夫から

「お母さん、

今、

息が止まったよ。」と

言われた私と妹は、



「えぇ~っ❗ガーン

「イヤーッ❗ガーン」と

同時に悲鳴をあげて

母の所に駆けつけました。



「ハァーッって

大きな息をついたから、

多分そうだと思う。」と

夫が言ったので、


妹は

「お姉ちゃんがこんな時に

〇〇さんにお茶淹れるとか

お湯が出ないとか、

変な事言うから…ムキー」と

言いました。



「ごめん…ショボーン」と

私は謝りました。



妹はなおも母の手を

握り続けている夫に

イラァッとしたらしく、


「ねぇ、〇〇さん、

その席、

もう替わってもらっても

いいかな❔えー」と夫に言って、


何時間も前から

妹が座っていた定位置に座り

母の左手を握りしめると、


「ママ、

まだだよ❗

まだ逝っちゃ駄目❗」と

言いました。



私もベッドの反対側に

椅子を持ってきて

母の右手を握りしめ、


「ママ、ごめん❗

戻って来たから

息して❗」と

声をかけました。



すると、母は

フゥーッと大きく息をして、


また止まりました。



私と妹は

「ママ、ありがとう。」

「ママ、大好きだよ。」と

両手を握りながら、


その後もずっと

声をかけ続けました。




結局母は

その後も3回、


少し時間をおいては

大きく息をして

また止まるというのを、


繰り返しました。



母は夫の時を含めて

大きな呼吸を

5回しました。



母は最後の最後まで

本当に頑張って

生きようとしていました。



そして、

もうその後は

母は2度と

息をすることは

ありませんでした。



最期の息は

1月11日の

午後11時17分でした。



母が子供の頃

檀家さんの具合が

いよいよ悪くなり

葬式の依頼を受けると、


僧侶の祖父は

「人は、

満ち潮の時に生まれて

引き潮の時に亡くなる」と言っては

よく暦を

見ていたそうです。



1月11日は新月の

大潮の日で、

干潮の開始時刻は

10時57分でした。



母は昔からの

言い伝えの通りに

干潮の始まりとともに

大きく息をし始め、


私達に両手を取られながら

最期の息を

引き取りました。