映画「オッペンハイマー」、「原爆の父』と呼ばれる男 | 工房長のぼやき

工房長のぼやき

チームスチームパンの工房長、安達俊信の日々是之。
思いついたことをカタカタ書いています。

「オッペンハイマー」を観る。

 

戦争について、新たな知見を得るのに

非常に有意義でした。

 

娯楽映画ではないので、おそらく、

20代の頃に見ていたら、

全く面白くなかったことでしょう。

 



 

「原爆の父』と呼ばれるオッペンハイマー。

 

「原爆投下をひどく後悔し、

 戦後は、核に反対し、

 水爆反対派に回った人」

 

と紹介するとわかりやすい。


「原爆を落として、

罪のない日本人を一瞬で殺したのだから、

その悪行を後悔してもらわなくては。」

 

というのが、日本人として主張するならわかりやすく、

受け入れやすい。

 

映画を見ない人には、

「作った人は後悔して、日本に謝っているんだ」

と思ってもらった方が、敗戦国として救いがある。

 

んが、そんなことは一切描かれていません。

強引にそう見ようと思えば見られなくはないかもしれませんが、

日本のメディアでは、

 

「クリストファー・ノーラン監督が

「オッペンハイマー」の映画で、

核を作った本人が作ってしまったことに

苦悩することを描いている。」

 

という紹介をがしていましたが、

「全くミスリードだな」

と思いました。

 

 

180分の、超大作です。

 

人類を一瞬で滅ぼすことができる道具を作り上げた科学。

 

神ではなく、人間のによって作られた道具は、

人の判断によって使われる。

 

その判断は、作った本人ではなく政治家に

委ねられます。

 

その政治家は、自分のことばかりで

保身に走る生き物です。

 

 

オッペンハイマーは、

世界を滅ぼす武器が使われることにビビっていたわけではなく、

これまでの世界の戦争を

根本から変えてしまったことにショックを受けていました。

 

抑止力として使われる武器は、

あくまでバランスの上で成り立ち、

そのバランスがちょっと崩れただけで、

あっけなく世界が滅びます。

 

人の判断に任せられている時点で、

世界がすでに滅んでいるのと変わらない。

 

今回の作品は、そういった主張だと受け止めています。

 

 

凡人に理解できるオッペンハイマーが描かれている。

 

クリストファー・ノーラン監督は、

天才オッペンハイマーではなく、

人間オッペンハイマーを見せるために

凡人に理解できるオッペンハイマーを描きました。

 

超天才が何を考えているか、凡人にわかるわけがないのに……。

 

オッペンハイマーは、最大限の効果を出すために

空中での爆破を進言し、

人への被害ではなく

結果(効果)を求めていた人です。

 

天才の一人、ジョン・フォイ・ノイマンは

日本人の心の支えをくじくには

京都への原爆投下を主張していました。

 

天才は、人間の感情に左右されずに

結果にフォーカスするからこそ、

凡人には理解できない、

人知を超えた領域へ踏み出せるものです。

 

 

クリストファー・ノーラン監督は、

オッペンハイマーその人自身に焦点を当てたいので、

凡人オッペンハイマーを描いています。

 

もし、天才として描くなら、

映画「アマデウス」のように

隣にサリエリのように

凡人を置いて天才を見るようにしないと。

 

 ※実際のサリエリは天才です。

 

クリストファー・ノーラン監督は、

人知を超えた人間ではなく、

天才でも、人間ってこんなものだ

ということを描きたいんだろうな

とか勝手に思っています。

 

そのため、実際にオッペンハイマーが

何を考えていたのか。

 

凡人が天才を理解しようとすること自体が

おこがましいなと感じます。

 

 

ただ、作品の中で描かれている

凡人オッペンハイマーが、

戦後、水爆に反対したのは、

 

「核が一発あれば十分な抑止力となり、

複数あると、判断する人間が増え、

バカが交じると暴挙に走る」

 

ということを懸念したのではないでしょうか。

 

 


「敗戦国というのはこういうことか」

 

という実感を、この作品を見て得ました。

 

「負けた側は、戦争について

絶対悪であるのだから、

何も言う権利はなく、

勝った側は、

敗戦国がどう思っているかなどは

考える必要すらない。」

 

というのを作品を通して思いました。

敗戦国の日本の視点から見るからこそ

得られる知見でした。

 

そりゃそうだ。

 

日露戦争で、丁字戦法でバルチック艦隊に完勝した日本。

なんとかロシアに勝った日本ですが、

当のロシアは、その後、ロシア革命が起き

国は大混乱。

 

ロシア側からすると、日露戦争は、どう見えているんでしょう。

 

 

世界は、ウクライナ、イスラエル、など、各地の戦争が続いています。

 

権利を主張をしたいなら、勝つしかない。

負けるわけには行かない。

 

戦争について考える機会は、今後、より必要だと感じます。