私と妹が
実家仕舞いをするのは
これで一体
何度目なのでしょう。


父の親族に陥れられて、

父が亡くなって
父の家を売る時は、

父の家は大きくて
広かったのに、

間借りしていた家が
小さすぎて
狭すぎたから、

私達はほとんど何も
持ち出せませんでした。


父の家を売ったお金で
母が買ったマンションは、

駅前にあり便利で
それは素敵な
マンションでした。


祖母も同じマンションに
別の部屋を買って
引っ越して来て、

祖母を看取った後は
母の名義に変更して、
そこに新婚の
妹夫婦が住みました。


姪っ子も生まれて、
あの頃私達は
幸せでした。


ところが、
妹の夫は長男で
舅から呼び戻されたからと
両親と同居することを
決めました。


私は反対したけれど
妹は夫に従い、
母も妹に
ついていきました。


母は、妹が住む家の隣に
マンション2部屋を売って
素晴らしいログハウスを
建てました。


甥っ子達も生まれて
とても楽しかったです。


ところがそれから
様々な事があって、
妹の夫は
自ら亡くなりました。


妹も姪っ子もうつ病になり、
ふるさとを出ました。


それからまた
色々な事があり、
妹は母を近くに
引き取る事を決めました。


2020年10月に
母がログハウスを出た時は、

またすぐ戻って来るつもりで
色んなものを
置いてきました。


ところが、
妹の元義弟が
ログハウスの鍵を壊して
勝手に住みついてしまい、

仕方なく私達は
2021年10月に
ログハウスを無償で
明け渡しました。


父の家を引き払う時と
ログハウスを完全に
引き払う時は、
本当に辛くて
苦しかったです。


人を憎んだり恨んだら
穴二つだから、

絶対に私は
その修羅には立つまいと
歯を食いしばって、

逆境は受け流して
笑って前を向いて
過ごして来ました。


そして今また
私と妹は2人で
亡くなった母の部屋を
片付けているのです。


6畳の物置兼納戸は
分け入っても分け入っても
奥に辿り着けなくて、

私達はまるで
なくした大事なものを
あてもなく探すように、

段ボールを1つずつ開けて
中身を確かめながら
母の生きていた痕跡を
消していくのです。


無心に手を動かしていると、

なぜか、
私達が小さい頃
母が絵本を読んでくれた時、

安寿と厨子王の囃子唄を
母が歌ってくれた声が、
急に頭の中に
蘇りました。


安寿恋しや
ホウヤレホウ、

厨子王愛しや
ホウヤレホウ、

鳥も生あるものならば、

疾う疾う逃げよ、
追わずとも。



あの絵本も
みんなみんな父の家に
置いてきたのにね。


囚われて奴婢となり
盲いた老婆が、

茣蓙に広げて干す米に
群がる雀を追いながら、

それでも我が子の名を
けして忘れずに
呼び続けるように、

私は黙々と
作業に没頭しながら、

心の中で
亡くした父と母の名を
呼び続けていました。


ねえ、
パパ、ママ、
どこにいるの❔


どうか私達を
置いていかないで。


パパとママに
会いたいよう。