8日、Vladimir Sviridov中将はロシア軍は北西においてS-300をさらに進化したS-400で代替すると発表した。これはロシアは彼らの弾道ミサイル防衛システムの主要要素を2020年ごろまでS-400に担わせることを計画していることを意味した[13]。

S-400の簡略化版も輸出市場を狙っており、中国はS-400の最初の購入国となった[14]。また、中国が開発計画の一部を担う可能性もあるとも報告されている[15]。

ロシアはアラブ首長国連邦とギリシャにも購入を打診した[16]。また、イスタンブールで開かれた第9回国際防衛産業フェアにおいて、トルコも購入に意欲を見せたとされる[17]。

イランのような国がこのミサイルの購入に意欲を見せることはアメリカの注意を呼ぶ。下院国家会議副議長ウラジーミル・ジリノフスキーは最優先でS-400をイランへ輸出することを促した[4]。このようなモスクワとテヘランの関係を強化するように見える動きに対しワシントンは対応に苦慮している[18]。

韓国はアルマズの支援を受けCheolmae-2と呼ばれるS-400の簡易版の開発を行っている。Cheolmae-2はアルマズ製多機能X-バンドレーダー車両、指揮管制車両、韓国版"9M96"ミサイルを装備した複数のTEL車両から構成される。主契約者はサムスン電子とタレス・グループの合弁会社サムソンタレス[19]。

2009年3月17日、RIAノーボスチはロシアがS-400を数年以内に輸出することは無いと報道した[20]。また翌日にはベラルーシが二個大隊分のS-400システムの輸入を正式に要請していたと報じた[21]。

インドやイランがこのミサイルの購入に興味を示しており、トルコでは長距離対空ミサイルの選考においてS-400とパトリオット PAC3を比較し2010年に決定するとされる。

2009年8月26日、ロシアの高級将校は北朝鮮のミサイル実験への対抗処置としてロシア極東にS-400を配備すると発言した[8]。2017年12月22日には、ウラジオストクで運用が開始された[22]。

最近の報道では20億ドル分の輸出契約がロシアとサウジアラビアの間に成立したとされる。この契約の元、少なくとも8機の発射機と32発のミサイルが購入された[23]。

2018年、カタールがミサイル購入に意欲を示したことに対し、隣国で対立関係にあるサウジアラビアが反発。サルマン国王は、フランスに仲介を求める書簡を送り、配備が行われた場合、武力介入を辞さない意思を表明した[24]。

ミサイル[編集]
S-400は400km先の空中目標の迎撃を想定している[2]。
弾道ミサイル防衛能力は弾道弾迎撃ミサイル制限条約によって制限されるギリギリの能力を有する。
ロシアの軍事情報に精通するCarlo Kopp氏はS-400の先進的なレーダーシステムは低RCS目標へも十分な性能を有すると主張している[25][26]。
レーダー探知距離は将来的に500~600kmへもなるとの説もある[2]
運用国[編集]
 ロシア - 2009年の時点で2個大隊、2010年には5個大隊以上が配備される。
 中国 - 2018年に配備[27]。
 インド
 ベトナム
関連項目[編集]
3K96 リドゥート -
本システムと並行で作られた艦対空ミサイル