脂肪豊胸で乳首が下を向く? それデザインミスです
脂肪豊胸で起きる失敗のひとつに「乳首が下を向く」「皿型の胸になる」というものがあります。しかも厄介なのは、術者側が失敗と認識していないケースがあることです。問題の本質はテクニック以前にデザイン設計にあります。
なぜ起きるのか
解剖学的に乳腺は乳房内に存在し、鎖骨直下のいわゆるデコルテ最上部にボリュームはほぼありません。ここに過剰に脂肪を入れると、本来なだらかに落ちるべき上胸が不自然に張り出します。その結果、トップとデコルテの高低差が消え、重力方向の自然な傾斜が失われます。すると乳頭は相対的に下向きに見え、胸板のようなフラットなシルエットになります。
天然の大きな胸は、寄せない状態では重力で下方にボリュームが集まります。トップが最も突出し、デコルテは控えめ。この高低差こそが自然さです。
2カップアップの現実
経験的にも文献的にも、2カップ程度のボリューム増加は劇的な高さ変化ではありません。
| 変化項目 | 目安 |
|---|---|
| 前方突出の増加 | 約2cm |
| アンダー周径増加 | 約5cm |
| デコルテの厚み変化 | 本来は最小限 |
ここを誤解してデコルテにまで盛ると、トップとの差が消え、皿型になります。
文献的エビデンス
脂肪注入豊胸に関する代表的報告では、適切な層への分散注入と過剰ボリューム回避が安全性と自然な形態維持の鍵とされています。
| 学会・論文 | 主な示唆 |
|---|---|
| ASPS Fat Grafting Task Force Report | 層ごとの微量分散注入が基本。過量注入は合併症と変形リスク |
| Coleman SR, Plastic and Reconstructive Surgery | 小量多点注入で血流確保と形態安定を重視 |
| Khouri et al., PRS | 組織拡張と血流環境を整えた上での容量管理の重要性 |
いずれも共通しているのは「入れれば入れるほど良い」ではないという点です。
失敗パターンの比較
| 正しい設計 | 失敗設計 |
|---|---|
| トップが最突出 | 上胸が最突出 |
| デコルテは緩やか | デコルテが過剰に膨隆 |
| 乳頭は正面向き | 乳頭が下向き |
| 重力を意識した形 | 胸板のような形 |
外科医選びのポイント
脂肪豊胸は「量」より「設計」です。デコルテを盛れば若く見えるという短絡的な発想は危険です。解剖理解、注入層の選択、ボリューム配分、この3点を理解していないと皿型バストになります。
カウンセリングで「どの層に、どれくらい、どこを一番高く設計するのか」を具体的に説明できない医師は避けるべきです。SNSでのキラキラ症例ばかりを挙げている美容外科医ではなく、解剖とデザインを語れる外科専門医を最低限にして病院選びをしてください。



