『不破哲三氏への手紙』を読み終えた。不破氏の「かつての出版はもはや規約違反とはみなされない」(72ページ)といった現行規約の考察は、『さざ波通信』の視点とは違うが、なかなかおもしろい。以下、ごく限られた点にすぎないが、2回に分けて感想を述べたい。

現行綱領の「路線転換」

 松竹氏は不破氏の言説を捉え、現行綱領は61年綱領からの「路線転換」だったとみなしている。この点については私たちも同じ認識である。
 

綱領の全面改定をするのは、党の任務が終了した場合か「路線転換」の場合だけだ。94年の改定が大幅なのに「一部改定」と呼んだのは、「綱領の基本路線の正確さを確認したうえで」の「充実発展」だったからだ――。ということは、あなたが2004年の綱領改定を「全面改定」と位置づけたのは、党の任務の終了にともなう改定ではない以上、「路線転換」をめざしたからということにならざるを得ません。(82ページ)

 

 この「路線転換」の重要な構成部分に「自衛隊解消の三段階論」がある。『さざ波通信』では、第22回党大会決議での「自衛隊解消の三段階論」を批判、それが80年の「社公合意」で「右」転落した社会党の自衛隊解消の三段階論とほぼ同じ自衛隊の長期存続容認論そのものであること、さらにその後の志位氏の発言に従えば「自衛隊の半永久的存続論」になることを指摘した。
 だが私たちとは異なり、松竹氏はこの三段階論を積極的に評価し、少し前になるが本書とは別のところで社会党(=社民党)の衰退についても独自の見解を述べている。
 

 後者から言うと、じゃあ、自衛隊と安保にきびしく反対する政党は伸びるかというと、まったく逆である。だって、国民の8割以上が自衛隊と安保を認めていて、自衛隊の縮小(廃止ではなく)を求める人が数パーセントしかいない状況において、尖閣で何が起ころうがが、北朝鮮のミサイルがどこに向かおうが、どんな場合も絶対に自衛隊を使ってはなりませんという立場を表明していたら、どんどん支持を減らすのは目に見えている。

 しかも、ただ容認しただけではない。もし、多少なりともそこで自前の安全保障政策を立案しようと思えば、専守防衛の立場からどうするか思考し、総理大臣として影響力を発揮できたはずだ。
 ところが社会党は、日米安保にもとづく抑止戦略という、自民党政権の最大の問題点に何も手をふれることができなかった。それに対抗する政策構想を提示できなかったのである。……
 そして、その時点で、党員も支持者も、非武装・中立の理念に存在意義を感じる人ばかりになっていた。そういう理念を支持する人って、いまや数パーセントしかいないけど、そういう人たちだけの政党になってしまっていたわけである。
 そんな段階で、非武装・中立どころか、安保抑止戦略の立場に立ったら、少なくなった支持者からも見捨てられるのは当然であろう。そこから何を学ぶかが大事なことである。

 

 このように松竹氏は社会党の凋落の原因については、「右」転落したからというよりも日米安保条約と自衛隊の存続を前提にした自前の安全保障政策を持たなかったからだとする。言い方を換えると、欧州型の社会民主主義政党になりきれなかったことが原因だということになるだろうか。松竹氏が共産党についても同じだと考えているとすると、名称はともかく党の性格としては社会民主主義政党でよいということになる。
 日本が戦後一発の銃弾も放つことのなく平和国家として存続してきたのは憲法9条とそれを支える大きな民意があったからにほかならないが、それがまた社会党(=社民党)が欧州型の社会民主主義政党になりきれなかった最大の要因にもなっている。その民意が今や「数パーセント」だから、それを見限って現在の日本で空白となっている社会民主主義の位置を占めれば十数パーセントくらいにはなるんじゃないかという考えもあるだろうが、その欧州の社会民主主義政党もかつての勢いはなく右へウイングを伸ばしており、政党の性格としては中道左派である。日本で同じように右へウイングを伸ばせば、そこは立憲民主党・国民民主党などの他の野党の支持層と重なる。その層を引きつけるだけの政策的・組織的魅力は今の共産党にはない。従来の支持層が離れてしまえば、支持層が少し右へ移動しただけの「数パーセント」のままではないだろうか。
 もっとも松竹氏は二段階目での安保廃棄をめざすというように、現行綱領の立場を捨てたわけではない。従来の支持層も引きとめることを前提としている。その場合、問題になってくるのは民主集中制だろう。党指導部は、これまでは路線転換ではないとごまかしてきたが、「核抑止抜きの専守防衛論」といった明らかに路線転換であるとわかるネーミングの下で一枚岩を保つことは困難だ。おそらく「党首公選制」程度では解決にならない。従来「分派」として禁止されていたものが認められるようにならないと転換前と転換後の両方の立場を内包した党にはなりえない。もちろん、松竹氏は除名問題で規約についての異論は差し控えているが、党首を目ざすと言っている以上はそれについても考えてはいるだろう。(続く)

 

管理人(2023/9/1)