拓斗いきますっ!




以下ネタバレです



主人公「拓斗さん、一緒に行っていいですよね?」

拓斗 「・・・おまえ、性格悪いぞ。そうやって人の恥ずかしいモノをほじくろうとして・・・」

主人公「他の人についていくわけにもいかないと思いますけど」

主人公「だったら、今から他の人のところに・・・」

拓斗 「バカ、なんでそーなる」

主人公「じゃ、一緒に行っていいんですよね」

拓斗 「・・・仕方ねーな」

ボスからのヒントを見てみると

『5F2B15にあるよん』

拓斗 「なんだ、この暗号」

拓斗さんは心当たりのある数字はないと言う。

主人公「小学校で思い出に残っている場所とか・・・」

拓斗 「ん・・・」

じっくり何かを思い出すかのように考え込んでいる。

拓斗 「・・・プール?」

昔よく行ってた記憶があるからと・・・

他に何か手がかりもないので私達はプールに向かうことにした。

みんなもそれぞれの暗号が解けたのか錠の掛かった校門を軽々と乗り越えるとそれぞれの隠し場所へ向かって行った。

(う・・・その前に、この門、私にこえられるかな)

辺りを見渡してみるが他に入れそうなところはない。

拓斗 「おい、いくぞ」

主人公「あれ、どこに・・・門を超えていくんじゃないんですか?」

拓斗 「抜け道、こっち」

主人公「あ、待ってくださいよ」

拓斗 「転ぶなよ」

(あっ・・・)

拓斗さんがさり気なく、私の手をとった。

(あ・・・もしかして、私が門を乗り越えるのが無理そうだと思って、違う道を選んでくれたのかな?)

主人公「・・・あの、ありがとうございます」

拓斗 「別に。足手まといを待つの、面倒なだけ」

  素直じゃないなー ( ´艸`)

正面の入り口から少し離れた、職員用の通用口へ周り、拓斗さんに手を引かれたまま、プールのある場所へと向かった。

プールでの思い出を聞くが答えてくれる気なさそう。

主人公「でも、プールが楽しい思い出の場所なんてちょっと羨ましいです」

拓斗 「別に、楽しい思い出の場所なんて言ってねーし」

主人公「えー、子供ってみんなプール好きじゃないですか。拓斗さんは水泳が得意だったんですか?」

拓斗 「!」

(あれ、今一瞬、ビクッとしたような・・・)

主人公「どうかしましたか?」

拓斗 「・・・なんでもねー」

(明らかに動揺してたよね・・・いま)

拓斗 「おまえ、なんでプールなんかが羨ましいんだよ」

主人公「うーん、羨ましいっていうか・・・小学生の頃、泳ぐのが下手で、プールにいい思い出がないんです。だから、プールが楽しいって、あんまり思ったことなくて、なぜか上手に浮かべなくて、すぐに潜っちゃうんですよ」

拓斗 「フーン、体脂肪が多いと、水に浮かびやすいって言うけど、おまえ、浮かぶの得意そうなのにな」

主人公「ちがいます!ちゃんとした理由があるんです!水が嫌いなわけじゃないんですけど、小さい頃に・・・」

拓斗 「ガキの頃?」

主人公「川で、子猫を助けようとしておぼれかけたんです。よく見たらすっごい浅い川だったんですけど、慌てちゃって」

拓斗 「子猫、助かったのか?」

主人公「はい。助けてあげた後、すぐに親猫のところに行っちゃったんですけどね」

拓斗&私「恩知らずなネコ

主人公「でも、それからなんとなく、泳ぐのが苦手になっちゃいました。子供の時って、泳げないと夏が全然楽しくないんですよね」

昔を思い出して、ため息がこぼれた。

さっきから、ずっと黙ったままの拓斗さんの顔を覗き込んだ。

主人公「そういえば、さっき、プールの話するの嫌がってましたよね。もしかして・・・拓斗さんも・・・泳げなかったんですか?」

拓斗 「・・・っ」

(そ、そんなに睨まなくても・・・)

主人公「もしかして、図星ですか?」

拓斗 「うるせー!」

(やっぱり!)

拓斗 「泳げなかったんじゃなくて、ちょっと苦手だっただけだ」

主人公「ふふ、それじゃ私と一緒ですね」

拓斗 「おまえと一緒にするな。オレはちゃんと浮かんでたし」

主人公「そんな否定しなくてもいいじゃないですか」

(拓斗さん、ますます赤くなっちゃって・・・なんだか可愛いかも)

拓斗 「オレは体育会系じゃねーんだよ」

主人公「照れなくてもいいですよ」

拓斗 「あのなぁ。大体、生物が水中から進化を遂げて二足歩行になった賜物のオレらなのになんでまた義務教育で泳ぎの練習なんてさせてんだ」

主人公「はいはい」

拓斗 「言っとくけど、今はちゃんと泳げるからな」

主人公「はいはい」

拓斗 「『はい』は一回にしろ」

主人公「はい」

拓斗 「・・・ガキの時の話だからな」

暗闇でもわかる位に顔を真っ赤にしながら、ぷいっ、と拗ねたように横を向いてしまった。

主人公「そんなに恥ずかしがることじゃないと思いますよ?私だって得意じゃないですし。拓斗さんは、なんで苦手だったんですか?」

拓斗 「おまえ、突っ込みすぎ」

主人公「だって、拓斗さんだっていつも私のことからかってるじゃないですか」

いつもいわれてるから少しお返し ( ´艸`)

とりあえず、プールに忍び込むためにはフェンスを越えなければ・・・

で、先に登った拓斗さんが手を差し出してきた。

その手を掴んで登ると結構な高さ。

仕事帰りと言うこともありヒールを履いてるからゆっくり降りることに・・・

拓斗 「飛べよ」

主人公「えっ」

拓斗 「受け止めてやる」

先に降りた拓斗さんが、両手を広げて構えている。

主人公「大丈夫ですよ」

拓斗 「いいから」

主人公「重いですし・・・逆に危ないですよ」

(それに、恥ずかしいし・・・)

ゆっくりとフェンスを降りた。

主人公「ほら、大丈夫でしょ?」

拓斗&私「人の善意を素直に受け取れないヤツめ

拓斗 「おまえ受け止めて、骨が折れなくて良かった」

主人公「また、そんなことを言うんですか。そこまで重くないですってば」

プールの中に足を入れると、飛び込み台に腰を下ろした。

再度プールでの思い出を聞いてみる。

拓斗 「ガキの頃、オレ、泳ぐのすげー苦手で・・・誰にも見られたくねーから、いつも夜に、抜け道から入って一人で特訓したり・・・とか」

主人公「夜中にひとりで来てたんですか?」

拓斗 「ん。けど、野球部の自主練帰りのケン兄にバレて・・・途中からケン兄に特訓してもらって。忍び込んでるところを、柳瀬に見つかって怒られたり」

主人公「そうなんですか」

拓斗 「で、結局、宙にもバレて・・・みんなで」

主人公「みんなで・・・?」

拓斗 「特訓した」

主人公「このプールで、みんなも付き合ってくれたんですか・・・」

拓斗さんはこくんと頷いた。

しん、と静まり返ったプールに小さな風が吹き、水面にさざ波が揺れる。

(そうか、その頃からみんなは仲が良かったんだ・・・)

拓斗 「宙のやつ、オレよりチビのくせに先に泳げるようになって・・・ムカついたからスゲー頑張った」

主人公「でも、みんなが特訓に付き合ってくれたり、更科くんが良いライバルになってくれたから泳げるようになったのかもしれないですね

拓斗 「だな・・・

星空を眺めるように空を見上げた後、拓斗さんがこちらを向いて優しく微笑んだ。

(なんだかそう言うの、羨ましいな)

主人公「私も、みんなと一緒に特訓したかったです。そしたらもっと泳ぐのが好きに慣れたかも・・・。蘭子も練習に付き合ってくれたりしたんですけど、私、全然上手にならく・・・」

(アレっ・・・いない・・・)

主人公「拓斗さん?」

主人公「拓斗さん、どこいった、わっ・・・」

グイッ

目の前からいなくなったと思った拓斗さんが、背後から、私の肩に手をかけてきた。

主人公「もう、びっくりするじゃないですか!突然そういうことしないでくださいよ」

拓斗 「今、オレが特訓してやろうか?」

主人公「な、なんの・・・」

拓斗 「おまえが特訓したいって言ったんだろ。おまえ、オレになんの特訓して欲しいわけ?」

主人公「・・・」

拓斗 「なに黙ってんだ」

主人公「だって、そんなの恥ずかしくて言えないです・・・」

  ( ´艸`)

拓斗 「へー、おまえ何考えてんの?なんの特訓の想像したんだよ?」

拓斗さんが不敵にニヤッと笑った。

拓斗 「オレと同じだったりして」

主人公「えっ!?」

拓斗 「ほら」

主人公「ちょ、ちょっと・・・!」

グイッ

押し倒されるように、肩に置かれた手に力がこもる。

主人公「そんなに押したら落ちちゃいま・・・」

グラッ・・・

主人公「わっ!」

拓斗 「あ・・・」

ザッバーン!

2人、真っ逆さまにプールに落ちてしまった。

主人公「・・・ぷはっ!」

拓斗 「うっ・・・ありえねー・・・」

主人公「もう!拓斗さんっ!ほんとに落ちちゃったじゃないですか・・・ゴホッ」

(う、水飲んだかも・・・)

拓斗 「悪い・・・」

主人公「ホントに落とすなんて、ひどすぎますよ!サイテー!」

拓斗 「いや・・・オレも冗談のつもりだったんだけど・・・おまえ、思ったよりすげー軽いから・・・まさか落ちると思わなかった」

  どんだけ重量があると御思いで?

拓斗さんは濡れた前髪を片手でかき上げると、水をかき分けて慌てて私のそばに来た。

  あらっ、ちょっと色っぽいんじゃないですかっ!

拓斗 「今のは、ほんと・・・オレが悪い」

しゅんとした表情で私の方をチラッと見て、すぐに目をそらした。

主人公「ふっ・・・」

(もう・・・なんだか可愛くて・・・怒る気もなくなっちゃった)

主人公「ほんとにびっくりしました」

拓斗 「すまん」

主人公「でも、もうしないでくださいね」

拓斗 「ん」

拓斗 「・・・へくちっ」

主人公「さすがにこの時期じゃ、ちょっと寒いですね・・・」

拓斗 「出るか」

主人公「そうですね。このままじゃ風邪ひいちゃいますし」

拓斗 「つかまってろ」

主人公「わぁっ・・・・」

水中で、フワッと抱きかかえられた。

主人公「大丈夫ですよ、自分で出られますから」

拓斗 「おまえは良くても、オレが心配」

主人公「でも、重いですし・・・逆に危ないですよ」

拓斗 「それ、今日2回目。プールのフェンス登る時」

主人公「あ・・・」

拓斗 「別に、女一人抱えられないほどナヨッてねーし。つーか、おまえ重くねーし。こんくらい、余裕。オレのことナメ過ぎ」

主人公「拓斗さん・・・」

(嬉しいけど、やっぱりちょっと恥ずかしいかも・・・)

拓斗 「ちゃんと、つかまってろ」

主人公「はい」

拓斗さんの首に、しっかりとつかまる。

そのままゆっくりと、水の中をプールサイドまで抱きかかえられていった。

拓斗 「風邪、ひくなよ」

主人公「はい」

本気で心配してくれている様子が、とても嬉しかった。



つづく---