以下ネタバレです












海司とみどりにこっそり告げて、私とそらさんは温泉へと向かった。

  海司には言ったんだ・・・

(みどりと小杉先輩・・・大丈夫かな)

(私も、できるだけそらさんと一緒の時間を引き延ばさなくちゃ)

そら 「○○ちゃん?どうかした?」

主人公「いえ、なんでも!ところで、温泉は・・・」

そら 「たしか、このへんなんだけど・・・」

そら 「あった!あそこだよ。行こう!」


♪~

(メール・・・みどりからだ)

(「ロッジに戻ってきたよ。あとは時間稼ぎよろしく」・・・良かった・・・)

そら 「○○ちゃーん、早く入っておいでよー」

主人公「はーい」

そっと中を覗き込むと、そらさんの背中が見える。

(バスタオル・・・巻いたままでもいいよね?)

そら 「○○ちゃん?どうしたの、早くおいでって。すごく景色がきれいだよ」

主人公「はい・・・」

そら 「・・・ハハッ。もしかして恥ずかしい?」

主人公「え?その・・・まぁ・・・」

そら 「これが初めてじゃないのにね」

主人公「それでも、緊張します」

主人公「その・・・好きな人の前だし」

そら 「・・・」

そら 「・・・かーわいい!」

主人公「え?」

そら 「○○ちゃんのそういうところ、ホント、可愛いよなぁ」

主人公「そ、そうですか?」

と、そのとき、塀の向こうから・・・

桂木 「ほう・・・これはなかなか見事だな。どうだ、石神」

石神 「ええ、たしかに素晴らしいですね。ここから見える雪山の具合が、まるで計算されたかのように絶妙ですね」

桂木 「はー・・・、しかし、あいつらは、何も問題起こさずに居るだろうか・・・」

石神 「まぁ、彼らも一応大人ですから」

桂木 「うむ・・・それもそうか」

石神 「・・・すっかり保護者ですね」

桂木 「誰がお父さんだ!」

石神 「そこまで言ってません」

桂木 「そういうお前だって黒澤と後藤を気にかけてたじゃないか」

石神 「・・・あれは黒澤が何か変な間違いを起こさないか心配して・・・」

(もしかして、隣にいるのって・・・)

主人公「桂木さんと石神さ・・・」

そら 「うわっ!大きな声だしちゃダメ!」

桂木 「・・・おい、もしかして、そっちにいるのはそらか?」

そら 「は・・・はい・・・まぁ・・・・」

桂木 「まさかお前・・・」

そら 「一人です!一人で寂しく湯船に浸かってます!」

石神 「女性の声も聞こえた気がするが?」

桂木 「確かに」

そら 「それは、その・・・女装した時の練習です!」

そら 「『桂木さーん、スパイ石神さーん』・・・って感じで・・・」

二人 「・・・」

ガラガラガラッ!

女1 「きゃっ。ちょっと、先約いたよー」

桂木 「な・・・!」

石神 「なんですか、あなたたちは!個室風呂でいきなり・・・・」

女2 「ごめんなさーい、鍵が空いてたから誰もいないかと思って」

桂木 「・・・仕方ない、別の個室風呂に移動するか」

石神 「そうですね」

女1 「ええっ?行っちゃうんですか?」

女2 「どうせなら一緒に入りませんかー」

桂木 「い・・・いえ、失礼します」

石神 「桂木さん、待ってください。私のメガネが・・・」

バタバタバタ・・・

そら 「・・・うわぁ、助かったぁ・・・バレたらどうしようかと思った」

主人公「ふふっ」

そら 「もう・・・笑い事じゃないって。春の旅行の時も大変だったじゃん」

主人公「そうでしたね」

そら 「・・・今年もいろいろあったね」

主人公「そうですね。バレンタインデー・・・ホワイトデー・・・」

そら 「バレンタインデーの時はごめんね」

主人公「いえ、そんな・・・」

主人公「それより、ホワイトデーはありがとうございます。すごく嬉しかったです」

そら 「ハハッ。そう言ってもらえると嬉しいけど」

そら 「あとは、遊園地にも行ったね。オレ、女装してたけど」

主人公「そうでしたね」

そのとき、ふわりと何かが落ちてきて・・・

主人公「あ・・・」

そら 「雪だねー」

ふいに、そらさんに手を引かれる。

そして・・・

主人公「そらさん?」

そら 「少し、こうさせて・・・」

主人公「・・・」

そら 「今年もいろいろあったけど、こうして無事にクリスマスを迎えられて良かった。こんなふうに、○○ちゃんを抱きしめることが出来て・・・」

囁くように響く、そらさんの言葉。

その声色に、今年あった「様々なこと」を思い出してしまったけど・・・

主人公「来年も再来年も、こんなふうに一緒に過ごせますよ」

そら 「○○ちゃん・・・」

主人公「どんなことが起きても、絶対に」

そら 「・・・そうだね」

主人公「じゃあ、そろそろ上がりましょうか?」

そら 「ええっ?もう少しこうしていたいんだけど」

主人公「じゃあ、あと少しだけ・・・」

そら 「ありがと」

抱きしめられたまま、首筋にそっとキスを落とされる。

主人公「え・・・っ?」

そら 「ハハッ。大丈夫。これ以上はしないから」

主人公「は・・・はい・・・」

そら 「だから、もう一回だけ・・・」

今度は、耳の裏に触れるだけのキスが落ちてくる。

二人きりの幸せなひと時・・・

曇り空からは、淡い雪がゆっくりと落ちては消えていった。


温泉を出てから、さらに20分・・・

(みどりからのメール、まだ来ないな。大丈夫かな)

(その分、そらさんと二人きりでいられるのは嬉しいけど・・・)

そら 「○○ちゃーん、どっちのお土産がおいしそう?湯けむり事件まんじゅうと、湯けむり刑事のクッキー」

主人公「クッキーがいいです」

そら 「じゃあ、こっちは帰ったら一緒に食べよう?で、温泉まんじゅうはお土産・・・っと」

主人公「どなたにですか?」

そら 「他の班の連中に。今回、総理の警護を替わってもらってるからさ。班長に『お土産を用意してくれ』ってたのまれてんの」

主人公「そうだったんですか」

♪~

そら 「お、電話だ。もしもーし」

♪~

(あ、私にもメール・・・みどりからだ!)

『○○!準備バッチリだよ★小杉部長と頑張って雪だるま作ったからね!みどり』

(良かった!準備、無事に終わったんだ・・・)

そら 「○○ちゃん、そろそろ戻らない?この後、クリスマスパーティもあるし」

主人公「はい!」

(あとはタイミングだよね。いつ、そらさんに言えばいいかな・・・)


ロッジに戻るとリビングはクリスマスパーティの飾りでいっぱいで、テーブルには豪華な料理も並んでいた。

主人公「これ、みんなで?」

みどり「うん!料理は昴さん、飾り付けは小杉部長の指示の元でね」

主人公「ごめんなさい、何もお手伝いできなくて・・・」

黒澤 「良いんですよ~、だって○○さんは広末巡査部長と・・・」

そら 「わ!バカッ、しーっ!」

海司 「まだ班長達戻ってきてないっすから大丈夫ですよ」

そら 「そ・・・そっか。よかった」

そら 「あー、腹へったー!○○ちゃん、たくさん食べようね!」

主人公「はい」

憲太 「○○さん、どうぞ。この唐揚げ、おいしいですよ」

主人公「ありがとうございます」

桂木 「真壁、ビールはあるか?」

憲太 「ビールですか?たしか、このへんに・・・」

海司 「こっちにありますよ。どうぞ、班長」

桂木 「おう、悪いな。海司」

海司 「そういえば、温泉はどうだったんっすか?」

桂木 「素晴らしかったぞ。なあ、石神」

石神 「ええ。趣向を凝らした温泉が多くて、興味深かったですね」

瑞貴 「そういえば、石神さんって、お風呂に入るとき、メガネはかけたままですか?それとも外すんですか?」

そら 「スパイはかけたままだよな~。女の子たちが入ってきた時、すげー慌ててたし」

海司 「え?ふつう外すもんじゃないっすか?」

石神 「それは個人の自由だろう」

瑞貴 「それより、僕としては『女の子たちが入ってきた』ってことのほうが気になってるんですけど」

そら 「ああ、それな。班長とスパイが風呂に入ってたら、女の子たちも偶然入ってきたんだよな」

海司 「げ・・・マジっすか?」

瑞貴 「ふふっ。良かったですね、班長」

桂木 「良いわけないだろう。我々はすぐに出たぞ。なあ、石神」

石神 「当然です」

桂木 「それより、お前達はどうだったんだ?」

石神 「一柳と後藤が、ずいぶん落ち込んでいるようだが・・・」

海司 「ああ、それなんっすけど、二人で競争したんっすよ。『どちらが早く頂上から滑りおりられるか』って」

憲太 「ところが、一緒に黒澤さんも滑っちゃって・・・」

海司 「黒澤が、ぶっちぎりで二人に勝っちまったんだよな」

そら 「うわー。アイツ、意外とやることがエゲつないよなー」

瑞貴 「ふふっ。あえて空気読まないタイプですよね、黒澤さんって」

みどり「○○、ちょっと」

みどりたちに手招きされて、私は部屋の隅に行く。

みどり「雪だるま、裏庭にあるからね。あとは、そらさんを誘導するだけだよ」

小杉 「女装マニアを外に連れ出すためのシナリオも書いたわ。はい、これよ」

主人公「ありがとうございます」

みどり「頑張って!」

小杉 「うまくいくといいわね!」

二人に背中を押されて、私はそらさんのもとに行く。

(まずは、そらさんを誘い出すんだよね。えっと・・・)

(え?『光の君・・・春はあけぼののごとく・・・』って、これ、今度のミュージカルの台本なんじゃ・・・)

そら 「いたいた!○○ちゃん」

主人公「は、はいっ」

そら 「ちょっとさ。外に散歩にいかない?」


そら 「寒いねー」

主人公「はい。東京の寒さとは比べものになりませんね」

(なんだか、なりゆきで外に出てきちゃった・・・)

(このまま、なんとかロッジの裏庭に行くことができれば・・・)

そら 「あ!あそこの裏庭、ライトアップされてるよ。行ってみようよ」

主人公「は、はい・・・っ」

(なんか・・・何もしてないのに、裏庭に辿りついちゃった・・・)

(運がいいというか、何というか・・・)

そら 「ところでさ、○○ちゃん。宝さがししよっか」

主人公「え?」

(まさか、それって・・・)

そら 「プ・レ・ゼ・ン・ト!」

そら 「この裏庭のなにかに隠したんだ。さーて、裏庭のどこに隠して・・・」

そら 「!!」

庭を振り返ったそらさんが、一瞬絶句する。

だって、そこには・・・

主人公「・・・すごいですね。これ、全部雪うさぎですか?」

そら 「う、うん・・・なんか20羽くらいいるけど・・・」

そら 「!!」

主人公「どうしたんですか、そらさん・・・」

(って、うそ!?もしかして、アレが!?)

雪うさぎの群れから少し離れたところにあったもの・・・

それは・・・

そら 「なに、あれ・・・」

主人公「雪だるま・・・だと思います・・・」

そら 「え、そうなの?オレ、てっきり雪で出来た狛犬か何かかと・・・」

主人公「いえ、雪だるまです!・・・たぶん」

(そうだよね?だって、ほかに雪だるまっぽいものなんてないし・・・)

そら 「・・・ハハッ!」

主人公「そらさん?」

そら 「いや・・・だって・・・もしかして、プレゼントはあの中?」

主人公「はい」

そら 「じゃ、早速探そっかな。あ、良かったら、オレのも探してみて?この雪うさぎのうち、どれか一羽の中に入ってるはずだから」

主人公「わかりました」

もったいないなと思いながらも、ずらりと並んだ雪うさぎを一羽ずつ壊していく。

そら 「白状しちゃうとさ、それ作ったの、瑞貴なんだよな」

主人公「え?そうなんですか?」

そら 「うん。最初は『オレが雪うさぎを作るから、瑞貴と海司は○○ちゃんを足止めしてくれ』ってお願いしたんだ」

そら 「でも、二人とも、○○ちゃんはオレと一緒にいたいはずだ・・・って言ってくれてさ」

主人公「・・・実は、私もです」

そら 「え?」

主人公「私がこっそり抜け出して雪だるまを作る、って提案したら、みどりが『それじゃあ、せっかくの慰安旅行なのにそらさんが可愛そうだ』って・・・」

主人公「それで、温泉に行ってる間、小杉先輩とみどりが、かわりに雪だるまを作ってくれたんです」

そら 「そっかぁ・・・そういうことだったんだ・・・」

そらさんは少し笑って、ぽつりと呟く。

そら 「オレ達、そういうとこ、似てるのかもね」

主人公「え?」

そら 「プレゼントを、雪の中に隠そうとするところも・・・いい仲間に、恵まれてるところも」

主人公「たしかに、そうですね」

(みどりや小杉先輩・・・それに、海司や瑞貴さんのおかげで、私達、温泉で二人きりの時間を過ごせたんだよね)

そら 「あとで、瑞貴と海司にお礼言わないとなぁ」

主人公「私もです。もう一回、改めてみどりと小杉先輩にお礼します」

そら 「そうだね」

そら 「・・・おっ。なんか、箱が出てきた」

主人公「私も見つけました!」

雪の中から発見した箱を、二人で持ち寄る。

そら 「うわ、おそろいのグラスだ!」

主人公「はい。食器とか、少しずつペアのものが増えればいいなぁって思って」

そら 「そうだねー。って、これ・・・名前入り?すごいね」

主人公「気に入ってくれましたか?」

そら 「もちろん!ありがとう」

そら 「ね、良かったら、オレからのプレゼントも開けてみて?」

主人公「はい」

細長い箱にはいっていたもの、それは・・・

主人公「腕時計・・・!」

(しかも、チェーンや文字盤が、すごい凝った作りになってる・・・)

そら 「そういうデザインのもの、○○ちゃんに似合いそうだなと思って」

そら 「どう?気に入ってくれた?」

主人公「ありがとうございます。大切にします!」

そら 「良かった!・・・っと」

ふいに、そらさんが私の手をとる。

主人公「・・・そらさん?」

そら 「手、冷たくなってるよね」

そら 「そうだよね。たくさんの雪うさぎに触ってたんだもんね」

主人公「そんな・・・平気ですよ。これくらい」

そら 「でも、すごく冷たい・・・」

そらさんの両手が、私の手を包み込む。

そら 「・・・どう?これで少しはあたたかくなった?」

主人公「はい・・・」

そら 「ホントに?じゃあ、確かめてみよっかな・・・」

主人公「えっ?」

次の瞬間、音を立てるような可愛らしいキスが指先に落ちてくる。

主人公「そらさん・・・っ」

そら 「ハハッ。他には?冷たいところはない?」

(それって、つまり・・・)

主人公「その・・・頬・・・とか・・・」

そら 「唇は?」

主人公「・・・ちょっとだけ・・・・」

今度は頬に、そして唇に・・・優しいキスが落ちてくる。

(なんだか、ホントにあったかい・・・)

大好きな人と、小さな熱を分けあえる幸せを噛みしめて、私は改めて目を閉じた。





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