失敗しないための美容相談所~整形ブログ・名医の条件・山口

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全国美容外科の医師選びを解説中。
①症例写真が綺麗=技術が高いは間違っている
②美容外科学会には2種類ある
③選んではいけない美容外科とは

鷲鼻(ハンプノーズ)および魔女鼻(ドロップノーズ)は、鼻背中央部の過剰隆起(ハンプ)や鼻尖下垂(ティプドロップ)です。審美的には、鼻筋の過剰な突出や鼻尖下垂によって「強い」「老けた」印象を与えるため女性に人気の手術でもあります。

 

鷲鼻・魔女鼻の鼻整形写真

主な原因と対応術式の整理

症状・形態の主因 推奨される術式 修正の目的 備考
鼻骨の中央部が突出している(ハンプ) ハンプ切除術(hump resection) 鼻背の滑らかなライン形成 過切除に注意(Suh et al., Aesthetic Plast Surg, 2018)
ナジオン(鼻根部)が低い プロテーゼまたは自家軟骨移植 鼻背ラインの上部補正 ハンプ削除のみでは凹みが強調される
鼻尖が低い 鼻尖形成術+軟骨移植(tip plasty + graft) 鼻尖の高さ・立体感向上 耳介軟骨が汎用的(Lee et al., Plast Reconstr Surg, 2017)
鼻尖が下垂(魔女鼻様) 鼻尖吊り上げ術、鼻中隔短縮術 鼻尖角度を改善し若々しい印象へ 下方回転した鼻中隔を短縮(Han et al., Arch Plast Surg, 2019)
鼻骨幅が広くラインが乱れている 鼻骨骨切り幅寄せ術 鼻背の対称性改善 骨切り幅と鼻尖角度の連携が重要
鼻中隔軟骨が長すぎる 鼻中隔軟骨下縁切除 鼻尖下垂の改善 吊り上げ術と併用することが多い

症例的アプローチ

  1. 骨性鷲鼻型
     鼻骨の隆起が主体で、横顔のラインに段差が見られる。
     → ハンプ切除+骨切り幅寄せを行い、鼻背を直線的に整える。

  2. 軟骨性鷲鼻型
     上外側軟骨の肥厚や鼻中隔突出が主因。
     → 軟骨切除・再縫合で修正し、必要に応じて鼻尖形成を追加。

  3. 魔女鼻型(垂れ鼻)
     鼻中隔が長く、鼻尖が下方回転している。
     → 鼻尖吊り上げ+鼻中隔短縮術で角度を調整し、アップノーズ方向に補正。


美的バランスの指標

審美的理想角度(M Powell & Humphreys, Facial Plast Surg, 1984)

指標 理想値 改善目標
鼻尖角(nasolabial angle) 女性 95–105°、男性 90–100° 垂れ鼻では90°以下に下がる傾向、吊り上げで補正
鼻額角(nasofrontal angle) 約 115–130° ハンプ切除後に直線的ラインへ調整
鼻背ライン 眉間から鼻尖にかけて緩やかなS字 ハンプ除去+鼻尖形成で連続性を確保

学会報告からの考察

日本美容外科学会(JSAPS)2022年の報告では、鷲鼻修正後の再手術率は約6.8%であり、その主因は「過矯正による鞍鼻化」でした。※鞍鼻(あんび)→鼻すじの途中がくぼんで、馬の「鞍(くら)」のような形になった鼻の変形です。

 

過度のハンプ切除を避け、プロテーゼや軟骨移植を組み合わせる「ハイブリッド形成」が現在の主流となっています。また、鼻尖下垂に対しては鼻中隔短縮+軟骨支柱再建の併用が再下垂予防に有効とされています。

超音波骨切り機(ピエゾ) 使ってる医者=安心ではない

鼻手術において、学術的にも、鼻整形領域では以下の報告が多くあります。

  • Robotti et al., Aesthetic Surgery Journal, 2020
    → 超音波骨切り群では従来のノミ使用群に比べて術後腫脹が約30%軽減

  • Cakir et al., Plast Reconstr Surg, 2016
    → 骨膜損傷の少なさと、左右差の減少が確認された。

つまり、出血・浮腫・内出血が少なく、骨の形状をミリ単位で整えやすいというのが最大の利点です。

 

一方でデメリットもあって、ピエゾ機器は非常に高価(数百万円〜)で、メンテナンスも煩雑なため、以下のような限界もあります。

  • 骨が非常に厚い・硬い場合、切削に時間がかかる

  • 熟練していないと、かえって削りすぎるリスクがある

  • 軟骨部分(上外側軟骨など)は結局メスや剪刀操作が必要

そのため、「ピエゾを使っている=上手」ではなく、「骨の形態を三次元的に理解して扱える」かが核心です。学会発表などでも、結果の良し悪しは「デバイス」よりも「設計と骨処理の一貫性」で決まるとされています(JSAPS 2023 講演報告より)

実践的な見分け方

ドクターの信頼性を判断する際は、機器の有無よりも次の点に注目すると良いです。

  • 術前にCT評価を行っているか(鼻骨・ハンプの高さ・左右差を3Dで確認)

  • ハンプ切除後に「鼻背ラインをどう再構成するか」を明確に説明してくれるか

  • 骨切りを伴う場合に「外側骨切り・内側骨切り・ハンプ削除」の順序を理解しているか

  • 過去に致命的な失敗が無いか

ピエゾを持っていても、これらを曖昧に説明する医師は技術が浅い可能性があります。
逆に、手動のノミやヤスリでも繊細な段差修正や骨膜下処理を正確に行える医師は信頼に値します。

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顎下・フェイスラインと同じく、「Malar fat pad(メーラーファット/頬骨上〜頬の脂肪)」をどう扱うかは、構造・脂肪量・皮膚の余り・骨格などがからんでくるため、単純ではありません。

 

顔の脂肪と輪郭の施術

❓ “よくこける”という話について

メーラーファットを取りすぎたり、脂肪を減らしすぎたり、皮膚・支持構造が緩んだまま脂肪だけなくなったりすると、頬が「こける」「痩せて見える」「老け見えする」ことがあります。例えば、ハーバード大学の解説でも「頬の脂肪(buccal fat pad を含む)が年齢とともに減ると、こける・陰影が出る」ことが指摘されています。 (Harvard Health)
つまり、脂肪を減らす/除去するなら「こけさせない」「支持構造を維持する」ことがすごく重要です。


🔍 オンダリフトVSモフィウス8

「ONDA Lift(オンダリフト)」「Morpheus8(モフィウス8)」「脂肪吸引注射」について、メーラー部(頬骨上・頬)での“脂肪を減らす/引き締める”観点から見てみましょう。

ONDA Lift / ONDA

・ONDA Lift(ONDA Pro 等)では「高周波マイクロ波(Coolwaves™)で皮下脂肪・皮膚を加熱し、脂肪細胞のアポトーシス(脂肪減少)+コラーゲン再構築」をうたっています。 
・メーラーの“脂肪”をターゲットにできる可能性は理論的にはあります:脂肪の多い/たるみと脂肪が混ざっているケースで「脂肪を減らしながら引き締めたい」なら向いている可能性あり。
・ただし「頬骨上の脂肪(メーラーパッド)は皮膚・骨格・筋・靭帯構造が複雑」で、単純に“脂肪多め”だけではないことが多いため「脂肪を減らせば必ずくっきり輪郭になる」という訳ではありません。
・また施術件数・実績として「この部位だけで多数の論文があるか」というと限定的です(BODY・顔下部・顎下など脂肪多め部位のデータが主体)ので、過度な期待は注意です。

Morpheus8(モフィウス8)

・Morpheus8は「RF(ラジオ波)+マイクロニードル」を用いて、皮膚深部・線維組織・脂肪近傍を加熱・リモデリングする装置です。
・公式説明には「上頬(malar region/malar festoons)への応用実績あり」も出ています。 
・従って、こちらも「たるみ+脂肪混在+皮膚ゆるめ」のケースには効果の期待値があります。
・ただし、「脂肪が大きくたまっていて」「かつ皮膚・骨格・支持靭帯がゆるんでいる」という条件なら、Morpheus8だけで“明確な脂肪量減少+輪郭変化”を出すのは難しいかもしれません。

脂肪吸引注射(脂肪溶解注射)

・「金ドブ」という話が出るのは、顔面特に頬/メーラーパッド部位では“脂肪のタイプ”“支持構造”“年齢変化”などが絡んでいて、単に脂肪溶解するだけで輪郭がスッキリするとは限らないからです。先述のハーバードの記述でも“脂肪を減らせるが効果は控えめ”とあります。 
・顔面は「深い脂肪層」「支持靭帯」「皮膚余り」「骨格」が混在しており、部位によっては“減らさない方が将来的にこけない”という判断になることもあります。
・したがって、「脂肪吸引注射をすればメーラーファットが減ってすぐに輪郭出る」という保証はありません。術者の経験・症例数・適応判断が極めて重要です。


✅ 個人的な見解:

期待値の整理

・ONDA / Morpheus8 は「脂肪少なめ〜中等度」「たるみも少しある」「顔全体のバランスを整えたい」ケースには比較的“有効な選択肢”になり得る。
・ただし「脂肪取り(量が多い)」「明確に輪郭を出したい」「左右差が気になる」なら、これらだけで完結させるのは難しいと考えたほうが良い。
・「こける」リスクを抑えるためには、脂肪を減らすなら“どれだけ減らすか・支持構造を同時に整えるか”という設計が必須。
・脂肪溶解注射/吸引系は選択肢としてありうるが、顔のこの部位では“術者力/適応判断”が結果を大きく変え、慎重に検討すべき。


🚩 注意点・リスク

・脂肪を減らしすぎると将来顔が痩せて見えるリスクあり。ハーバードも指摘。
・支持組織(靭帯・筋膜)の緩みを治さず脂肪減らすと“たるみが浮き”やすい。
・装置系は“効果が穏やか/回数がかかる”という実データあり。
・左右差・骨格差・皮膚質差があると結果が揃わない。
・“モニター価格”“格安”には“術者経験が浅い”“条件が限定されている”ことも多いため、顔作りでは慎重に。

 

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オトガイ形成における短縮術式の比較

― 中抜き法と先端削り法の臨床的適応と限界 ―

下顔面が長いと、顔全体の印象が面長に見えたり、下方向への重心が強調されることがあります。
こうした「顔の下1/3の長さ」を整える手術として行われるのがオトガイ形成術(genioplasty)です。

その中でも、下顔面を短縮する代表的な方法が
「中抜き法(水平骨切り+中央骨切除)」「先端削り法(骨削除型)」の2種類です。
本記事では、それぞれの
短縮可能なミリ数・安定性・リスク
について、学会報告や臨床的知見をもとに解説します。

 

オトガイ形成術 中抜き法と先端削り法


オトガイ形成は、下顎骨の前下部(オトガイ部)を操作して、顔下1/3の縦方向の長さを整える手術です。
主な方法は次の2つに分かれます。

術式 基本操作 主な目的
先端削り法(表面削除型) オトガイ先端の骨を削る、または部分的に切除する 顎先を軽く短く・控えめにする
中抜き法(水平骨切り型) 顎の下部で骨を水平に切り、間の骨を除去して上方に固定する 顎そのものを大きく短くし、下顔面をコンパクトにする

短縮できるミリ数の比較

学会報告や臨床データをもとにした、一般的な短縮可能量は以下の通りです。

術式 短縮できる目安 骨への影響 主な適応
先端削り法 約3〜5mm 表面を削るため影響が小さい 軽度の顎の長さ、微調整希望
中抜き法 約7〜10mm 骨体部を直接切り取るため大きな短縮が可能 明確に顎を短くしたい、面長タイプ

中抜き法では骨格条件(オトガイ孔の位置・骨厚)によっては10mm程度の短縮が可能ですが、
一方で先端削り法は3〜4mm程度が安全ラインとされています。

 

● 先端削り法

特徴
・侵襲が少なく、手術時間も短いです。
・神経へのリスクが低く、固定を必要としない場合もあります。
・ただし、削りすぎると骨が薄くなり、術後に骨吸収が起こる可能性があります。

安定性に関する報告
日本口腔顎顔面外科学会誌(2021)によると、
4mm以下の削除であれば安定していますが、5mm以上では術後数ヶ月で骨吸収が進む傾向が見られたと報告されています。


● 中抜き法

特徴
・縦方向の短縮効果が明確で、顔全体の印象が変わります。
・骨片を再固定する必要があり、血流や骨癒合の管理が非常に重要です。
・ダウンタイムや腫れはやや強めですが、効果は大きいです。

安定性に関する報告
口腔外科学雑誌(2019)では、5mmの骨を取り除き、2mm上方に固定した症例で安定した結果が得られたと報告されています。また、顎変形症学会誌(2020)によると、骨間距離が大きいほど骨吸収が起こりやすく、骨間を4mm以内で固定することが血流維持に有効とされています。

 

オトガイ形成では、美容面だけでなく安全面の設計も非常に重要です。
以下の点を守ることが推奨されています。

  1. 安全域を確保する:下歯槽神経・オトガイ孔から5mm以上離す。

  2. 骨膜を温存する:血流を守るために剥離を最小限にする。

  3. 固定を確実に行う:ミニプレートや吸収性スクリューで強固に固定する。

  4. 過矯正を避ける:10mm以上の切除は骨吸収リスクが上がる。

  5. 皮膚のたるみ対策:顎下が余る場合は糸リフトなどを併用する。


中抜き法 VS 先端削り法

中抜き法は明確に顔の下1/3を短くできるため、面長・下顔面が長いタイプに適しています。
先端削り法は「顎先が少し長い」「前に出ている」という軽度の悩みに適しています。
自然な印象を保ちながら形を整えたい人には後者の方が向いています。

 

要点 内容
短縮量 中抜き法:約7〜10mm 先端削り法:約3〜5mm
安定性 中抜き法の方が高いが、固定が必須
血流維持 骨膜温存と骨間距離4mm以内の設計が重要
主なリスク 神経損傷・骨吸収・固定不良
効果の違い 中抜き:大きな変化/先端削り:自然な微調整

 

骨切り(輪郭形成、オトガイ形成、頬骨削り、Vライン形成など)は、美容外科の中でも最も高度でリスクの高い分野です。手術後に形が崩れたり、神経麻痺が残ったりといった「取り返しのつかない失敗」を防ぐには、医師の技術力を見極める目が欠かせません。 

信頼できる骨切り医の条件

・形成外科専門医でありJSAPS所属は最低条件
・CTをもとに三次元で設計を行う
・骨膜温存、固定設計を説明できる
・デメリットを隠さず話す
・SNS症例が派手すぎない
・修正例を公開している

これらを満たす医師は、経験・理論・倫理の3点で信頼できます。

 

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