夕の空 (朱音の空想想像小説) -156ページ目

『赤炎』 5ノ2

その日の夕方。

帰路についたアサリーは、右腕を抱くようにふらふらと歩いて居ました。
拭くの袖をまくると、肘から上が焼け焦げたような火傷があったのです。

「……一体、いつこんな」

気がついたのは、夕べ遅くでしたが、その時は痛みも何も感じなかったのです。

それが、今朝から徐々に痛み出し、今では脂汗がにじむほどになっていました。

「夕べは、何ともなかったのに」

ジクリと痛む右腕を抱いて、アサリーは苦しげな息を吐きます。
ついに、路地の壁に、背中を付いてうずくまってしまいました。

ガクンと頭が落ちます。


そして次に上げた輪郭の中の、瞳には、妖しげな光が宿っていました。



レイディンは、夕方近くにアサリーの家を出ました。

そろそろ、潮時のようです。
≪赤炎の戦士≫は、今夜中にこの街を去る事になりそうでした。

レイディンは、今朝のアサリーのコーヒーに薬を仕込んでいました。

それは、ごく普通の、飲み薬の化膿止めです。
しかし、ゾンビに聖水が有効なように、赤炎の傷に化膿止めは逆に傷口を悪化させる事につながるのでした。

夕べから今朝のアサリーを観察していて、思ったのです。

掠っただけの傷では、ダメージは無い。
あれだけで彼女を追い詰める事は出来ないでしょう。

だから、薬を盛ったのです。
ある確信を持って。



「……おのれ」

アサリーの体がゆっくりと立ち上がりました。

「≪赤炎の戦士≫か。生き残りが、まだ居ったとはの」

「それは、どういう意味だ?」
アサリーの発する魔気に誘われるように、たどりついたレイディンは、そんな問いを口にしました。

アサリーが眼に禍々しさをたたえて声の聞こえた方を睨みます。
そこには≪赤炎の戦士≫が立っていました。

アサリーは口の端を持ち上げて妖艶な笑みをたたえ、無慈悲に言葉を紡ぎます。

「お前の血族を、全滅に追いやったのはわたくしという事よ、ぼうや」

およそ15年前、鉱山に居を構える一族の部落を襲ったのです。

『吸魂姫』という名の魔族の長が。

「誤解しないでちょうだいよ。今、人間界に存在しているのはわたくしの力のおよそ半分。実体は魔界にいるのだからね」

200年前の聖戦において、唯一完全に封印しきれなかった『吸魂姫』……実際、その力の半分が地上に残っていた事になります。

「この街を、拠点に、人間の体を乗っ取って今までやってきたのか」
「そうよ。次々に胎児に乗り移り、魂を食らっては今まで生きてきた」

勝ち誇ったような笑みの正体は、次の瞬間、知れました。

「『時守』も気付かないようにひっそりと、力を蓄えてきた。今の妾ならお前を殺せるぞ」
アサリーの姿をして、『吸魂姫』はニィ、と嗤いました。

レイディンは、ほぼ感情のない眼でアサリーの体を眺めています。
外見はアサリーでも、内に潜んでいるのは『吸魂姫』魔界の9人の長の中の一人でした。


明け渡せ。
心の中から声が聞こえました。

ならば、この勝負勝たせてやるぞ。

レイディンの中に巣くう≪赤炎の戦士≫が保証します。

しかし、レイディンは奥歯を噛みしめ、その誘惑にかぶりを振りました。

「オレは、オレで解決するっ」
お前に取り込まれてたまるか。

オレに取り込まれるのは、お前の方だ……っ。




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うん!想像通りの展開っ (・∀・)b。




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