シンエック、ホントに必要?―美容外科の“アップセル”に惑わされないために―
「二重切開、眼瞼下垂、埋没法、ハムラ法、脂肪吸引にはシンエック必須です」
「これを飲まないと腫れが長引きます」
…カウンセリングでこう言われたこと、ありませんか?
確かにシンエック(アーニカ)は、術後の腫れや内出血を“軽くする可能性”があるサプリですが、医学的には“あった方が良い”程度。必須ではありません。
以下の比較表を見てください。
■ 脂肪吸引後に使われる主なダウンタイム対策の比較
| 項目 | シンエック(アーニカ) | トラネキサム酸(TXA) | ステロイド(デカドロンなど) | 圧迫・冷却・頭部挙上 |
|---|---|---|---|---|
| 作用機序 | 炎症抑制・微小血管の透過性を低下 | 抗プラスミン作用で出血・紫斑を抑制 | 炎症反応を短期的に抑制 | 物理的に腫れ・血腫を抑制 |
| 科学的根拠(エビデンス) | 顔面手術で腫れを軽減する可能性(小規模RCTあり)だが結果は一貫せず | 多数の臨床試験で紫斑・出血抑制を確認 | 浮腫軽減に効果あり。ただし紫斑は減らない報告も | もっとも確実で再現性の高い効果 |
| 効果の体感 | むくみ・内出血が1〜2日早く引く程度 | 紫斑の範囲が小さく、色の変化が早い | 初期の腫れが控えめになる | 見た目・回復スピードに直結 |
| 副作用リスク | ほぼなし(キク科アレルギーのみ注意) | 胃部不快感などまれ | 術後の免疫低下・皮膚菲薄化 | なし |
| 費用目安 | 3,000〜8,000円 | 1,000〜3,000円(保険外) | 数百円〜1,000円程度 | 無料〜圧迫具代 |
| 結論 | “あっても良い”が、必須ではない | 根拠・コスパともに優秀 | 一時的に腫れを抑えたい場合のみ | 全員が徹底すべき標準ケア |
■ 論文での位置づけ
・顔面整形領域でのメタ解析では、アーニカ投与群の腫れ・紫斑が「わずかに減少」。
・フェイスリフトや鼻形成では「皮下出血の範囲が縮小した」との報告があるが、統計的に確実とは言えない。
・脂肪吸引に限定したRCTはほぼなし。
・一方、トラネキサム酸や圧迫管理には明確なエビデンスと再現性あり。
美容外科の「アップセル」に注意
一部クリニックでは「シンエックを飲まないと腫れが倍になりますよ」と言って、高額なセット販売(1万円超)をすすめることがあります。しかし、国際的な形成外科学会(PRSやAesthetic Surgery Journalなど)の見解では、標準治療ではない=任意サプリメント扱い。
要するに、“あってもいいけど、なくても治る”ものです。
これだけは覚えておいて
・シンエックは“サプリ枠”であって“薬”ではない
・効果は小〜中程度、科学的に確実とは言えない
・圧迫・冷却・頭部挙上・減塩・睡眠の方が効果は絶大
・追加料金のアップセルに慌てて乗る必要なし
シンエックで1万円取るのは「医療的妥当性」ではなく「販売ビジネス」
シンエック(アーニカ)は医薬品ではなくサプリメント(ホメオパシー製剤)なので、原価は数百円〜千円台。
つまり、1万円で販売しているクリニックは
・利益を目的にしたアップセル(付加販売)
・“ダウンタイム短縮”を強調して心理的に買わせるマーケティング
を行っているケースがほとんどです。
世界的な形成外科学会誌(PRSやASJなど)でも、アーニカは次のように扱われています。
「術後の腫脹・紫斑を軽減する可能性はあるが、
科学的根拠は限定的で、標準治療とは言えない。」
つまり、
・“あっても良い”けど“なくても結果は同じ”
・標準的な外科医は「患者が希望したら出す」レベル
1万円取るほどの医学的根拠は存在しません。病院選びの参考にしてみてください。

