夕の空 (朱音の空想想像小説) -155ページ目

『赤炎』 5ノ3

「……どうした。倒そうと思うて、この女からわたくしを燻りだしたのではなかったのか?」
アサリーの声が、路地にやけに厳かに響きました。

「≪赤炎≫の。手を抜いていては本当に、我が半身を持って殺してくれよう」

「させるかよ、魔界のババァに出直してこいと伝えとけ」

漆黒の瞳に炎を灯し、深紅に輝かせてレイディンがアサリーを睨みます。
その瞳には、≪赤炎の戦士≫が、顔をのぞかせていました。


「なぁんか、美味しそうな匂いがすると思ってたのよね」
アサリーの口から、アサリーの言葉がこぼれ落ちます。

「≪八将≫ねぇ。それは美味しそうな筈だわ、神の手先の魂なんだもの」

でも、……と続けたアサリーは、再び『吸魂姫』に戻っていました。


「まさかあの時に捕り逃した命があったとはのぅ。『時守』のヤツに邪魔されたせいか」

「その言葉、聞き捨てならねぇな」
ギラっと闇を孕んだ深紅の瞳が輝きました。


「とりあえず、貴様は殺す」

レイディンの周りに炎が渦巻き始めます。

レイディンが右腕をすっと掲げると、その紅蓮の炎はアサリーの体をも巻き込みました。


「目つきが、変わったな」
『吸魂姫』が喉を震わせ、くつくつと嗤います。


「うるせぇ。貴様にはもう喋る権利すらない。俺の眷属を襲った報いを今ここで受けて死ね」

しかし、『吸魂姫』は自分の喉に手を当てます。
その時、アサリーの爪が手の平ほどの長さに伸びました。

そしてその爪で、『吸魂姫』自分ののど元に爪を立てたのです。

「この女、殺しても良いのか?」
「小賢しいな。そんな人間の女、生きようが死のうが知った事か」

待てよ!!
レイディンの意識が、脳裏に響きます。

今や、肉体は≪赤炎の戦士≫に支配されている状況の中、奥底から這い出して、レイディンが抵抗を試みます。

「テメェは黙ってろ」

黙ってられるか!人間の命なんだと思ってやがる!!

「俺を支配しきれないお前がなにを偉そうな事を」
≪赤炎の戦士≫は鼻で笑いました。


その時、『吸魂姫』の反撃が始まったのです。
自分を取り巻く炎を振り切るかのように爪を振るい包囲網を突破しました。


「お前、答えろっ」

目前に迫った『吸魂姫』に、レイディンの魂が問います。

「アサリーを利用したのか!?」
「テメェは引っ込んでろっ」

レイディンの口から、レイディン本人と≪赤炎の戦士≫の言葉が並んでこぼれます。

「うっせぇ、オレの体、返せ!」
「テメェじゃ、あいつに勝てねぇだろうが」

「アサリーはどうなるんだよ!」
レイディンが叫びます。

「……あの女は生まれた時から『吸魂姫』に寄生されてんだ。もう手遅れだ。そうやって200年生きてきたんだヤツは」
「っ……!」

『吸魂姫』はアサリーの喉元に爪をかけながら、レイディンに躙り寄ります。

「「二重、三重の罪に焼かれて死ね!」」

レイディンの深紅の瞳に闇と深紅が渦巻く業火が迸りました。




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次で最後……になる事を祈りたい。




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