数日、突然膝が抜けるような悲しみに襲われることがあった。
涙が止まらず眠れなくて、電気をつけてパソコンに向かってリフレッシュしたりした。


僕は坂本さんに文句をつけに行った。


「君が青あざをつけたから、振られたじゃないか」


モンさんに最後に会ったのは坂本さんと遊んだ次の次の日だった。
こともあろうか坂本さんは僕の太ももを噛んで鰯雲のような青あざだらけにしたのだ。
モンさんに気付かれることを懸念した僕は、先にこう言っておいた。


「飼い犬にかまれたんだよね」


と。
間違ったことは言ってませんよ?ある意味。
モンさんは 「俺も昔おじいちゃんちの犬に噛まれたことあるよ」 と変な顔をしていた。
飼い犬の意味におそらく後で気がついただろう。要するに僕の言い訳が悪かった。
てーかソコ間違ったこと言ってもよかったろ、と後で思った。中途半端なこと言わずに
「箪笥の角にぶつけちゃって」とか適当なこと言っておけばよかった。
いや、箪笥にはどう考えてもぶつけないけど。内腿を箪笥に擦りつけるプレイですか?
それはそれでなんか楽しそう…。


…とりあえずコイツが腿を噛みさえしなければ振られなかったかもしれない。


「えええ、俺のせいじゃないだろ」


うん、違うかもしれない。


「やかましい、君のせいなの」


「えー…俺じゃないだろ」


小声で文句を言いながら僕にビールの缶を手渡した。銘柄は間違っていなかった。




更に数日後、ハプニングバーへ忘れ物を取りに行く。
取りに行くだけでも良かったのだが、せっかくなので飲む。
暇だったせいで目の前に店長が居て、僕に色々話をしていた。いつものような速射砲ではなく、
ゆっくりした調子で喋っていた。僕は彼が得意気に話し始めると毎回すごく嫌な顔をしていたので、
さすがに気づいたらしい。


「ハンターちゃんと俺って、信頼関係築けてないと思うんですよ」


うん。築けてない。これからも築く気はないけどね。でも穏やかに話ができてよかった。
その日、彼の話にイライラすることはゼロではなかったけど、限りなくゼロに近かった。


見慣れた扉の鍵が閉まる。
さよならハプバー。今までありがとうございました。僕はこちらの世界でやっていきます。


流れる街の灯は、いつもよりずっと清々しかった。僕は夜が大好きだ。
それは欲が霞んで見えるからかもしれない。暗い明りの中ではそれが見えにくい。
でも僕は朝も好きだ。欲望の爪痕で街が汚れた姿を見るのが好きだ。川の煌めきを見るのが好きだ。
夜は飲みに行きたいと思わせるが、朝はどこまでも歩きたい、と思う。


歩いていこう。どこまでも。僕はこの明るい世界で胸を張って、いきていくんだ。


…その割に掌にいる男性は…牧野君なんでまた日陰の恋ですけど…。



(まだ、続きます。あと3、4話だと思います)



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乙女心とハプバーと