最近は、少し時間に余裕ができると、つい動画を眺めることが増えてきた。
若い頃はこういうものにはあまり興味がなかったのだが、何気なく見始めてみると、これが思いのほか面白い。
ひとつ見終わると、関連の動画が次々に出てきて、気づけばずいぶん長い時間を過ごしてしまっている。
中でもよく見ているのが、お金をかけずにできる簡単なDIYの動画だ。
「誰でもすぐにできます」と軽やかに言っているのを聞くと、ついその気になってしまう。
最初は半信半疑だったが、何本か見ているうちに、「自分でも少しくらいならできるかもしれない」と思うようになった。
とはいえ、いきなり大がかりなことに挑戦するのはさすがに無理がある。
そこで、まずは民宿の中でも、自分の生活スペースで小さなことから試してみることにした。
ちょうど以前の修繕で余っていた木の板があったのを思い出し、それを使って簡単な棚を作ることにした。
動画では手際よく進んでいく作業も、いざ自分でやってみると、なかなか思うようにはいかない。
板の長さを揃えるだけでも一苦労で、釘を打てばわずかに曲がる。
真っすぐに打ったつもりでも、出来上がってみるとどこか歪んでいるように見える。
それでも何とか形にはなり、壁際に置いてみると、どうにか棚として使えそうなものにはなった。
途中で一度、釘を打ち損ねて指を軽く叩いてしまい、「やっぱり慣れないことはするものじゃないな」と苦笑いもした。
若い頃はもう少し手際よくできていた気もするが、今はひとつひとつの動きがゆっくりになっている。
それでも、こうして少しずつ進めていくしかないのだろう。
出来栄えは正直なところ立派とは言えない。
それでも、自分の手で作ったものがそこにあるというのは、何とも言えない満足感がある。
既製品のような整った美しさはないが、その分どこか味があるようにも思えるから不思議だ。
棚に古いラジオや帳面を並べてみると、それだけで部屋の雰囲気がほんの少し落ち着いたように感じた。
今まで何となく置いていたものが整うだけで、こんなにも違うものかと、少し驚いた。
気をよくして、今度は引き出しの中の整理にも手を出してみた。
段ボールを使って仕切りを作るという、これも動画で見た方法だ。
空き箱を切って、サイズを合わせて折り曲げていく。
特別な道具もいらず、はさみひとつでできるのがありがたい。
途中で何度かサイズを間違えて切り直すことになったが、それもまた手作業のうちだと思えば、それほど苦にはならなかった。
見た目は決して立派とは言えないが、使い勝手はずいぶん良くなった。
細かい物がきちんと分かれて入るようになり、探す手間が減っただけでもありがたい。
整理をしていると、奥の方から昔の領収書やメモが出てきて、つい手を止めて眺めてしまう。
「この頃は忙しかったな」「このお客さんはよく来てくれていたな」などと、いろいろな記憶がよみがえる。
片付けというのは、どうしてもこうした寄り道が増えてしまうものだ。
こうした工夫は、特別なものではなく、昔から自然とやってきたことなのかもしれない。
今では「ライフハック」などと呼ばれているが、身の回りのもので工夫するというのは、ごく当たり前のことだった。
それを改めて動画で見て、もう一度やってみるというのも、どこか面白い巡り合わせのように感じる。
作業をしていると、不思議と時間の流れがゆっくりになる。
釘を打つ音や、段ボールを切る感触、そうした一つひとつに意識が向くからだろうか。
外では風が木々を揺らし、ときおり鳥の声が聞こえる。
そんな中で手を動かしていると、気持ちが少しずつ落ち着いていく。
実のところ、ここ最近は宿の経営のことで頭を悩ませることも多かった。
さらに、4月末締切の小規模事業者持続化補助金の申請を目指して、書類作成にも取り組んでいた。
慣れない書類仕事に四苦八苦しながらも、どうにか8割ほどは形にしていたのだが、
そんな矢先に体調を崩してしまい、数日間入院することになってしまった。
退院してきたときには締切は過ぎていて、結局今回は提出が間に合わなかった。
正直なところ、悔しさもあったし、もう少し何とかならなかったかという思いもある。
ただ、あれだけ苦労して書いたものが無駄になったわけではないとも思っている。
8割方できているのなら、次はそこからまた整えていけばいい。
こうして棚を作ったり、引き出しを整理したりしていると、「少しずつでも手を動かせば形になる」という当たり前のことを、改めて実感する。
補助金の申請も同じで、一度でうまくいかなくても、また次に挑戦すればいい。
そう思うと、少し気持ちが軽くなった。
民宿のほうでも、こうした小さな工夫を活かせるかもしれない。
客室のちょっとした収納や、見えない部分の整え方ひとつで、印象は変わるだろう。
大きなことはできなくても、小さな積み重ねなら自分にもできる。
夕方、出来上がった棚を改めて眺めてみる。少し傾いているようにも見えるが、それでもしっかりと立っている。
その姿を見ていると、自分も同じように、不格好でもいいから何とか踏ん張っていけばいいのだろうと思えてくる。
今日は棚をひとつ作り、引き出しを整理しただけの一日だった。
それでも、こういう時間は決して悪くない。不器用なりに手を動かすこと、その積み重ねが、次につながっていくような気がしている。
次の機会には、補助金の申請にももう一度挑戦してみようと思う。
今回できなかった分まで、少しずつ整えていけばいい。
焦らず、無理をせず、自分のペースでやっていこう。そんなことを、静かに思った一日だった。