ASDさんと定型発達家族のためのサイトを読んでみた, Topic switcheroo(議題のすり替え・スイッチ) で書いた、議題のすり替え・スイッチを、つい最近、まさに「これか」と経験した話。
最近は仕事を一緒にしなくなった後輩がいる。私がまだプロジェクトリーダーだった頃、彼は入社1年目のペーペーで、私は丁寧に一つ一つやらなければならない事、考える方法を教えた。その頃の彼の印象は「言われた事はできるけど、それ以外は考えようとも思わない、指示待ち人間」でも、別に「さぼっている」わけではなく、ただ「思いつかない」「気が付かない」人、という感じであった。その時に、「言われた事はできている。でも、実際の仕事はそれ以上の所で評価されないと、これ以上評価は伸びないよ」と、本人に伝えた事がある。
私は本能的に、この人は褒めれば機嫌よく仕事はするけれど、きつめの言葉で評価するとあーいえばこーいうので、言葉にすごく気を付けて、まず褒めちぎって、その上で「こういう所はもっと伸ばせるね!」と前向きに評価をして、この時のプロジェクトは無事に終わった。
この後輩、メガネ兄さんの部下であった。ただ、プロジェクトごとに働く私たちの部署は、プロジェクトマネージャーという、業務上の上司と働くスタイル。要するに、人事的な上司(メガネ兄さん)と、その時の業務の上司が違う事もざらなのだ。そのため、この後輩、色んなプロジェクトマネージャーと仕事をしてきたのだけれども・・・評価はよろしくない。
最近では、私と同期の同僚であるエキゾチックちゃんもプロジェクト・マネージャーとして、彼と働いたのだけれど、「ポイントずれてる上に頑固すぎて、全然視点を変えられない。提出物を出せない、優先順位が自分の興味・フォーカスしたものだけ、もっともらしい理由を述べてやりたくない事をやらないで置こうとする、あーいえばこういう、すべてはマネージャー・リーダー・クライアントの責任だという」という、問題次々と起こし、とうとう、中ボスまでエスカレーション(手に負えません報告)をされてしまった。
そのタイミングで、この後輩はこのままだと自分は評価されない・・・と考えたのか、メガネ兄さんの部下をやめ、スマイルさんの部下になりたいと中ボスに言ったのだ。
実は、何度も何度も似たような問題があった問題児のこの後輩、中ボスとメガネ兄さんは即「OK」。そして、この後輩は何と・・・私の同僚・スマイルさんの部下となった。そろそろ名前を付けたい・・・、頑固一徹なので、一徹くん、としよう。
この一徹くんと、もう一人別のチームで、前から応用力きかないし堅いし面倒なだわ・・・と思っている後輩の似たようなタイプの屁理屈くん、そして、さらに私がかつて伸ばそうと頑張って教育していた女性後輩で真面目一筋のまじめちゃん、この3人と私であるプロジェクトについてのブレインストーミング(アイディアを出し合う形の会議)をする事になった。
私: さて。今日の議題は、うちの会社全体の部署移動を活性化させるために、どうしたらよいかについてアイディアを出してもらいたいの。もちろん、部署を超えて移動するには、いろいろ難しい問題はあるんだけれども。今回はアイディアを集めるための会議なので、難しい局面は置いておいて。まず、問題がなかった場合には、どういう事ができるか。どういう事が可能か・・・という前向きなアイディアを集めたいの。これは、大ボス・アビが提案した事でもあるから、みんな前向きなアイディアをたくさん出してね。
ちなみに、部署移動活性化・・・というのは、一つの部署で同じ仕事を永遠としていると、自分自身のスキルアップにならない。会社全体をスキルアップさせるためには、それぞれが自分の活躍したい分野の幅を広げるために、部署を移動しつつ新しいスキルを身に着け、そして自分のキャリアを会社内で楽しめ!常に前向きで、チャレンジ精神を持て!という、非常にポジティブで前向きな動きである。世界中に拠点がある、バカでかい会社だからこそできる事だ。逆に言うと、「この仕事は合わないわ」と思ったら、自分に合う仕事を求めて、会社内でキャリアを変えられるという事でもある。つまり、自分が楽しく、前向きに、興味を持ってできる仕事を社内で探そう!という事なのだ。
私: まず、最初の質問ね。例えば、全くの他部署からうちの部署に「新しい事が学べる!」と短期で部署移動してきた人に対し、「うちの部署に来たらこんな事を学べますよ!」というアイディアを考えてみて。まぁ、宣伝・広告の文句みたいなものだね。「来ませんか!うちの部署!こんな事が学べます!」この宣伝文句の下にいくつか例えを入れ込むなら、どんな例えを入れ込む?
一徹くん: Sango、僕から。
私: ハイ、どうぞ。
一徹くん: まず、うちの部署で、きちんとしたトレーニング体制を作るべきだ。うちの部署に突然来た人が、うちの部署の仕事をできるわけがない。そもそも、トレーニング体制を整えてから、始めるべきだ。
私: ちょっと待ってね。最初に言ったよね。このブレインストーミングの目的は前向きなアイディアをまず出す事。困難は問題はあるけれども、それはまず置いておこうか。まずは「来ませんか!うちの部署!こんな事が学べます!」例えば?というアイディアを出してみようか。
一徹くん: うん、でも、僕が前に社内の別の部署から来た人を指導した場合に感じた問題は・・・。
私: ごめんね、一徹くん。アイディアを募りたいんだ、「こんな事が学べます!」っていう。じゃあ、まず、トレーニング状況はすべて整ったとして。その上でなら、何を学べる?うちの部署に来たら、何が勉強できる?どんなスキルアップができる?
一徹くん: ・・・・・・・・・。
黙っちゃった。
前置きでちょっと想像がついたかもしれないけれど、この一徹くん、ASD寄りの気がする。いや、ASD+ADHD両方寄り。性格的にはASD寄り、業務はADHD寄り。それを踏まえた上で、わかりやすく会話を導いているのだけれども。やっぱり、自分が得意な分野に話を持って行きたがる。思えばいつもそうであった。彼は自分が知っている分野にすべてを結び付けて話す事が多い。「自己中心的なの?」とか「どうしても自分が話したいの?」とエキゾチックちゃんも思っていたみたいだけれども、前々回書いた記事(議題のすり替え)を踏まえた上で考えると、彼は自分が得意な話題でないと、こういう議論は苦手なのかもしれない・・・いや、多分、苦手なのだろう。そして、自分の得意な議題に切り替える癖がついているのかもしれない。
私: 他に誰かあるかな?
まじめちゃん: Sango、リスク管理の概念はうちの部署で学べると思います。後、うちの部署は会社全体の業務にかかわる事が多いから、会社で行われている事業の一片ではなく、全体像が見られるというのもよい点かと。
私: いいね!その調子!他にある?
屁理屈くん: Sango,質問があるんだけど。
私: はい、どうぞ?
屁理屈くん: 実質、色んな問題があると思うんだけど、それはどうやって解決していくの?
私: それは、後から考えるの。今日のブレインストーミングは、その前段階。まずはアイディアを募る。アイディアを募って、理想の形はどういう形なのかな・・・というのを探るの。そして、理想を探った上で、その理想をかなえるための問題点を上げていく。そして、問題解決に向けるの。今はまず、その理想のためのアイディアを集める段階。
屁理屈くん: でも、実際問題、問題はあるから解決しないわけにはいかない。
私: 問題はあるね。解決はしないわけじゃないよ、後でするの。今は、問題のブレインストーミングではなく、前向きな理想形態のアイディアを出してほしいんだよね。
私: じゃあ、次の質問行くね。「例えば、自分が別部署に異動するとして。どんなチームに移動して、どんな事を学びたい?どんな事に興味があって、何を学んでみたい?
一徹くん: 僕は、常に、他の業務部に疑問があって。
私: うん?
一徹くん: 他の業務部に行って、彼らのプロセスにどうしてこんな問題があるのかを教えたい。
私: ・・・・・・・・うーん。それは、学びに行くんじゃなくて、教えに行くんだよね。自分が学ぶ事はなに?
一徹くん: ・・・・・・・・。
まじめちゃん: どこでもいいの?
私: うん、どこでもいいよ!アイディアだからね。
まじめちゃん: じゃあ、私、マーケティング戦略に興味がある。どうやって、うちの会社の商品をどういう戦略で売ろうとしているのか、それを知る事によって、私達のプロジェクトも、マーケティング戦略も考えた観点から動かせるようになると思うから。
私: いいね!すごくいいよ!うちの部署の幅もそれで広がるもんね。
屁理屈くん: ・・・質問があるんだけど。
私: はい、なんでしょう。
屁理屈くん: うちの部署で仕事をするためには、経歴や資格が必要だけど。どうするの?
私: うん、屁理屈くん。問題は後で考えるっていう話だよね。だから、まずはアイディアを。経歴や資格については、問題がなかったとして・・・その上で、君ならどういう部署に行って、どういう事を学びたい?
一徹くん: Sango、ひとつ思いついたよ。営業サポート業務部に行ってみたい。
私: おお!そして、何を学ぶ?
一徹くん: ・・・・え?
私: 営業サポート業務部で何を学ぶの?どんな事が知りたい?どんな風に仕事の幅を広げたい?
一徹くん: ・・・・え?そこでの業務を・・・何をやってるのかを学ぶ。
こりゃ、あかん・・・・・・・・・。
結果、3人集めて、まじめちゃんからまじめなアイディアを集められただけで、後の二人からは全く・・・。
今日までで、約18人から同じように話を聞いているのですが、今のところ4人ぐらい・・・こんな感じで全然話が聞き出せないで、彼らの興味にフォーカスした話のみか、全く会話にならないかで終わっている。
私は、こうした同僚たちを発達障害だと決めているわけではないし、正直、もしそうだとしてもそうじゃなくても、別にどっちでもいい。寧ろ、そこはどうでもいい。そうではなく、ASDやADHDの特性を理解した上で、彼らがどうしてこういうコミュニケーションの場で躓くかを知っておくと、私もアプローチを変えやすいし、彼らがうまくコミュニケーションできるようにサポートできるんやないか・・・と思っているのである。
しかし、実際はめっちゃ難しい。課題がありすぎる。
一徹くん:
- 私がした質問には一切答えず、多分、知っている単語やフレーズを組み合わせた上で、自分が答えやすい質問に頭の中で組み替えたかのように、自分なりの回答をひねり出した
- そして、「別部署から来た人がうちの部署で何を学べる?」という質問、今思うと、確かにASD寄りで自分目線が強めな人だとわかりにくい質問だったかもしれない。だって、これ、視点を自分ではなく、「別部署から来た人」に移さないと出ない答えだから。もしかしたら、彼には「君は、別部署から来た人に何を教えられる?」と聞いた方が、答えやすかったのかもしれない
- 「別部署で何を学べるか」という質問も、多分難しいのだろう。その部署でどんな事が起き、それが今の自分とどう関係してくるのか。つまり、点と点をつなげて線にする作業だ。点を点で理解して、線にするのが苦手なASD寄りさんには、難しいのかもしれない。
屁理屈くん: 彼も、今までのやり取りの経験からASD寄り(ただし、ADHDっぽさは一切なさそうな感じ)に思う
- 最早、質問に答えてくれない。彼は、プロジェクト・リーダーの地位にいるのだけれども、自分が答えられない質問には、常にこうやって別の質問で切り替えして、答えてはくれない
- 最終的に、学べると思う部署名を挙げてくれたが、「何を学びたい?」と聞いたところ、一徹くんと同じように「え?その部署の仕事を」という返事が返ってきた。やっぱり、点と点で線にならないのか・・・。
難しいなぁ。やっぱり、ASD寄りチームには、視点を自分視点にした会話方法にしないと、うまい事行かなさそう。もっとよいコミュニケーション方法、どんな相手からもアイディアを聞き出す方法を、もうちょっと考えないといけないなぁ。
まだまだである。
ASD寄りさんと、お互いに気持ちよく「ああ!すっきり!」となるような会話ができるのには、まだまだ修行がたりぬ。