今日はヒューマントラストシネマ有楽町で、ケン・ローチ監督「オールド・オーク」を観た。
現代社会をここまで的確に捉えながら描いて行く映画の凄まじさは、あまりにも容赦無くて、苦い現実を鋭さ全開で突きつけられるけど、かすかな希望もそこにはしっかりとある素晴らしい作品だった。
この映画を観て行く中で、たむろって語るその光景に、Xでも現実でもと言う所で、津田大介さんのこのポストを思い出さずにはいられなかった。
言論は言論として一定のルールに則って戦えばいいと思うけど、実際には言論が紡がれる背景や文脈に個人的な人間関係が深くにじみ出て(にじみ出させて)しまってしっちゃかめっちゃかになり野次馬だけ楽しんで(Xに金が入るだけで)終了みたいなのがXの持つ大いなる罪深さですよね。抗っていきたい。
— 津田大介 (@tsuda) 2026年5月1日
まるで日本で起きている事がそのまま描かれているような数々の描写に釘付けにならずにはいられない容赦無さぶりが凄まじかった。
差別主義者の振る舞いの愚かさや醜さをここまで的確に描かれていると、逆に胸のすく思いがしたし、己の心の無自覚な「いじわるやなあ」を浮き彫りにする描き具合が抜群の素晴らしさ。
オブラートに包まず直接だからこそ向き合わないと行けない描写の素晴らしさは、その現実を向き合うからこその映画としての素晴らしさ、芸樹表現としての強度の凄まじさを実感せずにはいられない所でもあって。
その中で描かれて行く人間模様に釘付けにならずにはいられなかった。
人と人の関わりを丁寧に描くからこそ、そこには希望を見出せるし、容赦ない現実に向き合わないと行けない事になるのだが。
でも、徹底的に現実に寄り添っているからこその物語の描き具合は、現在を生きる人々の姿や心を丁寧に捉えていたからこその素晴らしさが溢れていた。
ある種の人生のターミナルとしてのお店だからこそ浮かび上がる人間模様だったり、それぞれの人生を滲ませるその描き具合が抜群の素晴らしさでもあった。
そこには生きる苦さや遣る瀬なさと共に、醜悪ぶりが露呈しているその振る舞いに無自覚であるからこそ、深く感じる物があった。
お店で古参の常連が繰り広げて行く会話って、別にお前のお店じゃねえだろとか、別にお前来なくても店は成り立つよ?と思わずにはいられなかったし、心を隙間を埋まるために無自覚に振る舞うその姿には人間としての醜悪ぶりが凝縮されていて、徹底的に描いていたからこその素晴らしさを実感せずにはいられなかった。
こういう時は言葉より○○っていう所がとても良かったし、あらゆる垣根を超えて繋がって行ける所としての描き具合の素晴らしさはたまらない物があった。
それを思うと外国人在留資格に於ける経営の資本金要件を500万円から3000万円へと思いっきり引き上げる高市政権の政策って、食に対する乏しさ、知見の無さを思いっきり露呈しているよなと映画を観ながらその事を思わずにはいられなかった。
物語を観て行く中で、その出会いがあるからこその変化という所での良さと軋轢をとても丁寧に描いていたからこその素晴らしさがそこにはあったし、変わらないからこその閉塞感が向かわせる物の愚かさと、変われるからこその希望が溶け合いながら描かれて行く物語の面白さは、たまらない物があった。
歴史ある建物の所で語られる台詞がとても素敵で尚且つ重みがあったのがとても良かった、ライブの場面では終わった瞬間に鳴り響くその拍手に、思わずこちらも拍手しそうになった位、あのライブの場面素晴らしかったな。
希望や安らぎはそう長くは続かないという所での現実を丁寧に描いていたのが素晴らしかったし、遣る瀬なくもあったけど。
一つの操作で鳴り響いたあの音は、映画の音の良さとヒューマントラストシネマ有楽町の音の良さもあって、思わずびっくりした。
あそこやってしまった感は凄くあるんだけど、思わず笑いそうになってしまったのも事実。
ああいう事って、そういうつもりじゃないけどやってしまう事って、誰にもでもあるからね。
容赦ない仕打ちに打ちひしがれながらも、とある場所へ向かって対面で語るその姿は、その現実に嫌でも向き合わなきゃいけないからこその誠実な語りと立ち振る舞いに釘付けにならずにはいられなかった。
自分が落ちぶれている現実に目を背けて、現実から落ちぶれて行く他人を見て良い気持ちになっている差別主義者の"レクイエム・フォー・ドリーム"の成れの果てがここで描かれていたように感じたし、友達だからとか、党派性を盾にした共同体であんな事やってて良い事なんて何一つないなと思った。
容赦ない現実を徹底的にリアルに描きながら、最後に優しさを滲ませていた所には思いっきりグッと来た。
痛みや悲しみや絶望の中で、かすかな希望をそっと滲ませるあの描き具合は現実に丁寧に寄り添っているからだと思うし、そこは未来にかすかにでも希望を込めて、という所なんだと思った。
現代社会に丁寧に寄り添うからこその徹底的にリアルを描いて行くからこその物語の面白さを存分に堪能する事が出来たし、映画と社会との関わり、その芸術性の強度と凄まじさを存分に体感する事が出来て、全てに於いて素晴らしい作品でした。


