鈴本7月上席(7/1〜10)夜の部で主任(トリ)をつとめる林家つる子師匠の8日目の内容です。
15:50、並んでいるのは20人程度です。
役者社会は厳格な階級社会で、1番下の「稲荷町」という階級から始まり、「名題下」、さらに「名題」という格がある。
中村仲蔵は精進を重ね、名題に昇進した。
「仮名手本忠臣蔵」の彼の役は五段目の斧定九郎。当時、定九郎は名題下の役。また、五段目は見どころがなく、観客が弁当を食べる「弁当幕」といわれていた。
仲蔵は新たな工夫を授かるようお稲荷さんに神頼みを行う。しかし何も思いつかないまま日は過ぎていく。ついに諦めたその日、帰路で夕立に遭い、蕎麦屋で雨宿りをしていると一人の下級旗本が店に入ってくる。
仲蔵は神頼みのご利益だとして、出会った下級旗本の風体を元に役作りを始める。
仲蔵の定九郎は破れた蛇の目傘を持つ白塗りの浪人として演じた。初めて見るその所作に観客は感じ入って息を呑む。ところが仲蔵は観客からの掛け声がないため、しくじってしまったと内心で焦る。
その後も、斬新で鮮やかな演出を行うもやはり掛け声はない。観客たちはあまりにも見入って声が出なくなっているだけであったが、それに気づかず仲蔵は自信を失ってしまう。
舞台後、すぐに家に帰ってきた仲蔵は、芝居で失敗したので江戸にはいられないから上方へ行くと女房に伝え、家を出る。途中、5段目を見た客が今日の5段目は良かったと話をしている。そこで師匠の使いと会う。
芝居小屋へ行った仲蔵を師匠はその工夫と名演を褒め、今後は仲蔵の定九郎が型になるであろうと言う。
下げは、仲蔵の「狐につままれたみたいだ」に対し女房が「そりゃお稲荷さんだからよ」だった気がします。
つる子さんらしいといえば、女性目線の噺。この噺でも、女房の励ましを強調していました。女房がいなければ仲蔵は大成しなかったでしょう。
本日もつる子師匠にお見送りをいただきました。最高の出来でしたとお声がけをして鈴本をあとにしました。