以下ネタバレです
からくり人形は、私の方を見たまま静かに止まっている。
(壊れちゃったのかな?それともネジ巻みたいなものが切れたとか?)
ところが安心した瞬間、ゆっくりと人形がこちらに向かってくるのがわかった。
思わず悲鳴を上げたが声が出ない。
拓斗 「バカ!声だすな」
突然背後から拓斗さんが現れ、手で私の口をふさいだ。
拓斗さんはそのまま人形から見えない通路に私を連れ込むと、しー・・・っと指を立てて静かにするように合図した。
二人でそっと人形の様子を覗き込んだ。
拓斗 「ヤバい、○○逃げるぞ!」
主人公「えっ?」
拓斗 「アイツ、追ってくるつもりだし!」
拓斗さんが私の手を掴んで急に走り出した。
主人公「え?追いかけてなんて来ないですってば・・・」
逃げながらふと後ろを振り返ると、段々加速しながら私達の後ろを追いかけてくる、からくり人形の姿が見えた。
主人公「ウ、ウソ!」
拓斗 「アイツの殺気、やべーだろ!」
拓斗 「おい、次あそこを曲がるぞ!カーブでヤツが速度を落としてる隙にまくからな!」
きつい直角の曲がり角を曲がる。
主人公「ウソ!」
からくり人形は転ぶどころか、驚くほどスムーズに直角のカーブを曲がり私達についてくる。
しばらく逃げていると、人形自分の体の中から爆弾のようなものを取りだし、私達めがけてポイ、とそれを投げつけた。
拓斗 「なんで人形が爆弾投げつけてくんだよ!意味わかんねーし」
主人公「キャー!」
拓斗 「危ねー!」
ドカーン!
人形の投げた爆弾の衝撃から、あたりに色々な破片が飛び散る。
主人公「イッタッ・・・」
(でもよかった、思ったより衝撃は小さかったかも・・・)
ホコリの中でふと見ると、拓斗さんが私を庇ってくれているのがわかった。
とっさに私を庇った拓斗さんは、破片を受けて怪我をしてしまったようだった。
主人公「ち、血が出てますよ」
拓斗 「こんくらいへーきだし・・・○○、ケガは?」
本当に心配そうな様子で、ほこりまみれになった私の顔を慌ててぬぐってくれる。
主人公「拓斗さんが庇ってくれたおかげで、私は大丈夫です」
拓斗 「よかった。○○になんかあったら、オレ・・・」
私と同じように、ほこりまみれになった拓斗さんが私をギュッときつく抱きしめてくれた。
主人公「拓斗さん・・・」
(私のことをこんな風に大事に思ってくれてるんだ・・・)
拓斗 「つーか、オレの○○に怪我させようとするとか、あのボロ人形、ぜってー許さねー!粉々のスクラップにしてやる!」
私を自分の後ろに庇いながら、拓斗さんがからくり人形のいる方を睨みつけた。
煙の向こうからゆっくりゆっくりと、目を光らせた人形が近づいてくる。
その時、からくり人形が再び爆弾を投げつける仕草を見せた。
拓斗 「行くぞ!とりあえず逃げながらなんか考える!」
私達は再び埠頭の中を全速力で駆けだした。
主人公「拓斗さん、はぁ・・・私もう走れません・・・」
拓斗 「もうすこし、頑張れ!」
主人公「このままじゃ追いつかれちゃいます!」
拓斗 「大丈夫だ!任せとけ」
拓斗さんが得意げな顔でニッと笑った。
拓斗さんが走りながらポケットから何かカプセルのようなものを取りだし、私達が今通ってきた道に放り投げた。
拓斗 「次の角、右!」
言われた通りに角を曲がると・・・
主人公「行き止まりです!」
ギィギィという音を立てて、からくり人形が近づいてくる音が聞こえる。
拓斗 「・・・」
壁ギリギリまで逃げた後、からくり人形の気配を探る。
拓斗さんは、私を抱きかかえるようにして守ってくれている。
薄暗い闇の中に不気味な音だけが響く。
主人公「きました・・・」
手に小さな爆弾を持ったからくり人形が、私達の方にゆっくりと迫ってくる。
主人公「あれ・・・」
(でも、なんか様子がおかしいような・・・)
だんだんと速度を遅くしたからくり人形の動きは、少し離れたところでピタッと止まってしまった。
すると、お腹の中から黒い玉のようなものが1つコロコロと転がり出てきた。
拓斗 「爆弾かも・・・」
衝撃に備えて、拓斗さんが私をギュッと抱きしめた。
プシュ~
ボンッ!
体から焦げ付いたような煙を吐き出したからくり人形は、自分が手に持っていた小さな爆弾で自爆してしまった。
拓斗 「あぶねー・・・助かったな。これでもー動くことはねーし、後の処理はオッサンたちに頼んで黒狐に戻るぞ」
拓斗 「疲れた・・・」
主人公「はい・・・」
拓斗さんが通信機でマスターたちに連絡をしている間、私は壊れてしまったからくり人形をそっと眺めた。
主人公「あれ・・・」
ふと足元に、最後に人形のお腹から出てきた黒い玉を見つけた。
よく見ると封印の「封」という文字の書かれたシールが張られていた。
(なんだろこれ・・・?)
振ってみたけど、特に爆発しそうな気配はないように感じた。
(ここに置いて行ったら無くなっちゃいそうだし、一応持って帰った方がいいのかな・・・)
主人公「あとで拓斗さんに見せればいいよね」
拓斗 「おい、そろそろ帰るぞ」
主人公「今、行きます!」
拓斗さんの運転する車で、黒狐へと戻った。
黒狐に戻ると、みんなが心配して待っていてくれた。
私がシャワーを浴びて戻ると、拓斗さんがみんなに今日の報告をしていた。
主人公「拓斗さん、そういえばさっき、あのからくり人形に何をしたんですか?」
拓斗 「ん、オッサンが作った試作品持ってった」
ボス 「ああ、これか」
主人公「薬のカプセルが大きくなったみたいな感じですけど・・・・」
ボス 「中には炭酸ガスと、特殊な接着成分が入ってるんだ。ほんとは建物から脱出するときとかに、木や植え込みに投げつけて使うんだけどね」
流輝 「カプセルが割れると、ガスの噴射が接着剤を吹き飛ばして弾力性があるネットができる」
拓斗 「これをあのボロ人形の通り道に仕掛けて、アイツの関節に絡めて身動きをとれなくしてやった」
主人公「すごい・・・とっさの判断でそんなこと思いつくなんて・・・」
(あ、そういえばコレ、忘れてた)
主人公「あの、これさっきからくり人形のお腹から出てきたんです」
黒い玉を見せた。
ボス 「へー見せてもらってもいいかな?」
健至 「なんだ、中になんか入ってんのか?」
ボス 「うーん、よくわからないけど、後で知り合いに頼んでX線にかけてもらうよ」
主人公「お願いします」
主人公「でも、博物館に展示しようとしていたものが、あんな危険な人形だったなんて・・・壊れてしまったのは残念ですけど、これで良かったのかもしれませんね」
拓斗 「からくり人形の分際で調子に乗りやがって。現代科学の勝ちだし」
拓斗さんは得意気な顔をしていた。
宙 「それにしても、今日は良い言葉聞かせてもらっちゃったな~♪」
流輝 「ああ、明日は雨かもしれないぞ」
主人公「何のことですか?」
宙 「オレの○○に怪我させるとか、あのボロ人形、スクラップにしてやる~!だっけ?」
健至 「○○になにかあったらオレ・・・!とかな」
流輝 「そのセリフ、前にも聞いたような気がするがな」
皆がニヤニヤと笑いながら拓斗さんを茶化している。
宙 「大好きな○○ちゃんをバッチリ守っちゃうなんて、たっくん今日はまるでヒーローみたいだったね♪」
主人公「ちょっと!マスター、なんでみんなが知ってるんですか?」
ボス 「たっくん通信機のスイッチ入れっぱなしで頑張ってたみたいだからねー」
主人公「それじゃ私の会話全部聞こえてたとか・・・」
拓斗 「!」
私達二人とも、顔が真っ赤になっていた。
ゴロゴロゴロ・・・
その時、私が持ち帰って来た黒い玉が突然動きだす。
流輝 「伏せろ!爆発するぞ!」
拓斗 「○○!こっち来い!」
拓斗さんにすっぽりと抱きかかえられるようにして息をひそめていたが、いつまでたっても爆発はしなかった。
宙くんが玉を突いてみると、玉が半分に割れ、中から小さくて可愛いからくり人形が出てきた。
そのからくり人形は小さな紙をもっていて、柳瀬さんがそれを取り上げ読んでみる。
流輝 「おい、この△△っていう名前。お前のひいじいさんのことじゃないのか?」
主人公「え・・・。あ、そうです!それにこの字は私のひいおじいちゃんの書き方です!」
流輝 「どうやらこれは、おまえのひいじいさんが作った発明品らしいな」
拓斗 「つーか、江戸時代の珍しいからくりとかじゃねーのかよ」
流輝 「あのでかいからくり人形は昔のからくりそのままらしいが、中身をだいぶ改造してあるみたいだな」
宙 「あの大きい子、この小っちゃい子を守ってたんだね」
主人公「うん。もしかしたらそうなのかも・・・」
(あの人形は、おじいちゃんの発明品を守ってくれていたのか・・・)
流輝 「マフィアが持ち出したときに、おそらく何かの衝撃でセキュリティのための仕掛けが動き出したんだろ」
ボス 「事故の様子をテレビで見たんだけどさ、江戸時代のものにしては動作が近代的で、おかしいと思ったんだよね・・・」
健至 「あいかわらず、△△のひいじいさんはぶっ飛んでるな」
流輝 「おまえのひいじいさんがほんとに後世に残そうとしてたのは、外の人形じゃなくて、この小さなからくりだったみたいだな」
ボス 「改造からくり人形が美術館にあるなんてあまりにも補修が精巧過ぎてプロの鑑定家も気が付かなかったってことか・・・こりゃ思わぬお宝に出会たね!」
テーブルの上で、ちいさなからくりがカタコトと音を立てて楽しそうに動いていた。
主人公「でも爆発してしまった大きなからくり人形のことを考えたら、なんとなく可愛そうですね」
拓斗 「つーか、いくらひいじいさんの発明でも、おまえに怪我させるとかオレはゆるさねー」
宙 「そうだよね、今だってとっさに○○ちゃんのことを抱きしめるくらい、○○ちゃんのことが大事なんだもんね?」
拓斗 「!」
(うわ・・・今の発言で拓斗さんの機嫌が悪くなりそう)
ところが拓斗さんは顔を真っ赤にしただけで、特に怒る様子はなかった。
拓斗 「疲れたから寝る・・・」
宙 「あれ、たっくんなんか元気ないね」
ボス 「今日は必死に頑張ってくれたから、だいぶ疲れてそうだな」
主人公「ちょっと様子を見てきますね」
マスターたちにお礼を言った後、私も二階に上がった。
様子を見に行くと、拓斗さんは一人で怪我の手当てをしていた。
湿布が上手く貼れないようで四苦八苦している。
主人公「湿布貼るんだったら言ってくれればいいのに。私がやりますね」
拓斗 「・・ん」
主人公「今日は私の為に、ありがとうございました。まさか、ひいおじいちゃんの発明品だとは知らなくて・・・」
拓斗 「○○が謝ることじゃねーし。・・・オレも悪かった」
主人公「え?」
拓斗 「ひいじいさんのお宝、結果的にぶっ壊すことになって・・・もっと綿密に情報を集めてから動けばよかったし・・・」
拓斗さんの言葉に胸が苦しくなる。
主人公「そんなことないですよ。どんなことより人の命が優先ですから。こんな風に社会に迷惑をかけるようなことになったら残念ですけど壊されても仕方ないと思うんです」
拓斗 「・・・」
主人公「それに嬉しかったです。拓斗さんが私を守ってくれて・・・。ありがとうございます」
主人公「はい、手当て終わりましたよ」
主人公「拓斗さんにこんな怪我をさせてしまって、私の方こそすみません」
拓斗 「・・・」
(あっ・・・)
手当の道具を片付けようとすると、ふいに拓斗さんに腕を掴まれ、そっと抱きかかえられてしまった。
主人公「拓斗さん・・・?」
拓斗 「つーか、○○が謝んなって、さっきから言ってるし」
拓斗 「何度も言うけど。おまえになんかあったら、オレは・・・生きてけねーし・・・」
拓斗 「おまえに何もなければ、それでいいんだよ。オレは○○が一番大事」
力強い声で拓斗さんが言う。
ふと顔を上げると拓斗さんの顔がゆっくりと近づいてきた。
主人公「ん・・・」
お互いの存在を確かめるようにキスを交わす。
拓斗 「あのボロも、今日の俺みたいにチビを必死に守ってたのかもな」
主人公「えっ・・・」
拓斗 「あいつの分も、オレが○○を守ってやんねーと」
拓斗 「つーか、おまえのことはオレが必ず守る」
再び寄り添うと、今度はさっきよりも長く、何度も何度もキスを重ねた。
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