以下ネタバレです











世界選手権当日。

周りの熱気にウキウキしていると、不意に日本語で呼びかけられた。

振り返るとそこには、俊くんとノエルのお父さんが立っていた。

俊  「ノエルから連絡きたよ。ノエルのお母さんの手術、上手くいったんだってね」

ノエル父「あれにとっては、一番辛い時期だったと思う。手術終了までずっと付き添ってくれたこと、感謝するよ」

主人公「そんな。私なんて、ただ傍にいただけですから・・・」

ノエル父「ただ傍にいるだけの事が、何よりの支えになることもある。あれにとってもそうだろう」

主人公「藍島さん・・・」

俊  「『あれ』だって。なんか父さんカッコつけてるよ」

ノエル父「こら、俊!」

俊  「何か冷静にしゃべろうと努めてるみたいだけど、息子の試合に色んな予定ブッチしてくる時点で色々ダダ漏れだよね」

ノエル父「・・・!!」

主人公「俊くんその辺で・・・」

なだめようとすると、俊くんがそっと耳元で囁いた。

俊  「父さん、普段は絶対顔を出さないんだ。理由は多々あるんだろうけどさ」

主人公「え、でも・・・」

俊  「今回はさすがに色んな事がありすぎたから・・・父さんなりに、心配してたみたい」

主人公「そっか・・・」

ノエル父「俊、そろそろ席に行くぞ」

俊  「それじゃノエルによろしくね」

賑やかな二人・・・正確には賑やかな俊くんと苦虫をかみつぶしたような顔をしていた藍島さんを見送った。


ノエル「やっと来た。遅いよ」

主人公「ごめんね。さっきそこで、お父さんと俊くんに会って」

ノエル「え・・」

主人公「より一層気合が入っちゃうね」

ノエル「バカ、からかうな・・・」

ちょっと照れくさそうに、ノエルが笑う。

家族の話をしても、もうノエルからは、かつてのような違和感は感じない。

(ノエルの中の家族が、ちゃんと動き出したんだね)

主人公「いいことだよ・・・」

ノエル「・・・」

しみじみと呟いてから、はたと気づく。

なんだかノエルが、いつもに増してカタい。

主人公「・・・もしかして緊張してる?」

ノエル・・・」

主人公「こ、答えられないほどヤバい?」

ノエル「そんなわけない。オレを誰だと思ってるんだ」

主人公「うーん・・・」

やっぱりどこか緊張気味なその様子が心配になる。

一世一代の大舞台、ノエルも失敗なんてしたくないだろう。

主人公「そうだ、手の平出して」

主人公「こうして『人』って字を三回書いて、最後に飲み込むの。緊張しなくなるおまじないだよ」

ノエル「飲み込むの・・・?」

主人公「あ、いや!フリだけで良いから!」

思いっきり怪訝そうだったノエルの表情が晴れる。

安心したのか、素直におまじないを実行するノエルが可愛かった。

ノエル「・・・○○」

主人公「うん?」

そっと引き寄せられ、私も身を寄せる。

その拍子に、シャラとチェーンの擦れる音がした。

ノエル「オレ、これつけてくから」

主人公「ペアネックレス・・・私もずっとつけてるよ」

示し合わせたように、ネックレスのトップを小さく合わせる。

勝利祈願なのだと、言葉にしなくとも分かる。

ノエル「オレ、勝から」

主人公「うん、信じてる」

ノエル「ちゃんと、オレだけ見ててよ」


観客の熱狂と、狂おしいほどのエンジン音の響く中、大会が開催される。

良く晴れた空の下、爽快に走り抜けていくマシンに胸が躍った。

主人公「正直、ノエルが負ける気はしないよね・・・」

(家族間にあったしこりが取れて、お母さんの手術も成功して、彼の前途は今までにないくらい綺麗に晴れ渡ってる)

主人公「今のノエルなら、神様にだって祝福される気がするよ・・・!」

天から舞い降りたサーキットのプリンス、その呼び名は伊達じゃない。

今日のノエルの走りに曇りなど一つもなくて、心の底からそう思えた。

(優勝して、目を覚ましたお母さんに会いに行くんだもん!)

主人公「ノエル、勝って・・・!」

ネックレスのトップを握りしめて、強く願う。

ぐるぐると走り続けるマシンの中、実質的に優勝争いをしているのは二つのマシンだった。

先頭を走るノエルと、二番手のイギリスのエドワード選手。

ファイナルラップで、本当に僅差でノエルとエドワード選手が拮抗する。

主人公「お願い、このまま逃げ切って・・・」

エドワード選手のマシンが、ノエルに迫る。

ネックレスを握ったまま、心臓が潰れそうな思いでデッドレースを見守り、そして・・・。

主人公「勝った・・・!」

ドッと歓声が沸いた。

いくつもの賑やかなフラッグと、人々が懸命に振る手の中、ノエルのマシンがウィニングランをする。

主人公「凄い、ノエル本当に勝ったんだ・・・!」

(これで胸を張ってお母さんに会えるよね・・・!)


シャンパンファイトを終え、エドワード選手と健闘を讃え合った後、ノエルがヒーローインタビューに応じる。

記者1「おめでとうございます!藍島さん一言頂けますか?」

記者2「藍島さん、この勝利を真っ先に伝えたい人は誰ですか!?」

ノエル「感謝を伝えたい人は沢山います。応援してくれるファンや、いつも助けけくれるスタッフ達・・・」

ノエル「そして最高の友人と自分を生み育ててくれた大切な家族」

ノエル「最後に恋人にこの感謝を伝えたいです」

いつになく饒舌にインタビューに答えるノエルの表情は淡泊なものではない。

ノエル父「黙々と頑張る姿も、ひtむきな根性も、ノエルは本当に、母親そっくりだな・・・」

主人公「藍島さん・・・」

俊  「照れ屋だよね、父さんって。絶対直接言わないし」

ノエル父「うるさいぞ」

俊  「じゃあね△△さん。うちの兄さんと父さんのこと、本当にありがとう」

主人公「うん・・・!」

(よし、ノエルに会いに行かなくちゃね!)


主人公「ノエル!」

ノエル「○○!」

嬉しそうなノエルに抱きしめられる。

ノエル「オレの事ちゃんと見てた?宣言通り勝ったよ」

主人公「ずっと見てたよ!ノエル凄くカッコ良かった!」

ノエル「じゃあご褒・・・」

主人公「これ、ご褒美ねっ」

ノエルが言いかけた言葉をふさぐように、口づける。

軽いリップノイズの後、いつになく照れたノエルが顔を押さえた。

ノエル「・・・こんなに積極的に来るとは思わなかった」

主人公「ふふっ、私だってやるときはやるでしょ」

ノエル「まあ、オレの方がすごいけどね。・・・ってバカやってる場合じゃないな」

主人公「うん、行こう」

(お母さん、きっと待ってるよね・・・)


ほとんど休憩なしでモナコからアイルランドに戻り、お母さんの病院へ急ぐ。

病室を開けると、そこには目を覚ましたお母さんの姿があった。

ノエル母「ノエル・・・!」

ノエル「母さん・・・」

(良かった、やっと再会できたんだ・・・!)

ノエル「オレ、今まで母さんの病気の事全然知らなくて・・・」

ノエル母「いいの、あの人に教えないように頼んだのは私だもの。心配かけてごめんなさい」

ノエル「母さん・・・」

ノエルの声が涙に滲む。

お母さんの目元にも綺麗なしずくが浮かんでいて、何だか私まで泣けてしまった。

ノエル母「テレビの中継で見てたわ。立派になったわね」

ノエル「半分は、母さんたち家族のための優勝だよ」

ノエル母「まあ凄い。じゃあ、もう半分は?」

主人公「あ・・・は、はじめまして」

ノエルのお母さんが、にっこりと私に微笑む。

ノエル「△△○○。優勝のもう半分をあげたいって思ってる、オレの大事な人」

主人公「うう・・・っ」

ノエル「え、何で泣くの?」

主人公「ごめん、でも感動して・・・すみません・・・お母さんの前で・・・」

(ノエルとお母さんが、また会えて良かった・・・!)

思わずほろほろと涙を零した私の頭をノエルが撫でる。

ノエル母「○○さん」

主人公「はい」

ノエル母「今回の手術で、私はとても良くはなったわ。でもこれも一時的なものになるかもしれない」

ノエル「・・・」

ノエル母「もしかしたら、また具合を悪くするかもしれない。そうなったら、またこの子を支えてやってちょうだいね」

主人公「お母さん・・・」

ノエル母「せっかく良くなってきたんだもの。しぶとく生きるつもりではあるんだけどね」

線の細い外見からは想像できないほどおおらかに、お母さんが笑う。

彼女の力強い微笑みを見て、私はまた少しだけ泣いた。


沢山の出来事が凝縮された数日間の、更に数日経ったある日の事。

いつもの部屋でいつものメンバーによるノエルの優勝祝賀会が行われた。

ノエルのワールドチャンピオン、そしてお母さんの手術の成功。

遼一 「本当めでたいことづくめだな」

皐月 「ふふ、個人的にはもっとおめでたいことがある気もしますけどね」

未来 「あっ、それってもしかして○○ちゃん達の結婚とか!?」

主人公「ええっ!?」

悠月 「何だよ、その反応。実はもう秒読みだったりすんの?」

遼一 「よしお前の母親はオレに任せろ、ノエル」

ノエル「任せないから」

ノエル「っていうか、まあ・・・」

主人公「ノエル?」

そっと、ノエルが私の首元に触れる。ペアネックレスの部分だ。

ノエル「もっと良い『お揃い』を買いに行くのも、良いかもね」

主人公「えっ」

ノエル「・・・そのうちだよ」

ふっと笑ったノエルの言葉に胸が高鳴る。

皆の茶化すような声も、もう殆ど聞こえなかった。

火照った顔を冷まそうと、そっと抜け出してきたプールサイドには俊くんがいた。

俊  「お祝いだからって声をかけてもらって、少しだけ立ち寄ったんです」

主人公「そうだったんだ。中に入る?皆今頃大騒ぎで・・・」

俊  「いえ、いいんです。ちょっと嫉妬しそうなくらい、皆さん仲良いですから」

主人公「ふふ、確かにね」

俊  「ノエル、カッコ良かったですね。レーサーとしても人としても。ちょっと妬けるくらいです」

主人公「俊くんだって負けないくらい良い男になれば良いんじゃない」

俊  「そう、ですね」

俊  「あーあ、早く△△さんより素敵な女性探さなくっちゃ」

主人公「え?」

俊  「冗談ですよ」

ノエル「○○」

俊  「ノエル、レースお疲れ!ワールドチャンピオン格好良かったよ」

ノエル「俊、来てくれてたのか」

俊  「うん。オレも次の選手権ではピットに入れるようにもっと腕を磨いておくからね」

ノエル「ああ、楽しみにしてる」

俊くんが差し出した手を、ノエルがぎゅっと握る。

兄弟のような友人同士のようなやり取りに、思わず胸が熱くなった。

(お父さんとも和解)

(お母さんも元気になってきたし、俊くんとも仲良しで・・・)

主人公「良かったね、ノエル!!!」

ノエル「ちょ、叩きすぎ・・・わっ!?」

ザッパーンと、綺麗に水しぶきが上がる。

プールの中のノエルが、恨めし気に私を見上げていた。

(・・・あ・・・)

皐月 「なんですか、今の凄い音」

悠月 「っておい、ノエル!」

未来 「びしょ濡れ・・・」

主人公「ごめん、嬉しくて勢いがついちゃって・・・私の手に捕まっ」

俊  「えいっ」

主人公「わっ!?」

ザッパーンと二度目の水しぶき。

主人公「な、何するの・・・!?」

俊  「うちの兄さんをよろしくお願いしますって事ですかね」

主人公「!?」

ノエル「だってさ」

ノエル「・・・それじゃ、オレからもヨロシクしておくか」

主人公「えっ」

濡れたおくれ毛をそっと直して、ノエルが私の顔に手を添えた。

皆が見つめる中でノエルは私だけを見つめ、そっとキスをしてくれる。

ノエル「・・・もう一回して良い?」

主人公「できれば二回目は、人の見てないところでお願いします」

私のコメントにみんなが笑う。

少しきょとんとしていたノエルも、すぐに笑ったのだった。


主人公「えらい目に遭っちゃった」

ノエル「確かに。二人してびしょ濡れだもんな」

主人公「早くお風呂入んないとね。ノエル先に・・・クシュンッ!」

ノエル「・・・」

主人公「あ、違うの!これたまたまで・・・ックシュ」

ノエル「風呂、一緒に入るか」

主人公「うう・・・」

ノエル「べつに困ることはないでしょ。普段はもっとすごい事してるし・・・」

主人公「い、言わなくていいから!お風呂入るから!」

ノエル「そう?」

ぐったりと赤面していると、不意に抱きしめられる。

濡れた服と肌のせいか、なんだかいつも以上にピッタリとくっつく。

ノエル「あのさ、○○」

主人公「?」

ノエル「オレ達、この先ずっと一緒にいる約束しようか」

主人公「え・・・」

ノエル「どういう意味か聞きたい?」

主人公「聞きた・・・ん、ぁっ・・・」

答える前に唇を奪われる。

いつもよりずっと深い口づけに、体が熱くなる。

ノエル「じゃあ一緒に風呂入って・・・その後ゆっくり話すよ」

主人公「うん・・・」

ノエル「○○が凄く大切。・・・愛してる」

主人公「私も、だよ」

指を絡めて、濡れた服のまま笑い合う。

触れ合った肌が妙に熱っぽく感じる。

(もしかしたらしばらくこうしていても、風邪はひかないかもしれない)

ノエル「キス、もう一回」

主人公「うん・・・」

口付けのために顔を少し傾けながら、私はそっと目を閉じる。

私達の胸元のネックレスが輝いた気がした・・・。





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ハピエンでした!

いろいろとあったけど・・・

ノエルの素直な言葉ひとつひとつにキュンとしたわ(///∇//)


今度はグドエン回収しにいこっと!