CPFハムラ法で眼窩隔膜を1針縫っただけで再建と名乗るクリニックの話 | 失敗しないための美容相談ガイド~名医選び相談所・山口

失敗しないための美容相談ガイド~名医選び相談所・山口

全国の名医紹介はこのリンクか(コピペして下さい)または各記事内の文末メールフォームよりご連絡ください。
https://ws.formzu.net/fgen/S71676856/

眼窩隔膜を1針縫っただけで再建と名乗るクリニックの話

目の下の若返りを検討している方なら、裏ハムラという言葉を一度は目にしたことがあるはずです。経結膜アプローチで眼窩脂肪を移動させ、へこんだ部分に敷き直す。傷が表に出ず、脱脂だけでは解決しないゴルゴラインや涙袋下のくぼみに対応できる。理屈としては非常によくできた術式です。ところが今、この術式の名称だけが独り歩きしている状況があります。

 

具体的には、眼窩隔膜を1針縫い縮めただけの操作をCPF再建と称し、あたかも解剖学的な再建を行ったかのように説明しているケースです。骨膜には一切固定していない。にもかかわらず、術式名だけは本家と同じ看板を掲げている。

 

目の下のクマ改善ビフォーアフター

CPFと眼窩隔膜は別の組織です

議論の出発点として、ここを混同したままでは話が始まりません。

CPF(capsulopalpebral fascia/眼瞼牽引筋腱膜)は、下眼瞼の retractor、つまり下まぶたを引き下げる働きを担う機能的な構造物です。下直筋から起こり、下斜筋を包み込むように分岐して再度合流し、Lockwood靱帯を形成したうえで瞼板下縁へ付着します。つまり両者は、起始も付着も機能もまったく異なります。

 

  CPF(眼瞼牽引筋腱膜) 眼窩隔膜
起始 下直筋鞘 眼窩縁の弓状縁
付着 瞼板下縁 挙筋腱膜/瞼板前面
機能 下方視で下眼瞼を引き下げる 眼窩脂肪の前方脱出を抑える隔壁
性状 腱膜様で張力に耐える 薄い線維膜、加齢で菲薄化
損なわれた場合 下眼瞼後退・内反・下方視の障害 脂肪の膨隆(いわゆる目袋)
縫合の意味 機能再建として意味がある 支持組織としての強度は期待しにくい

 

この表を見ていただければ、眼窩隔膜を1針寄せることをCPF再建と呼ぶのが、なぜ用語として成立しないかは明らかだと思います。名前が違うだけではなく、そもそも縫っている場所が違うのです。


薄い膜に、脂肪を支える役目は負わせられません

眼窩隔膜は、脂肪の前方脱出を抑えるという意味では確かに支持組織です。しかしそれは、脂肪が本来の位置にある状態で、面として押さえているからこそ成立している役割です。

これを1針で縫い縮めた場合に何が起きるか。

 

第一に、張力が一点に集中します。薄い膜の一点に脂肪の重さと眼球運動に伴う圧が繰り返しかかれば、その部位が裂けたり、縫合糸が組織を通り抜けたりする、いわゆるチーズワイヤー現象が起こり得ます。加齢で菲薄化した眼窩隔膜であればなおさらです。

 

第二に、固定というより、通り道を狭めているだけという状態になりかねません。脂肪は移動先に留められているのではなく、単に戻りにくくされているだけ。時間経過とともに徐々に戻れば、術後半年で膨らみが再発した、あるいは移動させた部分が薄くなって凹みが再び目立ってきた、という経過をたどります。

 

第三に、中途半端な瘢痕拘縮のリスクです。隔膜を不用意に縫縮すると、下眼瞼の可動性に影響が出て、下方視での違和感や、笑ったときの動きの硬さとして現れることがあります。これは術後3か月から半年の時期に患者さんが訴える不満として、実際によく聞かれるものです。

 

カウンセリングで地雷を踏まないための質問リスト

質問 望ましい反応 警戒すべき反応
移動させた脂肪はどこに固定しますか 骨膜下ポケット、SOOF内など具体的な層を即答する 自然に落ち着きます、固定はしません、と曖昧
弓状縁は解放しますか 解放の範囲や程度まで説明できる 質問の意味が伝わらない
CPFはどの段階で扱いますか 切開の層と再建の要否を分けて説明する 隔膜とCPFを同じものとして話す
術後1年の症例写真はありますか 時期を明記した長期経過を提示できる 術後1か月までの写真しかない
戻りが出た場合の対応は 再手術の条件と費用を明示 まず戻りませんと言い切る

特に1つ目と3つ目が核心です。固定先を具体的な解剖名で即答できない術者は、その操作を日常的に行っていない可能性が高いと考えてよいと思います。

もう一点、地味ですが効果的なのが術後1年の症例写真です。裏ハムラの真価は長期経過にしか出ません。1か月の写真ばかりを並べているアカウントは、それ以降を見せられない事情があるのかもしれない、と一歩引いて眺めてみてください。


クマ取りの症例写真の読み方——加工では隠せない部分

症例写真は照明と角度でいくらでも印象が変わります。それでも、以下の点は比較的ごまかしが効きません。

  • 斜位45度の写真があるか。正面だけの掲載は、眼窩下縁の段差を見せたくないサインのことがあります
  • 下方視の写真があるか。CPFの扱いに問題があれば、下を向いたときの下眼瞼の動きに現れます
  • 笑顔の写真があるか。移動させた脂肪の固定が不十分だと、表情筋が動いたときに境目が浮きます
  • 同一の照明条件で並んでいるか。術後だけ影が飛ぶ照明になっているものは参考になりません
美容外科学会での発表を行っていて、解剖学的な知識が担保されている外科医を指名するのが賢明です。
 

✉メール mail@ba-consulting.org

美容整形医師の選び方と後悔しないためのポイント