村上さんを好きだと自分の気持ちを自覚してから、彼女の顔をまっすぐに見れない。彼女の前だと上手く喋れない。
照れくさくて仕方が無いのだ。
いい歳こいて恥ずかしい…。
彼女の息子に会えなかった。
つまり、彼女にも会えていない。

彼女と僕の関係を語る上で、彼女の息子の存在は無視出来ない。
倫理的に道義的にというのではなく、そのたった9歳の男の子こそ僕と彼女を結ぶ唯一最大の接点だから。

好きだよ。
天の邪鬼な態度も、彼女にそっくりなその笑い方も。
感謝してる。
あの子が居たから彼女に出会えた。
また、人を好きになることが出来た。

彼女の隣りで生きる人生と同じくらい、あの子の父親になる事にも憧れる。

でも、時々考えてしまう。
もしも、今と全く違う関係で、たとえばアルバイトの先輩後輩、たとえば日曜の公園の話相手、ただの男と女として出会えていれば。もしかすると。
なんて。
休みの日はしんどい。

村上さんに会えないから。
寂しい。と言うより、苦しい。
自分がどれだけあの人のことばかり考えているのかを実感し、あの人と自分自身を隔てる距離を嫌でも思い知らされる。
今年のキンモクセイを見るたびに胸痛むのは、そこにあの人を感じて叶わない想いに心焦がれるからだろう。

今、あの人がなにをしているのか、僕には想像も出来ない。
ただ、心穏やかに笑っていてくれるならいいなと想う。
ホンの一瞬でもいいから僕もその心に置いて欲しいなんて願うのは傲慢だろう。

知っているから。
あの人の全てはたった一人の息子の為にある。
僕が好きになったのはその強さ、美しさだから。