【ライブ】7/10中井智彦「ウタツムギー愛がカタチになったならー」(②楽曲編) | あずさの時々観劇レポ

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大人になってからのミュージカルファン。神田恭兵さん、中井智彦さんのファンです。どうしても書き溜めておかないとと思った舞台の観劇レポを時々綴ります。

 (ストーリー編)の続きです。

   当日のセットリストです。

 

(中井さんTwitterより)

 

 私の拙い、そして勝手な感じ方ではありますが、ウタツムギを構成していた楽曲について、メモを残したいと思います。

 

M1 「愛がカタチになったなら」(須澤紀信)【Vo. 須澤紀信さん】

 須澤さんの、やさしい、やさしい曲。この物語の大きなテーマ。

 ストーリーテラーの須澤さんは語りに続いて、ごく自然に、このやさしい歌を歌います。須澤さんの歌は詩的で、歌ってもあくまでも語りなんです。

 

M2 「りんご」(須澤紀信)【Vo.中井智彦さん】

 物語の登場人物、「中井智弘」による最初の劇中歌。 

 人と自分は少しずつ、みんな違うんだ。という歌。そのことへの戸惑いとあきらめ。そして、達観。物語の主人公、「中井智弘」が自分らしさや個性について考えるところのある人物だと伝わる曲。

 

M3 「ありふれたLove Story~男女問題はいつも面倒だ~」(Mr.Children)【Vo.中井智彦さん】

 ウタツムギの劇中では、「中井智弘」が学生時代から付き合ってきた彼女との別れを予感しつつ歌う歌。

 恋なんて、運命の糸なんて、多くは所詮まやかし。メロディアスな旋律にシビアな現実がのった曲はかっこよくて、でも自分を裏切った彼女の部屋の明かりを見つめつつ、合鍵を握りしめて歌う「智弘」の姿が切ない。

 

M4 「上を向いて歩こう」(坂本九)【Vo.中井智彦さん】

 恋人との別れが決定的になってしまった夜、智弘が歌う。

こんなに切ない、「上を向いて歩こう」を聴いたことなかった。

 

M5 「サラリーマンの唄」(阿部真央)【Vo.中井智彦さん】

 劇中では、いま現役サラリーマンの智弘が歌う。サラリーマンならみんな感じているはずの不満や主張を心のなかでだけ威勢よく息巻く歌。

 私、中井さんのこういうロックな歌大好きなんです。すごく迫力があって、説得力もある。なのに、なぜか同時に、歌の中でひたすらこきおろされているその上司にも、聴きながらすごく同情してしまう。沈黙に気を使って話しかけてきたり、楽しませるつもりで話題提供した話しがすべて裏目に出る...彼もまた、哀れなサラリーマン。

 オリジナルのこの曲を知らなかった私ですが、あとから探して聴いてみたところ、オリジナルの阿部真央さんの歌の中ではその連想は不思議と感じられなかったので、中井さんの歌の世界が描き出すリアリティなのかなと思っています。皆さんの感想が、すごく知りたい。

 

M6 「やっつけ仕事」(椎名林檎)【Vo.水野貴以さん】

 就職した「水野貴恵」が、多忙すぎる社会人生活のなかで歌う歌。

 学生時代、あんなに感情豊かで、自分の気持ちにまっすぐだった「貴恵」が、忙しい日々に忙殺され、こんなに無感動になってしまっていることに茫然とする。でも、貴以さんのこの曲の歌唱はとても格好よくて、輝いている。でも、「ねぇ、好きってなんだっけ?思い出せないよ…」って、「何にもいいと思えない」って、若い女性にとって、いえどんな人にとってもあまりにも悲痛な叫びだと思う。

 

M7 「夢追い人」(中井智彦/長濱司)【Vo.中井智彦さん】

 とても中井さんらしい曲。もう、智弘さんと智彦さんを越えて、どちらの中井さんも、この曲の前には同一人物として溶け合っている気がしてしまう。

 理想と情熱がある。だから、妥協できない。現実と折り合いをつけるなんて、できない。求められているのかどうかはわからない。けれど、自分にしかできない、自分らしい仕事をしたい。

 けれど、社会は誰もに、会社のコマに、社会のピースになることを求める。それが息苦しい、耐えられないと感じる人の叫びの歌。なぜか余韻として残るのは、「野獣(ビースト)」の苦悩する姿でした。「愛せぬならば」みたいな曲だなと感じます。

 

M8 「卒業写真」(荒井由美)【Vo.中井智彦さん/水野貴以さん】

 荒井由美さんのあの名曲を、中井さんが歌うんです。卒業後、4,5年を経て再会した後輩の「貴恵」の変わらない姿に、けっして思い通りではない現実のなかでいつのまにか変わってしまった自分を映して、嘆くような切ない歌。けれどそこに貴以さんの「貴恵」の歌声が重なり、だから同時にこれは、「貴恵」から大好きな先輩への大きな大きなエールの歌でもあり、ぬくもりが感じられる。

 

M.9 「愛がカタチになったなら」(Rip.)(須澤紀信)【Vo.中井智彦さん】

 

M10 「僕が一番欲しかったもの」(槇原敬之)【Vo.中井智彦さん】

 劇中の「智弘」さんが歌うのですが、これもまた、とても中井さんらしい曲。とてもお人よしで、自分の見つけた素敵なものをみんな誰かにあげてしまう「僕」の歌。でもそれを受け取った人たちの笑顔が、「僕が一番欲しかったもの」だった、なんて。

 昔はヒーローになりたかった「智弘」が、ヒーローって別にそんなに特別なことじゃない。周りの人を幸せにする。それがヒーローだって、この曲を歌う智弘はもう、気づいたのかな...

 

M11 「裸の心」(あいみょん)【Vo.水野貴以さん】

 これは須澤さんの作ったプロットの、一番素敵で現代的にリアルなところだと思うのですが、2人の関係を動かすのがいつも、あのまっすぐで感性豊かな、「貴恵」の方なんです。

  「智弘」に再会したことで、「貴恵」も人を好きになる感覚を思い出せたのかな。また感情が動くようになって、もう一度、先輩に想いを伝える。貴以さんの透明で飾らない、けれど誰もを惹きつける歌声がまさに「裸の心」で、本当に素敵でした。

 

M12 「触れる」(須澤紀信)【Vo.中井智彦さん/水野貴以さん】

 ウタツムギのための、須澤さんによる書き下ろしデュエット曲。中井さんと貴以さんが背中合わせで歌うこの曲が、とても素敵なんです。2人の歌う歌詞が、声の響きが。特に、貴以さんが歌う、

「君が言ってた もしも自分の仕事が

誰かの暮らしを彩る そう思えたら」

という、智弘への想い。

そして、

「嗚呼 両手目いっぱいに かき集めたもの

手放してしまえば 自分じゃないような気がして」

これは、智弘に向けられた言葉でもあり、貴恵自身のことでもあるのかなと、思った。 

「両手目いっぱいにかき集めたもの」って、智弘がこれまで抱いてきた理想や情熱かもしれないし、彼のことを好きだと思う、貴恵自身の気持ちのことでもあるはず。それはどちらも、手放してしまえば、自分

じゃなくなるような、自分にとって本質的なもの。

 あぁ、なんて素敵なデュエットなんだろう。

 そしてこの曲の中で、2人は愛のカタチに触れることになる...

 

M 13 「愛がカタチになったなら」(Fin.)(須澤紀信)【Vo.須澤紀信さん/水野貴以さん/中井智彦さん】

  

 実際には、曲と曲の間に、須澤さんの声で、須澤さんの描いた物語世界が語り紡がれます。それによって、2人の人物像や物語が、はっきりと見えてくる。そして須澤さんの語りには数々の名言がちりばめられていて、その名言によっても物語が補強され、重なり、深みを持っている。

 そして、物語と音楽に完璧に寄り添い、つなぐ長濱さんのピアノの演奏。さらに重なる、須澤さんのギターと歌声...なんて贅沢なライブだったんでしょう。とても言葉では伝えきれない、彩り豊かであたたかな世界がそこにありました。是非、配信でご覧ください。

 

 歌は歌でも、情景や状況を歌う詩的な須澤さんの歌は語りになり、俳優の中井さんや貴以さんが歌う歌はセリフになる。その違いが自然に感じられたことも、シンガーソングライターの須澤さんたちが書く歌と、俳優の歌うミュージカルソングではブレスの位置が違うというお話など、新鮮で、でも納得でした。

 

 二部のトークショーの楽曲について、もう少しだけ続きます(多分)。

 

 7月25日(日)23:59までアーカイブ配信中。須澤紀信さんの描く壮大な世界観を、中井さんと貴以さんの彩り豊かな歌の世界を、是非ご覧ください。

 

 

 (アフタートーク編)へ続きます。