メールの主はやはりモンさんだった。
僕は基本本名を知っていればフルネームを携帯に登録している。
彼の名前の漢字が4文字がディスプレイに並んでいるのを久しぶりに見た。
こんなにも…こんなにもあっさりとメールが来るのに、僕は今まで一体何を考えていたのだろう?
恐る恐る開封。急いで返信したらしいその内容はこうだった。
【仕事が忙しくて返信できなかったよ。気になる人が出来たからもうメールや会うことは
できないんだ。勝手だと思うけどごめん】
頭にポカンと空白ができた。それから心臓のあるほうの胸に空洞が広がって、
みるみる向こうの景色を大きくしていった。え、なんて?なんて書いてあるの?
僕はもう一度メールを読み返した。短い数行の文章だった。
あんなに長文のメールをしてきていたモンさんが、たった数行…こんな大事なことを…
少なくとも、僕が君を想って悩んでいたその答えが…たった数行…
胸に空いた空洞の際から絞り出すように雨が降る。それは悲しみになって僕の心から溢れ出した。
内側からめくられ身体が裏返るような激しい痛みだ。まずは奥歯が鳴って、唇が震えて、
僕はやっと涙で正気を保つことが出来た。
モンさん、モンさん、モンさん、モンさん…
携帯を胸に抱きしめて僕は顎から涙を落し続けた。僕の、僕の安住の場所は永遠に失われたんだ。
事態を把握して少し気持ちが収まったところでメールを打った。
【わかった。もう連絡しないよ。
あたしね、君のことがとても好きだった。最後に会ったとき、このまま一生居たいと思ったよ。
君は恋が出来ないのかと思っていたから少しホッとしてるよ。あたしも外で会える人が出来たから
もうハプバーへは行かない。忙しいとは思うけどどうか元気で。
いい子で居たいあたしだけど、これだけは言わせて。
…ひどいよ…モンさん】
送信のキーを押す。…これが、最後のメールだ。
「…ひどいよ、モンさん…ひどいよ…」 僕はモニターの向こうを眺めてそう口に出してみた。
いろいろな彼の表情が浮かび上がった。にへらっと笑った顔、口をへの字にして、
何かを考えている顔、眉を吊り上げて怒った顔…。
そのひとつひとつを大切に僕は愛でた。もう見ることが出来ないその顔は、この瞬間記憶から
薄れていくんだ。
彼のにおいを思い出した。それは彼と最後に会ったときにかいだにおい。
耳の後ろから、豚肉を紅茶で煮るにおいがかすかにした。
これから先、僕はチャーシューを煮るたびに彼を思い出すだろう。
携帯を開いて女友達の番号を押した。僕は女性の前でめったに泣かないが、
「もしもし」 と言った後はもう言葉にならなかった。
意味を悟った彼女は涙声になり、「きなよ」 と言ってくれた。
一度落ち着いてから流す涙は辛い。意味がよくわかっているから。
けがをしてすぐ縫うのと、次の日縫うのでは痛さが半端なく違う。それと一緒だ。
僕はコンビニで、大量の缶ビールをお土産に買い、友人宅へ転がり込んだ。
賞味期限の切れたイカスミあたりめと僕のレシピ彼女が作ったチャーシューをアテにした。
彼女の前ではほとんど涙は流れなかったが、彼女が台所に立ち一人になると、
感情が崩れ去るほど泣けて参った。
チャーシューは、彼女なりの進化を遂げて、少し甘く仕上がっていた。
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僕は基本本名を知っていればフルネームを携帯に登録している。
彼の名前の漢字が4文字がディスプレイに並んでいるのを久しぶりに見た。
こんなにも…こんなにもあっさりとメールが来るのに、僕は今まで一体何を考えていたのだろう?
恐る恐る開封。急いで返信したらしいその内容はこうだった。
【仕事が忙しくて返信できなかったよ。気になる人が出来たからもうメールや会うことは
できないんだ。勝手だと思うけどごめん】
頭にポカンと空白ができた。それから心臓のあるほうの胸に空洞が広がって、
みるみる向こうの景色を大きくしていった。え、なんて?なんて書いてあるの?
僕はもう一度メールを読み返した。短い数行の文章だった。
あんなに長文のメールをしてきていたモンさんが、たった数行…こんな大事なことを…
少なくとも、僕が君を想って悩んでいたその答えが…たった数行…
胸に空いた空洞の際から絞り出すように雨が降る。それは悲しみになって僕の心から溢れ出した。
内側からめくられ身体が裏返るような激しい痛みだ。まずは奥歯が鳴って、唇が震えて、
僕はやっと涙で正気を保つことが出来た。
モンさん、モンさん、モンさん、モンさん…
携帯を胸に抱きしめて僕は顎から涙を落し続けた。僕の、僕の安住の場所は永遠に失われたんだ。
事態を把握して少し気持ちが収まったところでメールを打った。
【わかった。もう連絡しないよ。
あたしね、君のことがとても好きだった。最後に会ったとき、このまま一生居たいと思ったよ。
君は恋が出来ないのかと思っていたから少しホッとしてるよ。あたしも外で会える人が出来たから
もうハプバーへは行かない。忙しいとは思うけどどうか元気で。
いい子で居たいあたしだけど、これだけは言わせて。
…ひどいよ…モンさん】
送信のキーを押す。…これが、最後のメールだ。
「…ひどいよ、モンさん…ひどいよ…」 僕はモニターの向こうを眺めてそう口に出してみた。
いろいろな彼の表情が浮かび上がった。にへらっと笑った顔、口をへの字にして、
何かを考えている顔、眉を吊り上げて怒った顔…。
そのひとつひとつを大切に僕は愛でた。もう見ることが出来ないその顔は、この瞬間記憶から
薄れていくんだ。
彼のにおいを思い出した。それは彼と最後に会ったときにかいだにおい。
耳の後ろから、豚肉を紅茶で煮るにおいがかすかにした。
これから先、僕はチャーシューを煮るたびに彼を思い出すだろう。
携帯を開いて女友達の番号を押した。僕は女性の前でめったに泣かないが、
「もしもし」 と言った後はもう言葉にならなかった。
意味を悟った彼女は涙声になり、「きなよ」 と言ってくれた。
一度落ち着いてから流す涙は辛い。意味がよくわかっているから。
けがをしてすぐ縫うのと、次の日縫うのでは痛さが半端なく違う。それと一緒だ。
僕はコンビニで、大量の缶ビールをお土産に買い、友人宅へ転がり込んだ。
賞味期限の切れたイカスミあたりめと僕のレシピ彼女が作ったチャーシューをアテにした。
彼女の前ではほとんど涙は流れなかったが、彼女が台所に立ち一人になると、
感情が崩れ去るほど泣けて参った。
チャーシューは、彼女なりの進化を遂げて、少し甘く仕上がっていた。
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