以下ネタバレです










大騒ぎを始めた子供たちをなだめようと先生がチョコを配り始めた。

チョコを配っていると1つ足りなくなってしまった。

園児1「オレの分、ないのかよ!」

園児2「やっぱりアイツが持ってるのがタクミくんの分なんだよ!」

園児2「チョコ返せ!」

主人公「わっ、どうしよう」

先生 「園児の数ぴったりしか用意してなかったから・・・」

主人公「きっと私達のチョコも、数に入ってしまってたのかもしれないですね」

拓斗 「・・・」

(この状況・・・しかたないか・・・)

主人公「・・・拓斗さん、ごめんなさい。すぐに新しいのを用意しますから・・・そのチョコは、この子にあげてもいいでですか?」

小さな男の子が、私達の顔を不安そうに見上げている。

拓斗 「・・・はぁ。しかたねーし。○○が悪いわけじゃねーから」

拓斗さんは、子供の目線に会うようにゆっくりしゃがみこんだ。

拓斗 「お前、なんて名前?」

園児1「タクミだよ」

拓斗 「なんだ、オレと似てんだな・・・」

拓斗 「これ、やる」

拓斗さんはチョコの包みを男の子に渡した。

拓斗 「これはオレの大事な○○がくれたチョコ・・・特別なヤツだかんな」

園児1「え・・・トクベツのチョコ、オレがもらってもいいのか?」

拓斗 「しょーがねーし。なんか他人の気がしねーからくれてやる」

そう言いながら拓斗さんは男の子の頭をくしゃくしゃと撫でた。

園児1「お兄ちゃんありがとう!」

拓斗 「そこの姉ちゃんにも言えよ」

園児1「うん。お姉ちゃん、ありがとう!」

主人公「ううん、どういたしまして」

拓斗 「○○、行くぞ」

拓斗さんはぺこりと頭を下げると、部屋を出て行こうとする。

何も言わずに帰ろうとする拓斗さんに、子供が話しかけた。

園児1「お兄ちゃん、トクベツのチョコありがとう!」

拓斗さんは何も言わずほんの少し微笑む。

拓斗 「行くか・・・」

主人公「えっ?は、はい・・・」

そして私の手を取ると、黙ったまま幼稚園を後にした。


黒狐までの帰り道。

主人公「ごめんなさい。私がちゃんと見てればこんなことにならなかったのに・・・」

拓斗 「そんなの別に気にしてねーし。たかがチョコだろ」

拓斗さんの声は少し強がってるように聞こえた。

拓斗 「お前のチョコ、食べられなくてごめん・・・」

主人公「拓斗さん・・・私こそごめ・・・」

言葉を続けようと思った瞬間、拓斗さんが私をそっと抱きしめた。

拓斗 「○○は悪くねーし。もう謝んな」

主人公「うん」

拓斗 「つーかオレら、二人で謝ってばっかで変だな」

主人公「ふふ、ほんとですね。私は拓斗さんのためにって・・・そう思っていて、拓斗さんは私の為に・・・って二人でお互いに思い合ってたっていう事ですね」

拓斗 「だな。今年は食べられなかったけど、来年は今年の分もくれんだろ?」

主人公「もちろん!あっ、でもそれなら後で作りましょうか?」

拓斗 「それはダメ」

主人公「えっ?どうしてですか?」

拓斗 「○○がこっそり、オレの事を想って作ってんのがいいんだよ」

主人公「ええっ!」

(うわっ、なんだか恥ずかしいけど、そんな風に思ってくれるのはすごく嬉しいな・・・)

主人公「拓斗さんが嬉しいと思ってくれると、私も嬉しいです」

拓斗 「だ、だったらもういいし。ほら、さみーから帰るぞ」

主人公「はい」

お互いの顔を見ながらにっこりと笑うと、手を繋ぎながら黒狐までの道を戻った。


黒狐に戻ると蘭子が来ていた。

蘭子はチョコの包みを差し出す。

それは私が拓斗さんのためにと作ったチョコと同じ包み。

不思議に思っていると、蘭子が話し出す。

蘭子 「実はこの間の料理教室でね、私、間違えて○○のチョコレートを持って帰っちゃったのよ」

主人公「えっ!」

蘭子 「ほらみて、ここ。ラッピングが一緒だから間違えないようにって、○○がハートマークを書いてたのがあるでしょ?」

主人公「ほんとだ・・・じゃ、このチョコの包みは・・・」

蘭子 「そう、○○の分」

(よ、よかった!これで拓斗さんにチョコを渡せる・・・)

主人公「ありがとう、蘭子」

宙  「ねー、たっーくーん。た・し・か・・・たっくんはチョコいらないんだよね?それなら僕が食べちゃってもいいよね」

健至 「あ、それだったらオレももらおうかな」

すると、さっきまで落ち込んでいた拓斗さんが顔を急にあげた。

拓斗 「誰がお前らなんかに渡すか!マジふざけんなし!そんなにチョコが食いたかったら、勝手に食ってろ!」

拓斗 「○○。ここにいたら、こいつらにチョコくわれそーだから帰るぞ!」

主人公「えっ、ちょ・・・ちょっと拓斗さん!待ってくださいよ!」

拓斗さんは猛ダッシュで黒狐を飛び出してしまった。

主人公「すみません、みなさん。また来ます!」

私も拓斗さんを追って黒狐を後にした。


あの後すぐに部屋へと戻ってきた私達。

拓斗さんはテーブルの上にチョコを置いたまま正座をして眺めている。

主人公「開けてくれないんですか?それともやっぱり、今年はチョコはもう食べないつもりとか・・・?」

拓斗 「ちげーし」

拓斗さんはなぜか、すこしふて腐れたようにしてこちらを見ている。

拓斗 「・・・渡せよ」

主人公「はい?」

拓斗 「こーゆーのは、お前がオレにどーぞとか言って渡すもんじゃねーの?ちゃんともらわねーと、なんか嬉しさ半減すんだろ」

主人公「ああ、なるほど・・・」

  もう、可愛いんだからっ!

主人公「それでは・・・改めましてですが」

主人公「これからもずっと・・・ずっと私のこと、好きでいてね」

拓斗 「・・・なんか、すげーうれしい。お前もオレの事、ずっと好きでいろよ」

拓斗さんは本当に嬉しそうにチョコを受け取ってくれた。

自分の手にチョコを持ったまま、拓斗さんはチョコを眺めている。

主人公「拓斗さん?」

拓斗 「オレのチョコ?」

主人公「そうですよ」

嬉しさをこらえるようにしているのがよく分かる。

主人公「拓斗さん。嬉しくないんですか?」

拓斗 「べ、べつに・・・」

拓斗 「まーあれだ。しょーがねーし。おまえがそこまで言うならもらってやるか。オレから欲しいとか言ったわけじゃないからな・・・」

拓斗さんは独り言を言いながら上機嫌で包みを開くと早速チョコを一つまみしてぱくっと食べた。

拓斗 「・・・う」

主人公「えっ、美味しくなかったですか?!」

拓斗 「・・・」

(どうしよう・・・美味しくなかったんだ!)

恐る恐る拓斗さんの顔を見る。

拓斗 「・・・うめぇ」

主人公「えっ?」

拓斗 「・・・なにこれ、超うめーし」

拓斗 「つーかこれマジで手作り?ほんとは買ってきたんだろ」

主人公「もー、違いますよ!ちゃんと拓斗さんの喜んでくれる顔を想像しながら美味しくなるように頑張ったんですから・・・あんまりいじめないでくださいよ」

拓斗 「なんだそれ・・・」

主人公「知らないんですか?好きな人のことを想いながら作ると、チョコは甘くておいしくなるんです」

主人公「ここには私の大好きの気持ちがいっぱいこもってるんですよ?」

拓斗 「○○も魔法使いかよ」

拓斗 「つーか、オレの事考えながら作るとか、お前、オレの事好きすぎだろ?」

主人公「当たり前じゃないですか・・・自分の彼なんですから」

拓斗 「つーか、そんな一生懸命つくったならお前も食え。一緒に食うか」

主人公「ありがとうございます」

拓斗さんが私の口の中に、チョコを1つ入れてくれる。

主人公「うん、我ながら美味しく出来てますね!」

拓斗 「お前じゃなくて、材料が優秀なんだろ」

主人公「また、そんないじわる言う・・・」

拓斗 「あ」

主人公「へ?」

拓斗 「・・・あー」

拓斗さんが、ぱくぱくと口を開けて、私の方を見ている。

拓斗 「あーん」

主人公「はい、あーん・・・」

拓斗 「あーん」

私の指ごとチョコを食べようとする拓斗さんが、満足そうに頷く。

主人公「わっ、指まで舐めないでください・・・」

拓斗 「だ、誰がするか」

主人公「美味しいですか?」

拓斗 「ん、3倍うまくなった」

主人公「もう・・・ほんとですか?ふふ」

子供のように無邪気に言う拓斗さんが何だか可愛くて一人で笑ってしまった。

拓斗 「・・・隙アリ」

主人公「えっ・・・って・・・んっ!」

驚いて拓斗さんの方を向いた瞬間、私を抱きしめる温もりと、唇に触れる柔らかな感触がして、口の中に甘いチョコの香りが広がった。

主人公「も、もう・・・いきなりキスしたらびっくりするじゃないですか・・・」

拓斗 「これで5倍うまくなった。お前ごと食ってやる」

拓斗 「イヤ?」

主人公「イヤ?とか聞かれても・・・恥ずかしので、そう言うのは聞かないで下さ・・・」

主人公「んっ」

私が最後の一言を言い終わる前に、再び拓斗さんがそっとキスをする。

拓斗 「さんざんお預け食らったんだから、もっとウマいもん食わねーと・・・つーか、チョコ食ったから、次はデザートだな」

拓斗さんが、私の髪に手を添わせながらニヤリと笑う。

(こ、これは・・・また何か企んでる顔だ・・・)

主人公「あー拓斗さん。チョコはデザートですから、今ので終わりですね。だからもうごちそうさまですよね」

拓斗 「うっせーし。細かいことは気にすんな。じゃ、デザートのデザートってことで」

拓斗 「こら、逃げんなし」

逃げようとしたところで、あっという間に拓斗さんに捕まってしまった。

拓斗 「捕まえた」

主人公「・・・捕まった」

拓斗 「おい・・・、その・・・チョコ、嬉しかった。けど、他の奴には絶対手作り禁止だかんな」

主人公「うん、ちゃんとわかってますよ。トクベツは拓斗さんだけですから」

拓斗 「可愛いヤツ・・・」

拓斗さんの優しいキスが、私のいたるところに触れた。

私はそっと目を閉じて、甘い香りのする拓斗さんのキスを受け入れる。

カレと過ごした初めてのバレンタインは、甘いチョコの香りに包まれて・・・

私の心の中に、幸せな記憶をまた1つ刻んだ。





*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:


たっくん、可愛かったです~!!

最初は酷いことばっかり言うから、もうチョコあげない!って思ってたりもしたんだけどね

こんなに愛されて幸せな気分~≧(´▽`)≦