母の部屋の片付けを
していた時の話です。


母のリビングにある
本棚の本の中には、

私達が子供の頃
読んでいた絵本が何冊か
残されていました。


その中の
「へっこきあねさが
よめにきて」という
絵本を見て、

妹が
「わ〜、
懐かしい❗爆笑」と
声を上げました。


 


その絵本は、


とあるお嫁さんが

お婿さんが吹っ飛ぶくらいの

ものすごいおならをして

一度は離縁されそうに

なったのですが、


おならによって

船を沖に漕ぎ出させたり

宝物だけ引き寄せたりして

嫁入り先に喜ばれ

最後はめでたく

幸せになるという、


抱腹絶倒の

楽しい昔話です。



「お姉ちゃん、

この本もらったら❔



この本、

ママがお姉ちゃんに

買ってくれたんだと思うよ。」と

妹が私に

言いました。



私は子供の頃

2歳で読み書きが

出来たそうで、


周囲が私のことを

この子は神童だと

ほめそやした話は、


耳にタコが出来るほど

聞かされたものです🐙



父と母は

この子は天才かもしれないと

いうことで、


本を次々と私に

買い与えてくれました。



そんな訳で

父が建てた家には

ものすごくたくさんの

本があったし、


私に望みをかけた母は

私にたくさんの習い事を

させたのでした。



妹達はほとんど

本に興味を

示さなかったので、


数々の本はどれも

本の虫だった

私のものと言って

差し支えありませんでした。



「うん…。ショボーン



実は、

私ね。



今まで言えなかったんだけど、

その本、

嫌いだったんだ。



子供の頃

ママがいつも

面白そうに

すごく楽しそうに、


私のことを

『へっこきあねさ』って呼ぶのが

私、


本当はすごく

恥ずかしかったし、

ずっと嫌だった。



絵本自体は

全然悪くないんだけど、


なんでそんな変な

恥ずかしい名前で

私を呼ぶのかなって

いつも悲しかった。



パパの家に

置いて来た本のうち

私が大好きな本は

他にあったんだけど、


私は関西に住んでいたから

パパの家から荷物を選んで

運び出す事が

出来なかったじゃない❔



後になって

ママのマンションで

この本を見つけた時、


ママがたくさんの本から

わざわざ選んだのが

この本なんだってわかって、


悲しかった。



ママには全然悪気は

なかったんだろうし、


ママがせっかく

気に入っていて

楽しそうなのに、


子供の時は

自分の気持ちを言う事が

出来なかったんだ…。」と

私は言いました。



「そうだったんだ…。



ママって確かに

あんまり周りの気持ちに

忖度しないというか、


そういうとこ

あったよね。



残念だけど、

仕方ない。



それが私達の

ママなんだから。」と

妹は私に言いました。



「うん。



完璧な人なんていないし、

完璧な親もいないからね。



パパはパパなりに

ママはママなりに

頑張ってくれた事は

よくわかってる。



気を悪くしたり

悲しませると

いけないからって、


大人になっても

嫌なら嫌って

本当の気持ちを

ちゃんと言わなかった私が

多分、


悪いんだろうね。」と

私は言いました。



絵本はどれも

母にとっては

思い入れが強い本だったと

思うのですが、


残念ながら

私と妹にとっては

ピンと来ないもの

ばかりだったので、


とりあえず未来の

誰かの孫の為、

捨てずに全部そのまま

置いておく事にしました。



続きます。