人中短縮はシンプルに見えて実はかなり癖の強い手術です。どの術式を選んでもデメリットを完全にゼロにすることはできません。これは事実です。
鼻腔底の中に皮膚を入れ込むタイプでは人中は確かに短く見えますが、鼻腔底隆起いわゆる土手が消失するケースがあります。一方で一直線に皮膚を切る方法は隆起は残せても傷跡が目立つリスクが高くなります。ここは完全なトレードオフです。
皮膚を垂直に切開すると張力が一点に集中しやすく、時間経過で引っ張られた際に傷が広がりやすいと指摘する形成外科医は少なくありません。これに対して皮膚を斜めに切る方法では皮膚成分が温存され、創部がスライドしても上皮が張りやすく、色調差も出にくいというメリットがあります。
眉下切開で用いられる毛包斜切断法と考え方は同じです。斜めに切ることで皮膚が残り、結果として傷が目立ちにくくなるという理屈です。
| 観点 | 垂直切開 | 斜切開 |
|---|---|---|
| 傷跡の目立ちやすさ | 目立ちやすい傾向 | 目立ちにくい傾向 |
| 張力への耐性 | 弱い | 強い |
| 皮膚成分の残存 | 少ない | 多い |
| 色調ギャップ | 出やすい | 出にくい |
| 鼻腔底隆起 | 温存しやすい | 条件次第 |
学会報告でも切開角度と瘢痕の関係は繰り返し議論されています。Plastic and Reconstructive SurgeryやAesthetic Surgery Journalでは、皮膚切開の角度と張力分散が瘢痕幅や色調差に影響することが示されています。また眉下切開に関する日本形成外科学会の報告でも、斜切開による皮膚温存が瘢痕の視認性低下に寄与するという考え方が整理されています。人中短縮だけの特殊理論ではなく、形成外科全体で共有されている発想です。
結論として、人中短縮は術式名で選ぶ手術ではありません。デメリットは必ず発生します。その内容と確率を正確に説明でき、顔全体のバランスと長期経過を前提に設計できる医師かどうかが重要です。症例写真だけで判断せず、切り方や縫合設計まで説明できるかを基準に医師選びをしてほしいです。

