以下ネタバレです









編集作業を進めていた手を止めて一息つく。

肩こりをほぐそうと軽く身をたじろぐと、ペアネックレスがシャラリと揺れた。

(ノエル、自分の中で気持ちの整理ができたのかな)

今朝別れる時の表情を思い出して、少しだけ微笑む。

お母さんの病気や、世界選手権の事、悩みはまだまだあるけど・・・。

(でも乗り越えていかなくちゃね。二人で一緒に)

決意を固めていると風子がやって来た。

締切がヤバかった記事が一段落下から顔を見に来たというけど・・・

ホントは最近私がことある毎に悩んでいたのを知ってて、心配して様子を見に来てくれたのだ。

そんな風子に、ノエルの事で悩んでいた事、根本的な解決には至っていないがもう大丈夫だと話した。

(私やノエルの事を案じてくれる人、本当にたくさんいるんだ。ありがたいことだよね)

私に何かできることが無いか考えを巡らせていたせいで、呼ばれていることに気付くのが遅れてしまう。

ノエル父「△△さん」

主人公「はい・・・えっ!?」

ノエル父「ご無沙汰しているね。藍島ノエルの父です」

あまりに予期せぬ人物の登場に絶句してしまう。

少し話しをしたいと言うノエルの父の登場に編集部の至る所から好奇の視線が注がれているのがわかった。


運ばれきた紅茶を前にしたまま、沈黙が流れる。

ひと目が気にならないように場所を移したは良いけれど・・・

(さっきからずっとこの状態なんだけど)

主人公「あの、藍島さん?」

ノエル父「失礼。何から話すべきか迷ってね」

主人公「ノエル・・・さんの、事ですか?」

ノエル父「君が社長室まで来て、私を一喝して言ったことが昨日の事のように思い出されるな」

主人公「!」

ノエル父「ふふ、そんなあからさまに固まらずとも良いだろう。あの時の威勢はもうないのか」

主人公「あの時は必死で・・・」

ノエル父「だろうね。だからあの時の言葉は、妙に耳に残ったのかもしれない」

少し微笑んで、紅茶に口をつける。

優雅な仕草は俊くんと、淡い微笑みはノエルとダブった気がした。

ノエル父「ハッキリ話そう。今日君に会いに来たのは、うちの息子との今後についてだ」

主人公「!」

ノエル父「君も聞いてはいるだろうが、あれの母親は重い病気を患っている」

主人公「はい・・・」

ノエル父「勿論私は出来うる限りのサポートをしていくつもりだ。母親にも、そしてノエルにも。だけどもしかしたら、思いがけない苦労が、息子との付き合いを続けるうちに起こるかもしれない」

主人公「・・・」

ノエル父「そういう事をすべて踏まえた上で、君が息子との将来をどんなふうに考えているのか教えてほしい」

怖いくらいに真剣な眼差しを受けて、だけど不思議と怯えは無かった。

(ほらノエル。やっぱり貴方のお父さんは、息子を凄く大事にする人だよ・・・)

じゃなかったら、こんな所まで私なんかに会いに来ないに違いない。

そう思うと、何だか泣けそうなくらい嬉しかった。

主人公「私は本当に一般人です。ノエルみたいに特別な才能があるわけじゃないし、藍島さんみたいに沢山の人間をまとめているわけでもありません」

ノエル父「・・・」

主人公「だけど、そんな私にもたった一つ誇れるものがあります。ノエルを思う気持ちです」

ノエル父「・・・肉親である私に向かって、随分と大見得を切るね」

主人公「ナマイキ言ってすみません。でもこれだけは、誰にも負ける気がしないから」

ノエル父「息子の相手が君のような人で、良かった」

主人公「藍島さん・・・」

ノエル父「不器用なところばかり似たせいか、感情表現の得意な子じゃないが・・・あの子をよろしく頼む」

主人公「はい・・・!」



サーキットでノエルの練習風景を見る。

いつも通りの練習が行われている場内を見て、息をついた。

(いつも通りって言うのはすごい事だよね)

(強い精神力がなくちゃできない事だよ)

主人公「そういうノエルを、少しでもサポートしていきたいもんね。私に出来る事、か・・・」

~♪♪♪~

主人公「もしもし?」

未来 『あ、○○ちゃん?未来だよ』

主人公「未来くん!どうしたの?」

未来 『いや・・・○○ちゃんとノエルが元気かなって思って』

主人公「・・・そっか、心配してくれたんだね」

未来 『まあね。あのさ、○○ちゃんって今時間あったりする?』

主人公「あるけど・・・」

未来 『良かった!じゃあちょとだけご足労だけど、VIPルームに来てよ』

主人公「今から?」

未来 『僕も色々考えてたんだよね、ノエルのために出来る事。だって僕達あんなにつるんでるのに、何もできないなんて切ないでしょ』

主人公「未来くん・・・」

未来 『アイディアがあるんだ。○○ちゃんにも聞いてほしい』

主人公「分かった、すぐ行くね」


VIPルームから帰宅してかれこれ何時間もパソコンと睨めっこで調べもの。

しばらくするとノエルがやってくる。

ノエルに未来くんと相談して私達で出来ることをを探して出た結論。

それは、ノエルのお母さんの手術に適した世界の名医と呼ばれる先生を探していることを伝えた。

調べた結果、ルッツ・アンカーというドイツ出身の外科医の権威。

奇跡の手が起こす神技的な外科手術。

きっと世界で一番、ノエルのお母さんを助けてくれる可能性の高い人だ。

主人公「凄く有名な先生だから、待ち患者も多いし、多額のお金がかかるみたいなの。それでも・・・」

言い募ろうとした私を制するように、ノエルがそっと私の手を握る。

ノエル「アンタはオレを喜ばすのが、上手すぎだよ」

主人公「ノエル・・・」

ノエル「ありがとう。その先生に連絡をしてみる、オレの母さんを助けてほしいって」

ノエルが私にそっと口づける。

いつもより明るいその声を聞くだに、少しは役に立てたのだろう。

(小さな事しかできないけど・・・これからもずっと一緒にいるからね)


主人公「それ本当!?」

数日後、ノエルからもたらされた朗報に思わず気が昂ぶってしまう。

主人公「本当に、アンカー先生に執刀してもらえるって?」

ノエル『ああ・・・。未来が○○に話したときには、殆ど話は動いてたのかもな』

主人公「どういうこと?」

ノエル『オレが連絡した時、もう話が通っていた』

主人公「!」

ノエル『本当・・・おせっかいな人たちだよね・・・』

ノエルを案じていた、カジノの皆の姿が目に浮かぶ。

きっと、彼らが働きかけてくれたのだろう。

主人公「でも良かった・・・手術はいつごろになるの?」

ノエル『やっぱり早い方がいいだろうって事で、世界選手権の翌日』

ノエル『かなりギリだけど、取材とか煩わしいものぶっちぎれば、オレも間に合うかもしれない』

主人公「本当に!?」

思わず涙目になる。

お母さんのことが一番だったのは確かだろうけど、やっぱりレースだってノエルの一部だったと思うから。

主人公「本当良かった・・・!」

ノエル『それで、良ければ、○○も一緒に・・・』

主人公「当たり前だよ!頼まれなくたって着いて行くからね」

ノエル『・・・ん』

笑ったようなノエルの声が、穏やかに和む。

全てが良い方向に動き出している、そんな気がした。


世界選手権まであと3日・・・

今日はこれから、数日ぶりにノエルに会いに行ける。

そう思うと心が浮き立つようだ。

(楽観的って言われそうだけど、レースもお母さんの手術も、全部いい結果しか見えないよね)

重なる幸運に気をよくしていると、不意に携帯が鳴る。

ノエルからだった。

主人公「あ、もしもし?今からそっちに行こうと・・・・」

ノエル『ごめん。時間がないから手短に話すけど、今すぐアイルランドに行く』

主人公「は・・・?」

ノエル『母さんの容態が急変したんだ。すぐに発つ』

主人公「えっ・・・!?」

(ノエルのお母さんの容態が、急変・・・!?)






選択肢

・気にしないでよ

・違うよ




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あら・・・

レースどうなるの?

今日は順調だなって思って安心してたんだけど

やっぱそう簡単には試練は終らないか・・・(^▽^;)