後藤健二さんと湯川遥菜さんの死について思うこと | 自転車に家族を殺されるということ

自転車に家族を殺されるということ

交通犯罪犠牲者の命が紙クズ扱いされる司法を変えていきます。フェイスブック・Twitterも発信中。
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2014年1月28日に判決が出て裁判は終わりましたが、私の交通犯罪遺族活動は続いています。

命、そしてその尊厳が奪われる事件が起きました。
例の「イスラム国」による日本人人質殺害事件です。


このブログでは、政治的な事柄や時事的なネタは、
意図して極力触れないいまま、今まで書き続けてきました。


自転車問題の報道からも、極力距離を置いて触れずにきました。
(報道のほとんどがくだらない内容という理由もありますが)


理由としては、遺族活動をしていて、言葉を発している以上、

そうした臭みをまとうことは本意ではないと考えたからです。


ただ今回の事件は、日本って何なんだろうという思いも含め、
いろいろ考えてしまうことがありましたので、少し触れます。


もちろん悪はテロ組織であることが大前提ですが、例えば、
自己責任論と安倍政権批判論、家族へのバッシングの問題、

政治利用、クソコラグランプリ、一部著名人による自決要請や

在日がどうのこうのの発言、追随する世論の二転三転、等々が、
いろいろ考えたことのほとんどですが、ここでは封印します。


ただ命の尊厳は、少なくない人が声を出し続けなければ、
決して十分には守られないし、容易に損なわれてしまうことを、
今回の事件を通じて、あらためて感じました。


後藤さんと湯川さんの命の取り扱い方の違いも、
(まだまだ小さい声のようですが)問題になりました。
後藤さんは人格者だけど、湯川さんは軽率だった・・・等々。


確かにそうだったのかもしれないけれども、
だからと言って、湯川さんを冒涜することは失当だと考えます。


もちろん、命は平等ではありません。


あえて毒を吐きますが、私たち被害者遺族の多くにとって、
もし加害者が悲惨な死に方をしたということを知ったとしたら、
本心としては、それはとても喜ばしいニュースになると思います。
(もちろんそう思わない、真に品行方正な方もいるでしょう)


私だって、小躍りして、ガッツポーズくらいはすると思います。
(もちろん人目のあるところで、事実を知って気持ちを聞かれたら、
 神妙な表情を作って、「そうですか。コメントはありません」
 とやり過ごして、「良識ある社会人」の体裁を保つと思います)


断ち切られて喜ぶべき命があるのは事実だと考えています。
例えば、麻原彰晃に天寿をまっとうさせる理由などないはずです。


しかし罪のない人の命は、最大限尊重されるべきと考えています。


当たり前のことですが・・・


しかしその当たり前のことが果たされないこともあります。


湯川さんは、奥様を亡くされ、事業を模索しているうちに、
異国で、一人寂しく、あのような死に方をしてしまった。
その心の孤独を思うと、とても悲しくなります。


後藤さんは、覚悟を決めた最後の表情がいつまでも残ります。


「目を閉じて、じっと我慢。怒ったら、怒鳴ったら、終わり。
 それは祈りに近い。憎むは人の業にあらず、裁きは神の領域。
 そう教えてくれたのはアラブの兄弟たちだった。」
https://twitter.com/kenjigotoip/status/23238345864


ここ数日、よく引用される後藤さんの過去のツイッターの言葉。
あの時の後藤さんの表情も祈りだったのか。


残虐に殺され、動画や画像を公開され、遺体も返されない。


残された奥様と幼い娘さん2人の置かれた悲痛を考えると、
面識のない人に対し、こんなことを書くのもどうかと思いますが、
表現しようのない、押し潰されるような気持ちを感じます。


昨年生まれたという娘さんは、うちの娘と将来同学年になります。
その娘さんは、父親のことをどう聞き、どう思って成長するのか。


かつてイラクで殺された香田証生さんの殺害映像は、
今でも、誰でも、簡単に見ることができてしまいます。
ネットに出回った画像や映像は半永久的に流れ続けてしまう。
かつてあるバンド(名前も知らないような泡沫バンド)が
ライブ会場のバック映像にその映像を使い、問題になりました。


吐き気のする、ゲスの極みです。


後藤さんについては、そうしたことのないように祈ります。


また週刊誌で、後藤さんが風俗店経営していたと報じられました。
そして、その風俗店経営者が同姓同名の別人だと公表しています。
http://blog.livedoor.jp/kenji_goto/archives/43128448.html


この方が「言うまでもないこと」と書いているように、別人だとは、
簡単にわかる話なので、意図して悪意ある記事が出されたのでしょう。


その週刊誌編集部より、この風俗店経営者の「後藤さん」のほうが、
はるかに高潔で、常識的で、きれいな心を持っていると感じています。


後藤さんと湯川さんの命は奪われてしまいましたが、
この国において、その尊厳は守られていくことを祈っています。


そして二人の死が、政治的な利用道具にならないことを祈っています。


残されたご家族が、醜悪な二次被害に遭わず、同情ではなく理解を、
そして必要な支援を受けられることを祈っています。


後藤さんと湯川さんのご家族は、犯罪被害者遺族です。

誰からの支援のないままでは、きっと潰れてしまうと危惧しています。


そしてそれは、なんとなくではなく、ご家族を知る具体的な人たちから、
積極的に始めようとしなくては、なされないことだと思っています。


そして月並みで、何も響かない言葉であることを承知の上で、
それでも、後藤さんと湯川さんの冥福を祈りたいと思います。
もしあの世があって、天国と地獄というものがあるとしたら、
二人のいる場所が天国でない理由はどこにもないはずですから。