中国はいま不動産バブル崩壊の影響で、日本のバブル後の「就職氷河期」のような状態に近づいている。中国国家統計局によれば、中国の若年層失業率が上昇中で、2023年4月の16〜24歳の失業率は過去最高の20.4%に達する(「週刊東洋経済」2023/6/10など)。
 そんな中、7月1日の「朝日新聞」の記事「中国共産党 党員1億人目前」によれば、中国共産党員は、2022年末で9804万1千人となった。実はこの30年間、つまり新自由主義経済化・グローバル化の中で、党員数の減少に苦しむ日本共産党とは対照的に、中国共産党員数は倍増しているのだ。なかでも、近年「大卒・短大卒以上の学歴を持つ党員の比率が年々高まっている」という。「党員は公務員や国有企業への就職で優遇を受けられる」からである。
 中国の若者たちが就職難という社会的問題に遭遇して、社会を変えるためにではなく、小さくなったパイになんとかありこうという動機で共産党に入るというのは、まさに現在の中国共産党の本質を表している。

 90年代からの新自由主義経済は、マルチ商法(あるいはネットワークビジネス)と似ていて、もっとも多く利益を手にするのは胴元(プラットフォーマー)であり、胴元に近ければ近いほど多くの利益を手にすることができる。言うまでもなく、胴元はアメリカであり、そのとりまきが日本を含むG7、それに韓国や中国などが続く。
 この新自由主義経済は、かつての帝国主義経済と同じくその矛盾、格差拡大の要因としての"寄生性"を抱えている。この経済政策を進める中国においては、その統治機構の特権層である中国共産党(幹部)もまた受益者(寄生者)の一員になっているのである。

 もっとも、新自由主義経済化に踏みこんだことにより中国の経済成長が加速化し、貧困層の削減※1や、さらにその後の内需拡大策による中国の輸出依存度の低下※2といった「成果」をあげていることは事実である。だが、これらの「成果」は、日本が戦後の経済成長・開発によって得た「成果」と同様の“資本主義”によるものであって、“社会主義”によるものでないことは論をまたない※3。そして、それらの「成功」が中国の“帝国主義化”の原動力ともなっているのだ※4。その「成功」の影には、「先富論」により取り残された「農民工」などの差別問題、ウィグル民族などの少数民族弾圧の人権問題など、中国の高度成長期からの課題は今なお山積したまま残されている。

 目下の米中対立は、胴元アメリカが、コロナ危機やウクライナ戦争をへてルールの一部変更を申し立てたことが主な原因だ。だが、中国の選択肢は限られている。若年層失業率の上昇といった矛盾は、結局は日本と同じように、より積極的に"世界ネットワークビジネス"に参画することで「解決」するしかなくなるのではないか。

※1:不破哲三著『21世紀の世界と社会主義』(2006年)で紹介されている「世界貧困撲滅会議」(2004年)など。習近平国家主席は、2021年に貧困脱却の達成を宣言している。
※2:国際貿易投資研究所「コロナ禍後の世界経済・貿易における中国の変容」によれば中国の輸出依存度は2006年の35%から2019年には 17%に半減している。
※3:中国の人口は世界人口の17.8%(2022年)を占めるが、セメント生産量は世界の50%(2019年)、粗鋼生産量は61%(2020年)もある。これだけ巨大な資材をつぎ込んで土地バブルによる内需を維持しているのである。「社会化された人間、結合した生産者」は「最小の力の支出で」自然との「物質代謝を行なう」というマルクスが描いた社会主義の姿と何の共通点もないことは明らかであろう。

※4:「サンフランシスコ体制はつくり替えるべきだ」とする中国社会科学院日本研究所の楊伯江所長の発言(週刊東洋経済2023/6/17より)も重大だが、精華大学「戦略・安全保障研究センター」の世論調査(2022/11)によれば、そうした発言を支える中国国内の世論がみえてくる。たとえば、91.5%が中国の利益に損害を与えた国や集団や個人への制裁に賛成、74.9%が国外軍事基地の建設に賛成、90.3%が中国人の安全が脅かされた場合の軍の国外派遣に賛成、ウクライナ侵攻の責任については80.1%が米国と西側諸国にあるとする。

 

管理人(2023/7/6)