行きつけのコーヒーショップにいく途中。
出勤中のスーツを来た人とたくさんすれ違う。
表情はやや暗い。
何のために会社に行くのか。
行かないといけない。
行かないと大変なことになる。
行かない選択肢は、ない。
そういう「脅迫観念」がわたしも、あった。
10年前の春。
神戸の農家から出たくて、出たくて仕方なかった。
「もうこんな田舎嫌やねん!わたしは東京に行くねん!」
父、母を説得して、夜行バスで就活をしていた。
スーツを来て緊張した新人研修。
人見知りで、何か言うたびに顔が赤面して
全然コミュニケーションが上手く取れない。
東京に知り合いも、いない。
助産師として働き始めたとき、「わたしはお母さんと赤ちゃんの命を背負って仕事している。」
と思えば、思うほど
失敗やちょっとしたミスさえも
できない自分を、自分が一番責めていた。
だから先輩からもらったアドバイスも
「他の人にダメ出しされるぐらい、わたしはできていないんだ。なんてダメ人間で役立たずなんだ」
そういう思いが積み重なって、病院に行く時、胃が痛くてたまらなかった。
夜勤で緊急搬送。
生まれた赤ちゃんが呼吸しない。
出産後のお母さんが大量出血。
新人のわたしは向き合いたいけど
向き合えない現実ばかり起こる。
同期や、先輩に支えられながらも
なんだか、心がぽっかり空いて。
【わたしの肉体はここにいるけど、心はここにいない。】
そんな状況だった。
何がしたいか、わからない。
出勤しないと怒られる。
職場で自分の居場所がなくなるのが怖い。
そんな日々を送っていると
本当に行きたくなくなって。
師長に「休みたい」と行ったら
「精神科に受診して、診断書をもらってきてね。」
と言われた。
休みたかったので精神科を受診し
適当な診断書を書いてもらって。
休んだ。
何もする気が起こらない。
ただ、すべてに対して絶望的で無気力なわたしがいた。
続く
