映画0137 2024/06/17生きるを観て 生きる哲学 役所仕事 | 「久蔵」と「ヒヨコ」の日記

「久蔵」と「ヒヨコ」の日記

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人間が生きることについての哲学をも示した名作です。

これは大昔のチネチッタの名作日本映画オールナイト(勝手に名付けをしました)で初めて観ました。それ以来、何度も観ています。

ただ、音声が悪くセリフが分かりづらいでした。

デジタルリマスター版で字幕付きを観てみたいと思っていました。
それでWOWOWにリクエストしました。
WOWOWはリメイク版の「 生きる LIVING」の放送に合わせ「生きる」を放送してくれました。ありがとうございました。
今回はそれを録画したBD(2023/12/10 WOWOWシネマ)で鑑賞しました。

劇場公開日:1952年10月9日143分
監督:黒澤明
脚本:黒澤明 橋本忍 小国英雄
音楽:早坂文雄
撮影:中井朝一
主要なキャスト
渡邊勘治(市民課長):志村喬
小田切とよ(市民課女性職員→玩具工場の工員):小田切みき
渡邊光男(勘治の息子):金子信雄
渡邊一枝(光男の妻):関京子
林(家政婦):南美江
渡邊喜一(勘治の兄):小堀誠
渡邊たつ(喜一の妻):浦辺粂子
小説家:伊藤雄之助
木村(市民課職員):日守新一
坂井(市民課職員):田中春男
野口(市民課職員):千秋実
小原(市民課職員):左卜全
斎藤(市民課主任):山田巳之助
大野(市民課係長→新市民課長):藤原釜足
助役:中村伸郎
やくざの親分:宮口精二
やくざの子分:加東大介
陳情のおかみ:三好栄子
陳情のおかみ:本間文子
陳情のおかみ:菅井きん
巡査:千葉一郎

◆前提
主人公の渡辺は市民課長。あとひと月で30年間無欠勤である。
渡辺の妻は息子が幼少の時に亡くなった。
息子と息子の嫁と渡辺の家で同居している。
渡辺の家にはお手伝いさんがいる。
親戚には兄と兄嫁がいる。

◆あらすじ
渡辺は事なかれ主義の役人であった。
下水溜まりを公園にしたいという住民に対し、役所は次のたらい回しをする。

市民課→土木課→公園課→保健所→衛生課→環境衛生係→予防課→防疫係→中疫係→下水課→道路課→都市計画部→区画整理課→消防署→児童福祉係→市会議員→助役→市民課(戻る)。
渡辺は自分が胃癌で余命幾ばくもないと知る。
絶望に陥った渡辺は、役所を欠勤し預金を下ろし居酒屋で酒を飲む。
そこで小説家に睡眠薬を用立てる。彼と意気投合し胃がんであることを吐露する。

睡眠薬は自殺用に買うも使えない、死ねなかったのだ。
小説家は「胃がんは主人公の目を開かせた。過去の自分に反逆しようとしている」と言う。
パチンコ、キャバレーに行く。そこで帽子を取られ、粋な帽子を買う。

バー、ダンスホールに行く。
ジャズバーではゴンドラの歌を歌う。そのピアノ伴奏で客は踊り始めるも歌を聞き踊りやめる。渡辺は涙を流し歌う、悲痛な歌声だ。
ストリップを見る、唯一渡辺はいい顔をし驚きの声をあげる。
歓楽街を飲み歩く。車で移動するも中で女は本性を丸出し。所詮、一時の快楽だと渡辺は感じる。虚しい、しかし死という不安から抜け出せない。
そんなあくる日、市民課女性職員のとよと渡辺の家を訪れる途中で出会う。
彼女は役所をやめるため、役所を休んでいる課長の印が欲しかったのだ。
若いとよの奔放な屈託のない明るい生命力のある性格に惹かれ、渡辺はとよと食事と会話をするようになる。
無断欠勤を続け、とよと会う。しかしとよは忙しく、しまいにはもう話すことないと言い、愛想をつかす。
とよとの最後に会う時に渡辺は胃癌であると打ち明け、とよに聞く。
「なんで生き生きとしているのか」。
とよは答える。「おもちゃを作っているだけ。こんなもんを作っていても楽しい。課長さんもなんか作ったら」と。
渡辺は考えた末、役所でもやる気になればできると気が付いた。
そして、初めて真剣に役所の申請書類に目を通す。
そこで彼の目に留まったのが市民から出されていた下水溜まりの埋め立てと公園建設に関する陳情書だった。
公園は完成し渡辺は深夜、公園のブランコにのり「ゴンドラの歌」をしみじみ歌い、亡くなる。

◆納得のいく筋書き
・なぜ渡辺は独身を通したのか
 息子可愛さのため独身を通した。
 家事はお手伝いさんにお願いした。

・なぜ息子や兄に相談できなかったのか
 とよが課長の印をもらうため家を訪れた時、男女の関係と誤解された。
 それで息子や息子の嫁とは折り合いが悪くなった。
 兄は独身を貫くことに疑念をもっていたため相談しにくかった。

・なぜ渡辺はとよと付き合うようになったのか
 とよが渡辺の家を訪れた時、ストッキングに穴が空いているのを見た。
 渡辺は見かねて店でストッキングを買ってあげた。
 それでとよが渡辺に親近感を持った。

◆音楽や音が効果的
・渡辺がとよとの食事の場面では女学生の誕生会が開かれていた。
 有意義な仕事を行うと気が付いた時「Happy birthday to you」が流れる。
 生きた瞬間だ。
・渡辺が仕事を行いはじめて亡くなる時にサイレンが鳴る。
・ゴンドラの歌は四回流れる。
 タイトルバックの時
 絶望に陥った時に渡辺かジャズバーで歌う歌は悲愴感が漂う
 完成した公園でブランコに乗った時には嬉しそうにしみじみと歌う
 映画の終わりに木村らしい人が公園を見ている。ゴンドラの歌で終わる

・息子夫婦との確執につながる場面
 音楽にtoo youngが流れる

◆構成が素晴らしい
前編と後編に別れ、それをサイレンの音で分ける。
後編はお通夜で以下の事が語られる。
・助役が手柄を取る。
・新聞記者が「公園完成式での式辞は選挙演説ではないか」と聞く。
・「自殺ではなく、胃がんの内出血で死んだ」と助役がいう。
・陳情した町の皆がお通夜に来る。
・助役は通夜の席でいたたまれなくなり退席。
・それから公園に関する事柄が明らかになる。
・がんを知っていなかったか否かが話題になる。
・兄は女のせいじゃないかという。
・公園課、土木課、総務課、助役室での出来事が語られる。
・特飲街の話ではやくざが「てめえ命惜しくないのか」と迫る。
 しかし、死を覚悟した渡辺は怖くない、動じない。
・職員は渡辺が「私は時間がない」と言い、胃がんを知っていたと言う。
・帽子を持ってお巡りさんが通夜に来る。
 渡辺は雪の中ブランコに乗り、しみじみ嬉しそうに「ゴルドラの歌」を歌っていた、
 染み渡る声で歌っていたと言う。
・息子は「朝方、玄関に貯金通帳と印鑑、退職金受領の書類があった」と言う。
・兄は「女が来なかった。ほんとに女だったのかなあ」と言う。
・通夜の一同、渡辺が胃がんを知っていたとの認識になる。

◆問題提起
・お役所仕事を痛烈に批判した。
・通夜の席では主人公に続けと言っているが次の日、役所の体質は変わらない。

★★★★★
0129 2023/05/03 生きる LIVINGは本映画のリメイク版です。
異なるところは概略以下です。
・舞台はイギリスで脚本はノーベル賞作家カズオ・イシグロさんです。
・「ゴンドラの歌」が「The Rowan Tree(ナナカマドの木)」になります。
「ゴンドラの歌」の歌は「命短し~」があまりにも直接的なのをカズオ・イシグロさんは嫌ったようです。
「ナナカマドの木」はスコットランドの歌だそうです。
主人公が何年も前に亡くした妻に関連した歌で、それを彼の妻、そして彼が失った人生と関係があるものだと覚えていてほしかったのですと言っているそうです。
・日本版での市民課職員木村の目線です。
・同かよ役が葬式に来ます。

自分は圧倒的に黒澤明作品の方が好きです。
志村喬、小田切みきの演技も最高です。
「ゴンドラの歌」の直接的な歌詞もいいです。
それは、「命は短いので大切に生きなさい」と言っているのです。

(0129、0137は本ブログの映画鑑賞記録の番号です)