「え!あ…」
信じられない光景に思わず声が出てしまった。デルフィニウムを描いているのかと思っていたら、なんと、僕の似顔絵だったから。
ビクッとして彼女が振り返る。
その瞬間とても驚いたのか、すごく大きな瞳と目が合った。
彼女は慌てて描いていた絵をスケッチブックから破りクシャクシャまるめて
『なんで…っ』
と僕に投げつけてきた。
逃げ出そうとする彼女の手首を条件反射で掴んでしまった。
その細さと柔らかさにビックリしつつ
「いや、あの…なんで…」
僕はいろんな感情が混ざり合ってうまく言葉が出てこなかった。
彼女は僕の手を振り切って走っていってしまった。
僕の右手には彼女の柔らかい手首の感触が鮮明に残っていた。
次の日。
何となく今日は花屋に彼女がこない気がした。
昨日のアレはなんだったんだろう。
僕の似顔絵……
投げつけられたが、そのままにできず持って帰ってきてしまっていた。
彼女も美大生かもしれない。あまりにも似顔絵がうまく、よく特徴をとらえていた。
いつものように開店準備をしていたら、店先に彼女が現れた。
僕は激しく動揺したけど、昨日のことを謝りたかった。
慌てて外に出る。
「昨日はあの…本当にごめんなさい。僕の似顔絵…あ、じゃなくてなんで、突然あ、ビックリさせてしまい…」
何を言いたいのか自分でもわからなくなってしまった。
彼女はいつもよのように俯いている。
覗き込むと真っ赤な顔をして、一輪の花を僕に差し出した。
それはリナリアという花。
僕はその瞬間、いてもたってもいられなくて彼女を抱き締めた。
彼女はビックリして強張っていたが次第に力が抜け、手を僕の腰にまわす。
僕はこんな不器用な彼女を絶対離さないと誓った。
そう。
リナリアの花言葉は"私の恋に気付いて"。
fin