今年も師走が来て、気づけばもう十日市の季節になりました。
さいたま市大宮の武蔵一宮 氷川神社で12月10日に行われる「十日市(大湯祭・熊手市)」は、
境内に熊手や縁起物の露店が立ち並び、参道まで屋台の灯りが続く、埼玉の冬の風物詩です。
熊手の店だけでも数十店、飲食の露店もずらりで、毎年かなりのにぎわいになります。
民宿のほうが正直なところ近ごろ少し厳しくて、こういう「景気づけ」に背中を押してもらいたい気分がありました。
だから今年は迷わず出かけて、古い熊手を納め、新しい熊手を一ついただいてきました。
店先で威勢よく手締めが響くと、こちらまで気持ちが引き締まるものですね。
熊手は「福をかき集める」といいますが、あの音と熱気の中にいると、たしかに運まで動き出しそうな気がします。
ただ、境内を歩きながら、ふと立ち止まる瞬間がありました。
去年も同じ道を歩いたはずなのに、「一年が過ぎるのが、年々早くなる」と、しみじみ感じてしまったのです。
若いころは正月から次の正月まで、長い道のりのように思えたのに、今は季節が角を曲がるたびに、もう次の行事が近づいている。忙しいというより、時間のほうが先回りしていく感じでしょうか。
とはいえ、早いと感じるのは、それだけ日々をちゃんと重ねてきた証でもあります。
宿に来てくださる方の顔ぶれも少しずつ変わり、町の景色も変わっていく。
その流れの中で、今年も無事に熊手を替えられたこと自体が、まずはありがたいことだなと思いました。
帰り道、熊手を抱えた自分の姿をガラスに映して、思わず苦笑い。
福をかき集めるつもりが、風にあおられて熊手のほうに僕が連れていかれそうでした。
「まあ、来年は熊手に負けないくらい、こっちも腕を動かさないといけませんね」
そう独りごとを言いながら、少し背筋を伸ばして家路につきました。