以下ネタバレです
薄暗い闇の中・・・達郎の強い視線が私に注がれているのを感じる。
達郎 「・・・答えろ。ブラックフォックスだろう?」
(そんなこと言われても・・・)
達郎 「ち・・・っ。暗くて見えないな・・・」
達郎は携帯電話を拾い上げると、ぱちんと開く。
(バックライトで顔を確かめるつもりだ・・・)
咄嗟に顔を隠そうとした、その時!
達郎の手から携帯電話が落ちた。
どうやら、手を怪我しているらしい。
私は思わず達郎の手を摑まえ、確認すると、ざっくりと切れている。
達郎 「何をする気だ!離せ・・・っ」
(違う!危害を加えたいんじゃなくて・・・)
私は、とっさにバンダナを外すと、達郎に差し出した。
深く俯いて、顔だけはかろうじて見られないようにして・・・
達郎 「お前・・・」
(おねがい・・・伝わって・・・)
達郎 「まさか、それで傷口を縛れっていうのか?」
(そうだよ。だから・・・)
達郎 「・・・いらない。犯罪者の施しは受けない」
達郎は、ポケットからハンカチらしきものを取りだすと、それで縛ろうとする。
でも・・・
(無理だよ。そんな片手で傷口を縛るなんて・・・)
(しかも、ケガしてるの、利き手の方なのに・・・)
私は近づくと、達郎の手を摑まえる。
達郎 「やめろ!離せっ」
主人公「・・・」
達郎 「離せって言ってるだろう!」
それでもハンカチの裾を捕まえて、ぎゅっと強く結び目を作る。
達郎 「これで、貸でも作ったつもりか?」」
主人公「・・・」
達郎 「おい!」
とっさにうずくまって、顔を隠す。
達郎 「・・・なんなんだよ」
頭上から降ってきた、小さなため息。
そして・・・
達郎 「このバンダナ・・・お前のだろう。だったら、さっさと顔を隠せ。そして、ここからいなくなれ」
主人公「!」
達郎 「これで貸し借りゼロだ。次はない。次に会った時は、絶対に捕まえる」
主人公「・・・」
達郎 「早くしろ!」
私は俯いたまま手を伸ばすとバンダナで再び顔を隠す。
でも・・・
達郎 「早く行け」
主人公「・・・」
達郎 「行けって言ってるだろう!」
足をひねっている私は動けずにいた。
達郎 「・・・・お前、まさか・・・怪我してるのか?」
主人く「・・・」
達郎 「見せてみろ!」
主人公「・・・っ」
達郎 「熱を持ってる・・・落ちた時、捻ったのか?」
こくん、と頷く。
達郎 「くそ・・・っ」
達郎はため息をつくと、私に背中を向けてしゃがみこんだ。
達郎 「・・・乗れよ」
主人公「・・・」
達郎 「いいから乗れ!」
(・・・本当に、本当にいいの?)
おそるおそる手を伸ばすと、ひょいっと私を持ち上げた。
革靴を履いてるせいか、何度もなんども足元が滑る。
それでも達郎は、少しずつ少しずつ斜面を登っていく。
達郎 「アンタ・・なんでこんなことをしてるんだ?」
達郎 「どんなきれいごとを並べても、アンタたちのやってることは犯罪だ。それなのに、どうして・・・」
答える代わりに、私は緩く首を振る。
達郎 「・・・アンタの家族は?このことを知ってるのか?」
主人公「!」
達郎 「友達は?恋人は?アンタがブラックフォックスだってこと・・・知ってるのか?」
主人公「・・・」
達郎 「もし知らせてないなら、今すぐやめろ」
達郎 「アンタの悪事がバレたとき、一番傷つくのはアンタを信じていた人たちだ」
主人公「・・・」
達郎 「そういう人たちを、オレはたくさん見てきた。みんな、『うそだ』 『そんなはずはない』って泣くんだ・・・」
主人公「・・・」
主人公「だから、もうやめろ。そういう人たちを、傷つけるなよ」
(達郎・・・)
答えることが出来なくて、達郎のシャツにぎゅっとしがみつく。
(傷つけたくなんかないよ・・・蘭子のことも、達郎のことも・・・傷つけたくないよ)
斜面を登りきった頃、空が白み始めていた。
達郎は好きにしろと言って踵を返して去っていこうとする。
私はとっさに達郎の手を摑まえて、文字を書いた。
(ありがとう)
達郎 「・・・礼なんていらない。次はない。今度は絶対に捕まえる。アンタたちの仲間ごと・・・全員捕まえる・・・」
(達郎・・・)
達郎 「それが嫌なら、もう犯罪はやめろ」
去っていく背中を見ていられなくて、私は深く俯く。
(泣きたい・・・でも、泣いちゃダメだ・・・私は、もうブラックフォックスの仲間なんだ・・・)
その後、私は迎えに来てくれたマスターに拾われて、黒狐へと戻り、稲垣さんに朝一で病院に連れて行ってもらった。
診断の結果、ねん挫で、全治1週間。
腫れも引いてきたので、後は稲垣さんにテーピングを巻いてもらって誤魔化すことに・・・
プルル・・・
メール着信。
携帯をチェックすると、蘭子から20件も入っていた。
黒狐に帰って、昨夜の無断外泊の件の相談。
バイト中に気分が悪くなって、そのまま黒狐に泊まったってことにする。
蛭川さんは『シルバードッグ』について調査中。
『シルバードッグ』とは、金になるそうな美術品を、片っ端から盗んでは闇市で売りさばいていて、国際指名手配犯。
最近ブラックフォックスの邪魔をしようとしているらしい。
昨夜のミッションも柳瀬さんが逃走中何者かに邪魔をされたという。
健至 「アレは、久々にヤバかったよなぁ」
(私はともかく、柳瀬さんや稲垣さんはいつも余裕でミッションに取り組んでるんだと思ってた)
(それが「久々にヤバかった」って・・・)
(窃盗団「シルバードッグ」・・・どんな人たちなんだろう)
その日の夜
蘭子の家に戻ると、蘭子が体当たりするように、抱きついてきた。
蘭子 「○○のバカ!電話くらいしてよ!心配したんだから!」
主人公「ご、ごめん・・・」
蘭子 「具合は?もう平気?」
主人公「うん・・・」
蘭子 「良かった・・・」
蘭子 「これで、○○もまだ具合悪い様だったら、どうしようかと思った・・・」
主人公「・・・私も?」
蘭子 「お兄ちゃんね。今朝がた、ボロボロになって帰ってきたんだ・・・なんか、捜査中にケガしたみたいで・・・」
蘭子 「手の平は血まみれだし、足もケガしてたみたいで・・・」
(えっ!?足も!?)
蘭子と二人で達郎の部屋のドアを開ける。
達郎 「・・・誰?蘭子?」
蘭子 「そうだけど・・・○○もいるよ」
達郎 「え?」
主人公「ただいま・・・達郎・・・」
達郎 「おかえり・・・。昨日、あの居酒屋に泊まったんだって?」
主人公「うん・・・。ごめんね。ちゃんと連絡しないで」
達朗「いいって。具合悪かったんだろ」
主人公「・・・うん」
(優しい声・・・いつもの達郎だ・・・)
主人公「足、怪我したんだって?・・・大丈夫?」
達朗 「平気。ちょっとドジふんじまってさ」
蘭子 「捜査中に足を滑らせて、坂から転げ落ちたんだって」
(え・・・っ?)
蘭子 「ホント、お兄ちゃんってば、おっちょこちょいだよね。どうせなら『ブラックフォックスと格闘した』とかなら良かったのに。そしたら、すぐうちの新聞に記事を載せてあげたのにさ」
達朗 「おまえ・・・自分の兄貴を何だと思ってるんだ・・・」
(どうして、ブラックフォックスのせいだって言わないの?)
(捜査上の守秘義務だから?それとも・・・)
♪ピンポーン
チャイムが鳴り、蘭子が見に部屋から出て行った。
達郎と二人きり。
足のどこを怪我したのか見せてほしいと、思わず伸ばしかけた手を、鋭く払われる。
(達郎・・・)
達郎 「あ・・・その・・・」
主人公「ごめん・・・」
達郎 「いや、違うんだ・・・」
主人公「ごめんなさい・・・」
達郎 「だから、そうじゃなくて・・・」
達郎が、うろたえたように目をそらす。
達郎 「頼むから、そんな顔するなよ・・・・そんな泣きそうな顔される・・・我慢できなくなるだろ・・・」
(え・・・)
達郎 「うわ・・・・なに言ってんだろう、オレ・・・」
達郎 「ごめん!こんなときに・・・」
主人公「・・・」
達郎 「でも、その・・・ホントに大丈夫だから・・・だから、そんな顔しないでくれよ・・・頼むから・・・」
俯いてしまった達郎の耳が、ほんのり赤く染まっている。
主人公「達郎・・・」
(なんで、そんなこと言うの)
(達郎のこと・・・今はもう「ただの幼馴染だ」って思いたいのに・・・)
(達郎にそんなふうに言われたら、私・・・)
バタバタバタバタ・・・
バタン!
黒岩 「せんぱーーーい!」
達郎 「黒岩?どうして・・・」
蘭子 「・・・お見舞いだって」
黒岩 「えへへっ。来ちゃいました」
達郎&主人公「・・・」
突然の来訪者に、達郎が「マジかよ」と呟いた。
選択肢
・手助けをした
・ありがとう
*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:
ちょっとー、達郎、優しすぎるんですけどー!!
決意が揺らぐじゃん!