早朝、草野球を行う球場まで1時間の道のりを自転車で進む。
途中ちょうど幼稚園の通学時間に重なってしまい、
僕の進路を30人ほどの幼稚園生の集団が塞ぐ……。
ここでベルをちりんちりんと鳴らすのも可哀想なので徐行していたら、
その中の1人が「はい、ちょっと道空けて~」と前の集団に指示してくれたのだ。
思わず「いいよいいよ、ありがとう」と僕は言ったのだが、
みんなちゃんと左右に寄り、道を空けてくれた。

いやあ、こんな小さい子たちがここまで気遣ってくれるのか。
小さな親切にちょっと感動してしまった。
通り抜けるとき、僕は左の子にも右の子にも「ありがとう」を3、4回繰り返していた。
もちろん一番感謝したのは、声かけをしてくれたその子にである。

ちょっといい気分になり、そのままのテンションで球場に着く。
試合が始まる。
この日のうちのチームの打線は繋がるつながる!
なんと初回に8点も挙げてしまった。
僕も9番打者ながらセンター前タイムリーを打つことができ、
出だし上々だったのだが、そこでこんな壁が……。

大雨の球場

午後まで降らない予報だったのに試合開始と同時に降り始めた雨が、
単なる雨でなく、これでもかというくらいの土砂降りになり、
1回の表が終わった時点で中断――即座にノーゲームになってしまったのだ。
幻の8点、幻のタイムリーである。

雨に濡れる三塁ベース(遠影)  雨に濡れる三塁ベース(近影)

その後も雨は止む気配すら見せず、雷も鳴る中、帰りはまた1時間自転車を漕ぐはめに。
もう濡れるのなんて気にしない。ひたすら漕いだ。
そして家に着いた途端に晴れ間が……。
おいおい、それは出来過ぎだろう。オチつきかい!

とんだ雨男の悲劇だったが、いいこともあった。

ノーゲームになった後、審判員のおじさん(おじいさん?)もすぐには帰れず、
僕らのベンチで談笑が始まったのだ。
その人はなんと長嶋茂雄さんと同じ学年だったそうだ。
立教の長嶋に早稲田の選手として立ち向かったらしい。

そして審判マメ知識の講義が始まる。
日本と本場アメリカでのストライクゾーンの違い。
インフィールドフライを宣言するケース。
盗塁の生死を判定するベストポジションなどなど。
なかなか知り得ない貴重な情報を身振り手振りを交えながら熱演する。
また説明しているときの目が輝いているのだ。
少年時代、学生時代に帰っているようである。

我がチームの大勝を奪った恨めしい雨のおかげで、
野球四方山話をこの胸に刻むことができた。

人生だけじゃあない。野球も山あり谷あり。
今日はノーゲームじゃなくプラスマイナスが入り交じったドローなんだと思う。

雨男の感激は、悲劇となり、喜劇となり、刺激となった。