少し旧聞に属するが、日本共産党の志位委員長は8中総の幹部会報告結語において、「革命政党」という言葉を何度も使い、革命政党としての自覚をもって、共産党への反共攻撃に立ち向かえと党員を叱咤した。この言葉はメディアでも取り上げられ、少し話題になった。志位委員長をはじめとする党幹部も反響の大きさに驚き、「革命」が普通の言葉であると言って鎮静化に努めた(たとえば、7月11日の志位委員長のツイート)。しかし、この表現は必ずしも今回が久しぶりというわけでもない。すでに去年の8月23日付の日本共産党中央委員会党建設委員会の発表文書「日本社会の根本的変革をめざす革命政党にふさわしい幹部政策とは何か――一部の批判にこたえる」にそれを見出すことができる。この時、「革命政党」という見出しはかなり唐突な印象を与えたものだ(それにしても、かつてはこの種の文書は中央委員会幹部会か常任幹部会名で出たものだが、最近はそうなっていない)。

 いずれにせよ、この党建設委員会の文章にしても、8中総においても、どちらも、外部からの批判に対して党内引き締めを行なうという意図のもとでなされており、政治的守勢という文脈の中で用いられている。共産党が選挙などで前進しているときには、むしろ対外的な印象に気を遣って、「革命政党」のような「怖い」言葉は影を潜め、われわれは革命を目指しているのではなくあくまでも「資本主義の枠内での改革」を目指しているとか、「ルールのある資本主義」を目指しているのだとして、政治的穏健さのアピールにつとめたものだ。つまり、逆説的なことに、共産党が「革命政党」という威勢のいい言葉を使う時には、実際には、威勢が弱い時であり、目が外部(国民)にではなく内部(党員)に向けられているときなのである。共産党は革命政党なのだから、攻撃に負けず、がんばれと党員にはっぱをかけ、党内の引き締めを図る言葉なのである。

 しかし、共産党は革命政党なのだろうか? もちろん、同党の綱領には今なお、当面は民主主義革命を目標とし、その次に社会主義革命を目指すといういわゆる二段階革命論が依然として採用され続けており、そのかぎりではいちおう「革命政党」なのだろう。しかし、「革命政党」という言葉が党内引き締めという文脈で登場しているかぎりでは、綱領だけではなく、規約にそのような規定が存在するかどうかも見ておく必要がある。綱領が党の獲得目標を示すものとすれば、規約はいわば党の自己認識を示すものであり、それが党員の心構えや気概を形成するうえで重要だからである。革命政党の党員としての気概が求められている以上、党員になるうえで承認することが必須の規約における党の自己規定が重要になる。

 かつて、そのような党の自己認識は、規約前文としてまとめて書かれていた。2000年の第22回党大会で全面改訂される以前の旧規約を見ると、その前文には繰り返し「革命」という言葉が登場しており、いかにも革命政党としての規約にふさわしいものとなっている。とくにその冒頭の一句は、「革命」という言葉自体は登場しないものの、これから党員になろうとする者に対して、この党がどのような歴史的任務を負った党であるかの自覚を促すものとなっている――「日本共産党は、日本の労働者階級の前衛政党であり、はたらく人びと、人民のいろいろな組織のなかでもっとも先進的な組織である。また、日本の労働者階級の歴史的使命の達成をみちびくことをみずからの責務として自覚している組織である。党は、自発的意志にもとづき、自覚的規律でむすばれた共産主義者の、統一された、たたかう組織である」。「共産主義者の統一されたたたかう組織」! このような革命的内容の前文を読み、党員になった暁には自分に求められるであろう革命的任務の重さを党員は知るのである。

 だが、2000年の第22回党大会で、この、いかにも革命政党的な内容の前文はまるごと削除された。採択された新規約にはただの一言も「革命」という言葉も「共産主義者」という言葉も存在しない。革命政党的なニュアンスを強く帯びた文章や言い回しはすべて丹念に削除された。そうしたのは、「革命政党」というイメージをできるだけ払拭したかったからに他ならない。

 にもかかわらず、選挙でも党勢においても後退に次ぐ後退に見舞われ、志位委員長の体制になってからの20年間で党勢を半減させながら、いかなる反省も科学的分析も拒否している党指導部を党内外の批判から守るために、今さら「革命政党」という埃のかぶった言葉を押し入れの奥から取り出し、党員にはっぱをかける道具にしているのである。ご都合主義と言われても仕方ないだろう。

 「革命政党」は無能な指導部を守るための便利なお守りでも、水戸黄門の印籠でもない。もし本当に共産党が革命政党だというのなら、その名にふさわしく、党の深刻な低迷と後退の原因を深く探求し、党指導部自身の責任を明確にし、全党員の知恵を結集するべく、全党討論を開始するべきだろう。

 

一投稿者 2023/7/17