「心のキャッチボール」で紹介した彼から便りが届いた。その言葉は空を飛んできた。携帯メールである。今、その地は雪の降る日も多く、とても寒い毎日だそうだ。東京でもこれだけ冷え込むのだから、しもやけとかできていないか心配だ。なんたって彼が東京に戻ってきたらキャッチボールの相手をしてもらわなくちゃならないんだから。しもやけの指ではボールが握れない。
 彼にとって、現在の生活は楽しいことばかりではないようだ。いや、むしろ辛く苦しいことのほうが多いだろう。でも彼は地道に一歩一歩進んでいる。ちょうど春に芽が出る前の種のような心境ではないだろうか。いまの頑張りが春に芽となり、新緑となり、花を咲かせ、夏を乗り越え、秋に収穫の実を稔らせ、また冬を越す仕度に入る……。思えばこれは1年のサイクルの、ある1ページだ。それが人間であろうと、犬や猫であろうと、植物であろうと……。
 特別な日などない。楽して飛躍できる日なんてない。だからこそ人間には伸びる時がある。結果として一気に飛躍できる瞬間は人生の中に必ずある。矛盾はしていない。先の見えない未来を胸の中で自分なりに揉みながら、いまできることに集中する。その先には自分でも想像しなかったような成功が待っていることがある。志の結晶だ。これは偶然ではない。必然のなせる技である。だから雪の下で力を蓄える「冬」の時期も大切なのだ。
 彼はそれをわかっていると思う。だからこそ彼からの短い便りに目を通すだけで、間近で話しているような気持ちになるのである。