ミッドフェイスリフト後の「目の下の膨らみ」や「効果が分からない」という失敗例が報告されています。例えば3か月経って腫れが落ち着いてきても凹凸が目立つままというのは、単なる一時的むくみだけでは説明しにくく、いくつかの要因が考えられます。
考えられる原因
① 脂肪の偏位(脂肪の移動や段差)
ミッドフェイスリフトでは、頬脂肪(malar fat pad)を骨膜下や皮下で剥離し、吊り上げて固定します。
この過程で 眼窩脂肪・SOOF(suborbicularis oculi fat) の境界に段差が生じると、「目の下に膨らみ(ふくらみ・段差)」として残ることがあります。
特に、脂肪を均一に分散せずに吊り上げた場合、凹凸が顕著になります。
② 眼窩脂肪の突出(pseudoherniation)
もともと軽度の眼窩脂肪の突出があった場合、リフトで頬を引き上げても脂肪そのものが残るため、「逆に強調」されてしまうことがあります。
→ 補助的に 脱脂や脂肪再配置(ハムラ法) を併用しなかった場合に起きやすい。
③ 固定位置や張力の問題
リフトで頬の組織を「高すぎる位置」や「均一でない張力」で固定すると、目の下に組織が寄ってしまい、ふくらみとして出ることがあります。
術後の「不自然な段差感」はこれが原因のことも多いです。
④ リフト効果が感じにくい理由
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引き上げ量が少なかった
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骨格的に中顔面が長い/脂肪量が多いと、リフトだけでは劇的な変化が出にくい
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3か月時点では腫脹が落ち着いていても、リガメントが強く残っていると引き上げが制限される
学会報告・論文の知見
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Barton & Hamra らの報告では、ミッドフェイスリフト単独ではtear trough(ゴルゴ線〜目の下)への改善が限定的であり、脂肪移動やハムラ法の併用が望ましいとされています。
(Hamra ST. Arcus marginalis release and orbital fat preservation in midface rejuvenation. Plast Reconstr Surg. 1995) -
Mendelson らは、ミッドフェイスのリガメントを適切にリリースしても、眼窩脂肪の突出が残ると目の下の凹凸が強調されると指摘しています。
(Mendelson BC, et al. Surgical anatomy of the midcheek and malar mounds. Plast Reconstr Surg. 2002) -
日本美容外科学会の発表例でも、リフト単独よりも脱脂や脂肪移動を併用した方が、凹凸の改善率が高いと報告されています。
修正の選択肢(出来る外科医は限られる)
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脱脂+脂肪再配置(ハムラ法):突出する脂肪を再配置して段差をなめらかにする
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脂肪注入(マイクロ/ナノファット):凹みにボリュームを足して平滑化
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再リフト+固定修正:吊り上げ位置の見直し(ただし負担大)
「目の下の膨らみ」は
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リフトで頬が持ち上がったことで、眼窩脂肪やSOOFとの境目が強調された
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脂肪そのものの突出が残った
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固定のデザインが不均一だった
といった要因が重なっている可能性が高いです。修正を考える場合は、「脂肪の突出を処理する方向(脱脂・再配置)」を中心に検討するのが現実的になりますので、外科医選びを間違えないようにする必要があります。