ダムの底に沈んだ町-幻の風景-
町境の峠に続く「森林の道」。辿ってきた道を見下ろすと「ダム湖に浮かぶコンクリートの建物」が見える。まるで「ヨーロッパ」の川沿いに残された「古城」のようだ。ここは道北「士別市」にかつて存在した「伊文」と呼ばれる地域。今は、山中に残る「廃墟」だけが、そこに「人の暮らし」があったことを伝えている。

その「集落へ通じる道」を歩いてみた。道の先にあるのは「自然」で覆い尽くされ、跡形もなくなった「町の姿」であった。水面は夏の空を映し出していて「澄んだ青い色」をしている。

そして、遠くに見えた「コンクリートの建物」がその姿を現す。この「廃墟」は何の建物だったのだろう。「無機質」なコンクリートは何も教えてくれない。自然の中で「不気味」な存在感を放っているだけだった。

戦後間もない頃の「伊文」の様子。ダム建設前は「小学校」もあり、小さな集落を形成していた。

創立は明治時代に遡る「伊文小学校」。昭和34年には「開校50周年記念式」が行われたほど歴史のある学校であった。

現在は湖が町全体を覆っているのがわかる。ダム建設が始まった「昭和49年」に住民は全戸移転。町は自然に還っていった。

見渡す限り広がる「雄大な自然」。耳に届くのは、木々を渡る「風の音」と山中に響く「鳥の声」。

周辺の木々は根が灌水して枯れていた。「緑を失ったモノトーンの木々」は、まるで、ダム工事によって「絶え果てた町」の様子を象徴しているかのようだった。

この町を「故郷」としている人もきっとどこかにいるだろう。「さようなら・・・」と僕はダム湖畔を後にした。
