昨日旅行から帰って来て

アゲハの幼虫さんが

たった1ぴきだけ

葉っぱの間に隠れているのを

見つけた私と夫は、


レモンの木の鉢植えを

玄関の敷石の上に

運び込みました。



昨日も今日も雨で

外壁の塗り替え作業は

お休みでした。



まる1日たっても

幼虫さんがちっとも

葉っぱの間から出て来ないので、


私は心配になって

幼虫さんをそっと昼に

つついてみたのです。



そして、

幼虫さんが

多分私と夫が鉢植えを運ぶ

ずっと前から、


ひっそりと息絶えていた事に

やっと気づきました。



よく見ると幼虫さんは

少し警戒している時の

幼虫さん達がするように

ちょっとだけ上体を起こして、


そして出すかどうか

まるで迷っているように

ほんの少しだけ

黄色いツノを出したまま、

静かに息絶えていました。



アゲハさんは毎年

春から秋まで際限なく

何匹も何匹もやって来ては、

我が家の庭のちっぽけな木々に

卵を産み付けていきます。



そして毎年

何十匹も何百匹もの幼虫さんが

じゃんじゃん生まれては

あっけなく、


鳥さんや蜂さんが

我が子を育てる為にと

摘ままれて

巣に連れ去られて行きます。



アゲハ蝶になって飛び立てるのは

いつも本当に一握りの

アゲハさんだけです。



生きて子孫を繋げる為に

アゲハさんも必死だけれど、

鳥さんも蜂さんも

必死なのです。



生き物の営みは厳しくて

毎日が食うか食われるかの

真剣勝負だから、


人間の私は

いつでも畏敬の念に打たれながら

ただ自分の庭の草木に

一切薬を撒かない事しか、


彼らを手助けする事は

出来ませんでした。



そんな、


数え切れないほど毎日

死んでは生まれ続ける

アゲハさん達の

いつものありふれた

たった1ぴきなのに、



小さな小さな体を

かすかにもたげて、


目を凝らさないと

見えないくらい

もっともっとちっぽけな

黄色いツノを

チビッとだけ出したまま、


硬くかじかんで

そのまま息絶えてしまった

干からびた幼虫さんが

葉っぱの間に貼りついたまま

取れないのを見て、


私はどうにも悲しくて

やり切れなくて、


自分が責められて仕方なくて

午後はずっと

涙目でした。



4つの鉢植えを

家の中にしまう事は

狭い我が家には

出来ない相談だったけれど、


幼虫さん達は

足場の内側で生まれ育って

獰猛な鳥さんや蜂さんを

見たこともなく

毎日ゆっくりと

過ごしていたのに、


ある日突然兄弟がみんな

どこかに連れ去られてしまって、


孤独と恐怖に包まれたまま

たった1ぴきで

隠れ続けて、


そのままひっそり

息絶えてしまったのだと思うと、


アゲハ蝶さんに

申し訳なくて

涙が止まらなかったです。



泣きながら

ガザやウクライナの事を

私は思いました。



アゲハ蝶さん、

あなたの子供達のこと、

本当にごめんなさい。



たった1ぴき残った

サナギさん、

どうか無事羽化して

他のアゲハ蝶さんと出会って、


どうか無事に

産卵してください。



我が家もよそと同じく

生存競争は

厳しいのだけれど、


卵達が孵化して

あなたも産卵した時には

もっと良い場所を何とか探して

鉢植えを移動させますから

どうか許して下さい。



どうして生き物は

生き物を食べて

脅かし合ったり

しのぎを削って

争わないと

いけないのか、


どうしたら生き物は

争わないで

生きて行けるのか、


植物も生き物だし

動物も生き物だし、


生き物を食べないと

生きていけない自分が

辛いと

初めて思った、

今日の体験でした。