台所の整理を終えた私と妹は
次に、
食器棚の上にあるものを
おろしました。


2つの大きな箱には
大量の、様々な大きさの
ジップロックが
ぎっちり入っていたので、

私と妹で分けて
もらうことにしました。


母は箸袋や
ティッシュケースや
キーホルダーなどの
手芸作品をたくさん作っては、

ジップロックに入れて
ガールスカウトのバザーに出品し、
その売上を福祉団体に
寄付していました。


ジップロックの他にも
袋状になっているフィルムシートが
手つかずのまま、
大量に出て来ました。


私が「これ、
何だろうね❔キョロキョロ」と
妹に言うと、

妹は
「それ、
会社の商品を
包装してたやつ。


検品した後、
忙しくて手が足りない時は
ママに袋詰めを
頼んでたの。


こんなものを
とってたんだ…。


ママ、
一生懸命
手伝ってくれてたんだけどね…。」
と私に答えて、

なんとも言えない
さびしそうな顔をしました。


「そうだったんだ…。」


母が妹夫婦の作業場で
袋詰めを手伝っていた事を
私も思い出しました。


電話で
「頼まれちゃったのよ〜。」と
言いながらも、

あの頃の母は少しでも
妹夫婦の役に立とうと、
張り切っていました。


妹の前の夫が亡くなって
会社は整理しました。


敷地は借金の担保として
農協に取られました。


今は会社の建物は
誰かが借りて
事業をしているようです。


母はログハウスを出る時に
何かに使えると思ったのか、

会社の袋を
全部持って来たんだなぁ…と
私は思いました。


なんでこんなにと呆れるくらい
大量のジップロックを
笑いながら
山分けしていた私達は、

不意を突かれて

鼻の奥が
ツンとしました。


妹は、
「これは私がもらう。」と言って
大量のフィルムシートを
引き取りました。


なんとなく2人して
しばらくの間
シン…と静かになりました。


それから、私は妹に
「あの箱も
あらためようか。」と
箱を指差しながら
声をかけました。


食器棚の上には
蓋の横に
「ママの宝物箱」と書かれた、

元はお中元か何かの
コーヒーの詰め合わせの箱が
置いてありました。


「うん。
そうだね。」


妹も答えて、

私は椅子の上に乗って
その存在だけは
あるなと思っていたけれど
中身は全くわからない、

食器棚の上の
その箱を取って
テーブルの上に下ろし、

妹と一緒に
蓋を開けました。


続きます。