来年の第29回党大会で、志位委員長が議長になり、代わりに田村智子が委員長になるのではないかという話は、党内ではかなり前から取りざたされていた。最近、マスコミでもこの話がキャッチされたようで、「ディリー新潮」の記事になっている。もちろん、この間の一連の選挙で大幅に議席を減らし、そして20年以上に及ぶ委員長の在任中に党勢をほぼ半減させた志位委員長の体制がそのまま続くよりは、志位が責任を取って退任し、より若い世代に指導を譲ることは、民主主義的な党のあり方として最低限必要なことだろう。しかし、指導部の顔ぶれが変わったからと言って、共産党の古い体制が変わる可能性はきわめて低い。
何よりも、新指導部として期待されている田村智子や、そしてもう一人のホープと目されている山添拓も、志位体制のもとで忠実にその方針を実行してきた人間であり、何らかの政治的自立性を示したことはない。ただし、田村智子は、政権交代が期待されていた2021年の総選挙で、共産党が躍進するどころか後退したとき、Twitterで自分なりの反省的総括を行なった。当初は野党共闘による政権交代を中心に訴えたが、共産党が政権に入ることへの有権者の不安にうまく答えられず、有権者の関心から遊離する面があったという反省点を述べるとともに、それでも最後は共産党の新たな前進に向けて非常に前向きな決意表明で終わっている。どこにも問題がないように思えたし、共産党の幹部が率直な反省の弁を述べたことも総じて好意的に受け取られた。ところが、田村はこの連続ツイートを説明抜きに削除してしまった。
この程度の自立性さえ許されないのが現在の共産党である。そしてそれにあっさり屈したのが田村智子だった。山添拓に関しては、この程度のエピソードさえ存在しない。100%、党指導部の政策と方針に忠実に従ってきた、典型的に優等生タイプの政治家である。この2人が党の新しい顔になったからと言って、党の体制の何が変わるだろうか? そして志位は、委員長を退いた後も、長らく空席のままになっている議長職に就くだろうということを考えれば、なおさら党内体制が変わる見通しは暗い。
今日、共産党は深刻な危機のもとにあるが、そうした危機感が本当に指導部の中で共有されているとは言いがたい。そして実際に危機感を持っていたとしても、彼らが思いつく唯一の打開策は、130%の党勢拡大という恐ろしく非現実的な組織拡大路線であり、それを上からの叱咤激励と各党員の頑張りでもって成し遂げようとしている。しかし、このような根性主義で危機を乗り切れた時代はとうに過ぎ去った。今は昭和ではないのだ。
指導部の交代と同時になすべきは、少なくとも、厳しい批判的意見を含めて党内の異論を共産党の機関紙に恒常的に掲載することである。昔から批判的党員は常設の討論欄を機関紙誌上に設けよと言い続けてきたが、実現したことは一度もなかった。そうこうしているうちに、主要な党員層の高齢化が容赦なく進行し、もはや手の付けようがないほど党の足腰は弱くなっている。党そのものの発展や活性化よりも、党指導部の保身と惰性を優先させてきた数十年のつけが回ってきたのである。惰性を転換する最初の一歩は、『しんぶん赤旗』に常設討論欄を設けることである。それはきわめてささやかな一歩だが、党の古い体制が変わりつつあることを党内外にはっきりと示すものとなるだろう。
2023/7/6 一投稿者