以下ネタバレです
昨夜のノエルとルイスさんの勝負のことを考えていて眠れなかった。
ホテルのルームサービスをお願いしてノエルとテーブルを囲む。
朝ご飯は美味しいのに、私の頭の中は、やっぱり昨日の勝負についてでいっぱいだった。
主人公「あの、ノエル。私やっぱり思うんだけどね・・・」
ノエル「何?」
主人公「昨日のルイスさんとの勝負の約束、取り下げようよ」
ノエル「・・・何で」
主人公「だって無茶だよ、負けたら引退なんて大げさすぎるもの」
ノエル「・・・悔しくないわけ?バカにされたんだよ、○○」
主人公「そりゃ、気にならないって言ったら嘘になるけど・・・」
(でも、なんていてるのかもわからなかったし)
主人公「ノエルの気持ちは嬉しいよ?でも、私の事なら気にしてくれなくても平気だから」
ノエル「やだ、オレが許せない」
主人公「ノエル」
ノエル「・・・そんな目で見てもダメ」
主人公「だって負けたら引退なんだよ?こんなことでノエルが引退になったら、私・・・」
ノエル「オレにとっては『こんなこと』じゃない」
主人公「えっ」
ノエル「一番大切な人バカにされたんだから」
ノエル「それに、絶対負けないから大丈夫」
主人公「それはノエルが凄いのは分かってるよ。でも世の中に絶対なんてことはないわけだし・・・」
ノエル「・・・」
主人公「ノ、ノエル?」
ノエル「・・・○○はオレの事、信じてないの?」
主人公「ええっ!?」
ノエル「信じてないんだ」
主人公「違うよ、もちろん信じてるよ!でもそれとこれとは・・・」
ノエル「じゃあ信じてて」
主人公「あっ」
ふっと微笑んだかと思うと、ノエルがそっと私の頭を撫でる。
続けざまに頬に触れた優しいキスに、私は何も言えなくなってしまった。
(ノエルの事は信じてるけど・・・。でもやっぱり心配になっちゃうよね)
レース場に来て何度目かわからないため息をつく。
主人公「そりゃノエルは凄いよ。天から舞い降りた何とやらって異名までついてるんだもん」
(だけどもし負けたら?信じてるけど、やっぱり不安は消せないんだってば・・・)
サーキットを走るノエルのマシンを目で追っていると聞き慣れた言葉が聞こえてくる。
日本の記者たち・・・
最近のノエルは不調、ルイスは絶好調だと・・・
やはり午後の練習でもノエルの調子はいまいち、それに比べてルイスさんの調子はいい。
そんな様子を見ていると昨日のクルーの方に呼ばれた。
またノエルのところに連れて行ってくれると言うのでクルーの方と一緒にノエルの所へ向かうがすでにノエルは取材陣に囲まれていた。
一通り取材が終わるのを待っているとさっきの日本人記者が取材していた。
記者1「藍島選手、お疲れ様でした」
ノエル「どうも」
記者1「ここしばらくの調子は如何でしょうか?絶不調と言う噂も一部では流れていますが」
ノエル「・・・自分では特にそう思ってません」
記者2「今回のレースの対する意気込みを是非お願いします」
ノエル「絶対に勝ちます。・・・それだけです」
ノエルがレースに対して、こういう事を記者に向けて言うのはとても珍しい。
彼を囲んでいた取材陣がにわかにざわめいた。
記者1「しょ、勝利宣言ですか。大胆なコメントを頂きましたが、勝算は如何な者でしょうか?」
ノエル「自分の走りを追求するだけです。・・・誰がどんな走りをしたとしても」
記者2「ライバルのルイス・ベイン選手が随分と好調のようですが、そちらに対するコメントでしょうか?」
ノエル「オレは・・・」
主人公「あっ・・・」
いつも涼しげなノエルの声に、どこか力がこもる。
ノエルが少しだけ私の方を見た気がした。
ノエル「今回は絶対に負けません」
主人公「ノエル・・・」
取材が終わったらしいノエルは、もう一度軽く私を見てから控室の方へと行ってしまう。
多分私が行っても大丈夫だとは思うけれど、私はその場から動く気になれなかった。
ノエルの真剣さを感じて、私もノエルに応援してる、信じてるって伝えたい。
どうしたら伝えられるか・・・いい考えが浮かんだ!
私はそのまま必要なものをそろえるため買い物に出かけ、ホテルに戻り準備した。
なんとか完成させた頃ノエルが部屋に入ってきた。
鍵は?
慌てて隠そうとして慌てた結果、ガターンと言う大きな音を立てて盛大にこけてノエルに助け起こされる。
ノエル「それで?」
主人公「え?」
ノエル「なんで今日は先に帰っちゃったの?」
主人公「あ・・・」
ノエル「てっきり会いに来てくれるものだと思ってたんだけど」
(そういえばなんかアイコンタクトされたもんね。控室おいでって意味だったのかな)
ノエル「取材受けてる時、○○もいたよね」
主人公「うん」
ノエル「・・・」
主人公「ご、ごめんね、ちょっと急用ができちゃったもんだから。ノエルには後で連絡入れようと思ってたんだけど」
(買い物とか色々、熱中す過ぎて忘れちゃったんだよね)
主人公「その、本当にごめんね?」
ノエル「・・・ヤダ、傷ついた」
主人公「ええっ、どうすればいいの?」
ノエル「自分で考えなよ」
主人公「う、うーん。じゃあお疲れの藍島さんに膝枕のサービスとかでいかがでしょう・・・」
ノエル「なんで段々フェードアウトしてるの」
主人公「それは、自分で言ってて妙に恥ずかしくなったもんだから・・・」
ノエル「なんで?やってよ膝枕」
主人公「今から?」
ノエル「・・・それもそうか。じゃあ今度に取っておくってことで」
主人公「ふふ、そうだね」
ノエル「ところでさ。オレが部屋に来たとき何を隠したの」
主人公「えっ!?」
ノエル「隠したでしょ、何か。確かこの辺に・・」
主人公「あーっ、ダメ!これはまだダメなの!!」
ノエル「ダメって」
主人公「ま、まだこれは秘密なの。明日になったらわかるから、まだ見ないで」
ノエル「・・隠されると余計に気になるんだけど」
主人公「ダメだってば、ノエル」
ノエル「どうしても?」
主人公「どうしても!」
ノエル「・・・」
両手を広げて例のモノを死守する私を見て、ノエルが少し考え込む。
やがて小さくため息をつく。
ノエル「じゃ、しょうがないか。あきらめるよ」
ノエル「仕方がないから、こうするしかないよね」
ふわりと身体が抱き上げられる。
ビックリした私をお姫様抱っこのままベッドまで連れて行くと、ノエルはふっと笑った。
ノエル「○○が悪いんだよ、オレに隠し事をするから」
主人公「別に変な隠し事じゃないんだってば。明日になったらちゃんとノエルにもわかるんだし・・・」
ノエル「やだ、我慢できない」
主人公「あっ、ちょっと」
ノエル「二度とオレに隠し事なんてしないように、おしおきしないと」
主人公「んっ・・・・」
いつもよりちょっと強引なキスに息が止まりそうになる。
何度目かのキスが終わった後にようやく目を開けると、覆い被さったノエルの唇が濡れていた。
主人公「・・・もう、どこでそんな台詞覚えてきたの」
ノエル「おもに遼一かな。たまに未来とか」
主人公「・・・」
なるほど・・・
主人公「遼一さん意言わなくちゃ。あんまりノエルに変な事教えないでくださいって」
ノエル「いま他の男の名前出すとか、イヤなんだけど」
主人公「え?そんなの、あっ・・・」
手首を掴まれて動かない。
主人公「ノエル・・・?」
ノエル「最初に言ったよね、お仕置きだって、・・・覚悟して」
言うなりやわやわとノエルの手が私の鎖骨をなぞる。
触れるか触れないかの、淡すぎる指先の感触がもどかしい。
主人公「ノエル、この体勢やだ・・・無理矢理みたいで・・・」
ノエル「ダメ」
主人公「「もう、今日のノエル何かいじわるだよ・・・」
ノエル「○○が隠し事したり、オレの事を置いていったり、ツレなくするのが悪い」
主人公「そんなの」
ノエル「それに昨日の夜は、結局一緒にいられなかったから」
主人公「ノエル・・・」
ノエル「本当は○○に一秒でも長く触れていたいだけ」
ノエル「・・・・・・ダメ?」
ちょっと擦れたノエルの声が耳元に落ちてくる。
触れられた肌はもちろん、触れてない場所まで微熱を持ったように熱い。
主人公「ノエルってずるいよ。そんなのダメとか、言えるわけない」
ノエル「うん・・・」
掴まれていた手首にノエルが静かに口づけてから、ゆるゆると解放される。
私は自由になった両手をノエルの背中に回した。
ノエル「割と余裕だね?慣れてるの?」
主人公「そ、そんなことないよ。ノエルといる時はいつもドキドキしてる」
ノエル「・・・・○○、可愛い」
主人公「あっ、待って!でもノエル、明日もレースがあるんじゃ」
ノエル「オレ、そんなにヤワじゃないし」
主人公「んっ」
ノエル「今夜は寝れないから、覚悟して」
絡めた両手に力がこもり、啄むようなキスをされる。
段々と熱くなる吐息の会話を繰り返しながら、私は甘い気持ちで瞳を閉じてノエルに身を委ねた。
つづく---