以下ネタバレです





(どうしよう・・・)

健至 「こうなるとは思ってなかったから、緊急用の発信機も置いてきちまった・・・」

主人公「そっか・・・」

健至 「ごめんな、○○・・・オレがちゃんとしっかりしてれば・・・」

  う~ん、まぁね・・・ 沖に行きすぎちゃったかなぁ~

  ちょっとはしゃぎすぎちゃったから・・・お互い様ってとこ?

主人公「そんなことないよ。私ももっと早く気付けば良かったんだし・・・」

健至 「○○・・・」

しょんぼりと項垂れる健至の手を思い切り握り目を合わせた。

主人公「考えよう!」

健至 「え?」

主人公「そんな事、今さら後悔したって仕方がないじゃない。それより、これからどうするかを二人で考えようよ!」

健至 「○○・・・」

(健至にばっかり頼ってちゃダメだ。私も・・・一緒に頑張らなくっちゃ!)

健至 「・・・ありがとう」

主人公「え?」

健至 「そうだな。考えよう、二人で」

主人公「うん!」

健至 「さて、どうするか・・・」

主人公「漕ぐのはどう?」

健至 「漕ぐって、一体何で?オールなんてないけど・・・」

主人公「ええと・・・腕、とか?」

健至 「さすがにオレの腕でもジェットスキーは動かせないな・・・」

主人公「だよね・・・」

主人公「じゃあ、大声で助けを呼ぶとか!なんて、これも無理か・・・」

(うう、役に立てない・・・)

健至 「いや・・・いけるよ」

主人公「え?」

健至 「大声は無理だけど。助けを呼ぶ方法ならいくらでもある」

健至 「そうだ!泳いでオレが助けを呼んでくるよ。泳ぐのが一番確実な方法だし」

主人公「えっ、健至一人で?」

健至 「ああ。水泳は得意だしな」

(それじゃあ・・・一人でここで待ってなきゃいけないってこと?)

  ムリ~!! ・°・(ノД`)・°・ 一人にしないでー!!

広い海に一人取り残される自分を想像して、少し背筋が震えた。

主人公「あの、できれば私も一緒に・・・」

健至 「え?でも大丈夫か?1キロくらいありそうだけど」

  あー、それもムリ・・・(T▽T;)

主人公「そ、それは・・・」

健至 「オレは全然平気だけど、○○には過酷だよな。でも、オレも○○を一人にするのは心配だし・・・」

健至 「そうだな・・・じゃあ、オレが背負ってくから乗れよ」

主人公「そんな!無茶だよ」

健至 「大丈夫だって。オレを信じろ。な?」

主人公「健至・・・」

健至 「『二人で一緒に』、だろ?」

(二人で・・・)

主人公「・・・わかった。健至、お願いします」

健至 「了解」

主人公「でも、疲れたら降ろしてね。私、救命胴衣着てるから」

健至 「ああ。その時は、○○に引っ張ってもらうよ」

主人公「わ、わかった・・・頑張る」

健至 「はははっ!冗談だよ」

健至が海に飛び込む。

健至 「さ、○○。おいで?」

  この『おいで?』言われたらキュンと来ちゃう(〃∇〃)

主人公「よ、よーし・・・」

ざぶん!

健至の背に乗り込んだ。

健至 「それじゃあ、行くぞ!」

主人公「うん!」

(どうか無事に帰れますように・・・)


しばらく泳いだが、全く疲れを見せず、私を背負いながらすいすいと健至は泳いでいた。

(さすが健至・・・)

私も、少しでも協力すべく、バタ足を繰り返している。

(足だけでもこんなに疲れるのに・・・現役の消防士ってすごい)

健至 「大丈夫か?」

主人公「う、うん・・・」

健至 「無理しなくていいよ。疲れるだろ?」

主人公「でも・・・」

健至 「『二人で一緒に』ってことは、互いのマイナスを補い合うってことだ。今は、オレが補う方。だから○○は休んでて」

主人公「・・・ありがとう」

健至の言葉通り、バタ足を止める。

健至 「よし」

健至ってば・・・本当に優しいんだから)

ぎゅう、としがみつく腕の力を強めた。

健至 「こんなことになってごめんな・・・」

主人公「え?」

健至 「オレさ・・・漫画のヒーローみたく、○○を助けるのに憧れてた。ていうか、その理想を一方的に押し付けてたんだな。オレ一人でなんとかすればいいって思ってて・・・結局は、迷惑かけちまって」

  その気持ちがうれしいよ?

主人公「そんなこと・・・」

健至 「でも、おまえが一緒に考えようって言ってくれてすげー嬉しかった。一気に目が覚めたよ。そうだよな、オレ達付き合ってるんだもんな・・・って。○○は、オレに足りない部分を気付かせてくれた。今度は、オレが返す番だ」

そう言って、泳ぐスピードをあげる。

主人公「健至・・・」

健至の肩に顔を埋めた。

主人公「私も・・・私だって、健至を守りたいんだからね」

(やっとわかった。さっきの違和感の正体が。助けられるだけじゃない。私も・・・健至の役に立ちたかったんだ)

健至 「え、なにか言った?」

主人公「なんでもないー!」

健至 「わっ!」

バチャン!

バタ足を再開する。

健至 「ちょっ・・・○○、いいって!」

主人公「いいの!私も一緒に泳ぎたいの!」

健至 「・・・ったく、しょうがねぇなぁ」

二人で笑いあいながら、泳ぎ進めていくと・・・

主人公「・・・あ!健至、あれ!」

健至 「ああ!浜辺が見えてきた!」

主人公「受付も見えるよ!あともう少し!」

健至 「よしっ!」

(やった・・・これで帰れる!)

その時。

ドン!

(えっ・・・!?)

主人公「きゃあっ!」

健至 「っ・・・!」

衝撃と共に降ってきたのは、大量の海水だった。

(なにこれ・・・高波!? ・・・のまれるっ!)

健至 「○○ッ!!」

主人公「けんっ・・・」

(・・・健至!!)

波に押し流され、健至から離れてしまった。

水が、口の中へ押し寄せてくる。

主人公「・・・っ!はぁっはぁっ」

(苦しい・・・健至、どこ・・・!?)

救命胴衣を着てるとはいえ、このままでは溺れてしまう。

そう思った時。

健至 「大丈夫か!?」

主人公「・・・けん、し?」

健至 「ケガはないか?」

主人公「う、うん・・・」

健至 「良かった・・・心臓が止まるかと思った・・・」

主人公「健至・・・」

(また、助けてもらっちゃった・・・)

健至 「っ・・・!」

主人公「どうしたの?・・・あっ、血が!」

健至 「○○が離れた時、慌てちゃって岩にぶつけて切ったんだな。でもかすり傷だし、たいしたことねーよ」

主人公「でも・・・」

健至 「こんなの、舐めとけばすぐ治るって」

主人公「ちょっと見せて」

思ったよりも血が出ている。私は腰に巻いていたパレオを傷口に巻いた。

健至 「だ、大丈夫だよ。水着が汚れちまうぞ」

主人公「そんなの大丈夫。私も、なにか健至の役に立ちたくて・・・」

健至 「そ、そうか・・・」

主人公「私の為に・・・ごめん」

健至 「何言ってんだよ・・・オレがあんな沖に行ったのがいけなかったんだろ」

主人公「ううん・・・」

健至 「○○・・・」

まだ赤い顔を、互いにゆっくりと近づける。

主人公「傷・・・痛む?」

健至 「へーき。それに、オレは困ってる○○を助ける役だって言ったろ?」

主人公「健至・・・」

健至 「でも、今日は○○に助けてもらったな。ありがとう・・・」

主人公「・・・ん」

そして、二人でキスを交わした。

海でのキスは、少ししょっぱかった。

主人公「・・・海の味がするね」

健至 「イヤ?」

主人公「ううん」

健至 「じゃあもう一回・・・」

再び顔を近づける。

  っと、その前に早く浜辺に行こうよ~!!

  安心できないよー!!!

宙  「ちょいとそこのお2人さん」

主人公「きゃあっ!」

健至 「わっ!」

主人公「更科くんに、蛭川さん!?」

健至 「お前ら、なんでここに!?」

宙  「それはこっちの台詞。アッチッチなのはいいけど、こんなところで何やってんの?」

拓斗 「人前で何やってんだよ」

主人公「えっ、こんなとこって・・・」

慌てて周りを見回すと、もう十分浅瀬に来ていたらしい。

主人公「いつの間に・・・」

拓斗 「ったく。どこにもいねーから探してたのに。仕事サボっていちゃつくとかありえねーんだけど」

宙  「ホントだよ!代わりにリーダーがバナナボート引っ張ってるのに」

主人公「え?」

見渡すと、柳瀬さんがジェットスキーを運転していた。

・・・すごい仏頂面で。

  怖いもの見たさで、ちょっと見たいかも ( ´艸`)

健至 「ち、違うんだ。オレ達ちょっと沖に取り残されちまって、泳いで帰ろうと思ったら波が来て・・・」

宙  「でもそれだって、デートしてたんでしょ?」

健至 「う・・・」

宙  「言い訳は聞きません!みんなが真面目に頑張ってるのに、イチャラブしちゃう不真面目な二人は、今日の夜の花火禁止!」

主人公「ええっ?」

宙  「文句言わない!さ、さっさと帰るよ!」

健至 「・・・わかったよ」

主人公「あっ、あのジェットスキーどうしよう」

拓斗 「ジェットスキー?」

主人公「海に置いてきちゃったの。ガソリンが切れて、動かなくなっちゃって・・・」

拓斗 「マジめんどい・・・」

健至 「わりぃ・・・拓斗頼んだ」

  たっくん、ジェットスキー乗れるの?

  すっごい意外なんだけど・・・

拓斗 「ジャージャー麺3杯分」

主人公「良かったね」

  ジャージャー麺が?( ´艸`)

健至 「だな」

  健至のことか・・・ってあたりまえだよね・・・σ(^_^;)

宙  「ハイそこ!ラブラブ禁止!」

こうして無事に帰ることが出来た。

仕事を再開し、その後は何事もなく一日が過ぎていった。


営業終了後。

ブラックフォックスのメンバーは花火に興じている。

私達は宙くんから『花火禁止令』を出されてしまったため、それを遠巻きに見ていた。

主人公「・・・楽しそうだね」

健至 「ああ」

主人公「花火は残念だけど、今日はすごく楽しかったよ!いつもとは違う健至の姿が見れたし」

健至 「いつもと違う姿って?」

主人公「ええと・・・ジェットスキーを楽しそうに運転してたり、沖に流されちゃってしょんぼりしたり」

健至 「しょんぼりって、お前なぁ」

主人公「だって本当のことだもん」

健至 「まぁ、あの時は本気で落ち込んでたし」

主人公「あとは・・・私の水着姿に照れたりしたとこ、とか?」

健至 「あれは・・・」

主人公「あー可愛かったなぁ、あの時の健至。健至も普通の男に人だってことがよく分かって、なんか嬉しかった」

健至 「ったく、からかうなよ」

健至に優しく肩を抱き寄せられる。

主人公「健至?」

健至 「・・・そんなの当たり前だろ?○○のこと、真剣に好きなんだから」

主人公「あ・・・」

その力強い視線と言葉に、顔が赤くなる。

健至 「形勢逆転、だな」

主人公「もう・・・ズルい」

健至 「ははっ。今日一日ずっと○○に振り回されっぱなしだったんだからさ。いいじゃん」

主人公「私、振り回してなんかいないよ?」

健至 「ナンパされたり、溺れかけたり・・・」

主人公「あ、あれは・・・」

(何も言い返せない・・・)

健至 「あ、そうだ。これ」

主人公「え?」

健至が取り出したのは、線香花火だった。

健至 「宙に花火禁止って言われてから、急いで買いに行ったから、これしかなかったけど・・・。宙にはナイショな?」

  すぐバレるぞ~!!( ´艸`)

主人公「健至・・・」

その心遣いに、嬉しくなる。

健至 「今日はいろいろ迷惑かけちまったからさ。線香花火しかなかったんだけど、二人でやろうぜ」

主人公「うん」

火をつけると、ぱちぱちっ、と小さな音がし、線香花火は燃え始めた。

主人公「綺麗・・・」

健至 「こういうのも悪くないな」

浜辺では、メンバーのみんなが楽しそうにはしゃいでいる。

  えっ?たっくんも?

  たっくんのはしゃぐ姿、想像できないからちょっと見てみたいんだけどなぁ・・・

主人公「そういえば、去年も花火はやったの?」

健至 「まぁな。今年はどんな大物が出てくるのか・・・」

主人公「え、大物?」

健至 「後でわかるよ」

健至 「また来年も海に来ような」

主人公「うん。来年も手伝うよ」

健至 「そうじゃなくて・・・」

主人公「え?」

ぱちっ

線香花火が一段と大きく燃える。

健至 「・・・今度は、二人で」

  はいっ!

主人公「ああっ!」

線香花火が、消えてしまった。

主人公「あーあ、消えちゃった」

健至 「オレのもだ。同時に消えたな」

宙  「あー禁止だって言ったのに!花火してる!」

健至 「やべっ、見つかった」

宙  「もう、仕方ないなー。ホラ、こっちおいでよ」

主人公「いいの?」

宙  「うん。その代り、今度はちゃんと仕事するんだよ?」

健至 「分かってる。行こう、○○」

主人公「うん」

皆の輪に入る。

拓斗 「あ、不真面目二人組」

  その節は・・・ご迷惑をお掛けしました(^▽^;)

集  「待ちくたびれたよ~。やっと許してもらえたんだね!」

流輝 「今年の目玉に間に合ったな」

  あっ、流輝は怒ってないの?怒られるの覚悟してたんだけど?

主人公「目玉?」

(さっき言ってた大物のことかな)

宙  「さーてお待ちかね。今年の花火大会のラストを飾るのは・・・ジャジャーン!『超・特大!へび花火』でーす!」

健至 「超・特大のへび花火って・・・」

宙  「はい、点火ー!」

健至 「やめろ、それだけはやめろ!」

火のついたへび花火が燃え上がる。

オレンジ色の炎の中から、ゆっくりと巨大な黒い塊がうねうねと動き出した。

(き・・・気持ち悪い!)

集  「あっはっはー!なにこれ最高ー!」

健至 「うげ・・・」

主人公「私もダメだ・・・」

宙  「あれ、お気に召さなかった?じゃあ、こっちのがいいかな」

と、出てきたのは、ごくごく普通の打ち上げ花火。

健至 「普通のもあるじゃねーか」

宙  「えーだってー。へび花火の方が面白いしー。じゃあ、これでホントに終わりね」

点火する。

ひゅるるるるるる・・・・

ドーン!

宙  「もういっちょ!」

ドドーン!

主人公「うわぁ・・・」

健至 「たーまやー、だな」

主人公「うん」

みんなに気付かれないように、そっと寄り添い合う。

健至 「・・・なぁ」

主人公「うん?」

健至 「今年もいろいろあったけど、○○とこうして思い出を作れたから良かったよ。さっきも言ったけど・・・また来年も来ような」

主人公「うん・・・今度は二人で一緒に、ね」

健至 「え?」

ドーン!

健至の顔が花火色に染まる。

健至 「なんだ。さっきの聞いてたのか」

主人公「ふふっ」

健至 「コイツ」

色とりどりの花火の中、見つめ合い、優しくキスをした。

宙  「ハイそこ!ラブラブ禁止って言ったでしょ!?」

主人公「えっ、だって許してくれたんじゃ・・・」

宙  「それは花火の件だけ。二人にはもっと反省してもらって・・・」

  はいはいっ、そこ、ヤキモチ妬かないの!! ( ´艸`)

健至 「イヤだ。宙の言うことなんて聞くかよ」

主人公「わっ・・・!」

ぐいっ

健至 「○○、逃げるぞ!」

主人公「ええっ!ちょっ・・・!」

宙  「あっ、待て!」

手を握り、駆け出す。

夜空には、キラキラと花火が瞬いていた。





*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;: