「まだ在宅で
ママを看てた時
ママから、

『樹木希林の娘のように
◯子がママの事を
話してほしい。』って
言われたの。


『◯子が一番ママのそばにいて
一番ママのことを
わかってるから。』って。


そんな機会あるかな❔」


「ママの事を話すって、
お葬式の時❔


実際、
◯子はずっと
ママと一緒に暮らしてたから
ママのことは身近で見て来て
よくわかっているし、

私は今までずっと
ママにそんなに好意的じゃ
なかったからね。


あと、
ママはパパの事今まで
散々悪く言ってたから、

それだけに
自分が亡くなった後の
言われようが、
気になるのかも。


◯さん(夫)や
◯(息子)達の前で
パパの事を悪く言うママが
私はいつも
すごく嫌だったから、

◯子にそんな事頼むなんて
なんか意外だな。」


「わかんないけど、
多分お葬式でって
事だと思う。


『樹木希林の娘の挨拶が
すごく良かったから、
◯子に話してほしい』って
言われたんだよね。


だからその後、
私、
内田也哉子の挨拶文を
ネットで調べて読んだ。」


「樹木希林も
西原理恵子みたいに
娘に対して
相当ひどい親だったよね。」


「そうなの❔
良く知らない。」


「ピンクとかの
可愛い服をねだっても
シンプルで地味なものしか
買ってくれなかったとか、

サンタさんにお願いしたものとは
全然違うものを
プレゼントされたとか、

食べ物は自然食品で
甘味は一切なしとか、

インターナショナルスクールに
入れられたとか、

也哉子さんがインタビューで
前に言ってた。」


「へぇ〜。
お姉ちゃん、詳しいね。」


「だって、
そもそもママに
樹木希林の本をあげたの、
私だもん。」


「そうなの!?びっくり


「うん。

樹木希林って、
ママに似てるって
思ったから。


そしたらママ、
案の定
樹木希林にどハマリして、

ずっと座右の銘みたいに
ベッドの横に何冊も
樹木希林の本を置いてたし、

ログハウスからアパートにも
全部持って来てた。」


「知らなかった…。」


「樹木希林は内田也哉子さんが
たった1人の娘だから、

自分の希望の星として
すごく期待してたし、

だから色んな事を
娘に押し付けたんだなぁって
思いながら、
私は樹木希林の本を読んでた。」


「でも、
親って多かれ少なかれ
そんなもんじゃないの❔」


「そうでない親も
中にはいると
思うけどね。


樹木希林とかママは
頑として、
自分の考えを押し通して
曲げなかったよね。


◯子や●子(上の妹)には
全然そんな事なかったのに、
ママは私にだけ
異常に厳しかった。


それは、
ママは私を
ママが入りたかった
女子大学に入れて、

バリバリ都会で働いて
成功して、

ママが出来なかった夢を
かわりに私に
叶えて欲しかったからだと思う。」


「それは絶対
そうだったと思うよ。」


ここで私は
過去の母と
子供の頃の私との間にあった
葛藤について
スイッチが入ってしまい、

今まで何万回も
妹に繰り返し
話していた事について、

まるで琵琶法師のように
一くさり吟じずには
いられませんでした。


「テストでいい点取ったのに
『なんで百点取れないんだ』と
正座させられて
長時間のお説教。


みんなとテレビが観たいのに
『あんたは勉強しなさい』って
夜ご飯食べたら
私だけいつも
自分の部屋に行かされた。


学校のみんなと
話が合わないから
どうしても歌詞カードが欲しくて
お小遣いで明星を買ったら、

『こんなのミーちゃんハーちゃんが
読むものだ』って
ビリビリに破かれた。


泣きながら拾い集めて
セロハンテープで貼ったよ。


『一番早くお嫁に行くから』って
私だけ家事をさせられたし、

ママの望み通り
◯高に入れば
門限は7時で、
部活が終わった後
寄り道も出来なかった。


色つきリップを塗れば
『化粧なんかして❗
落としなさい』って
鬼の形相。


その上
『義務教育じゃないんだから
これからお弁当は
自分で作りなさい』って言われて、
毎朝5時起きで
3年間お弁当は
自分で作らないといけなかった。


◯子も●子も
家事をしなくても
全然何も言われなくて
夜は遊び歩いてるし、
2人のお弁当はママが
作ってあげてるのに。


●子と私は1歳しか
違わないし
◯子とも3歳しか
違わないのに、
なんで私だけ
こんなに扱いが違うんだろうって
ずっと思ってた。


それでも逆らう事は
しなかった。


だってママの事が
憧れだったし、
大好きだったから。


だけど高3の時
偶然◎さん(母の恋人)
の事を知って、

『女性は貞操を守る事が
一番大切』って
あんなに言ってたのに、

言ってる事とやってる事が
違うじゃんムキームカムカって
ものすごく失望して、

一気にママの事が
気持ち悪くなったし、
信じられなくなった。


だから私は
◯さん(夫)と一緒に
遠く離れた
関西の大学に行った。


その時は
すごく悲しかったけど、

ママは
◯子がいれば、
別に私なんていなくても
大丈夫だった(笑)。」


「…お姉ちゃんは
大学入学で
うまく家から逃げられたから
良かったんだよ。


お姉ちゃんが
いなくなった後
ママは私に
全振りで向かって来たから、

私はママから逆に
逃げられなくなった(笑)


ママは常に子供に
依存してるのよ。


ママはお姉ちゃんの事は
長女で初めての子供だから
思い入れも期待も
大きかったけど、

ママは私には
特に何にも
期待してなかった。


たまたま私とママは
一番相性が
良かったんだと思う。


私はなんだかんだで
ママの事を許すし、
私はママの欲を
満たしてくれるから
きっと一緒にいて
一番楽だったんだよ。」


「そうだと思う。 
親子も相性って
あると思うよ。」


「そう思う。
●ちゃんとママみたいに
ぶつかる相性ってある。」


「●子とママは
性格似てるからね。


私はママのやなところを
子供の頃嫌って言うほど
押し付けられたけど、

ママは私に
たとえ異常でも
愛情はあるんだってことは
わかってたから、

だからこうして今
ママのお世話が
出来るんだと思う。


でも、
大人になってから
私はママに色々
あの時は嫌だったとか
散々言ったから、

ママは私に対して
遠慮があるし、
あと、
少し私の事が
怖いんだと思う。」


「でもさぁ、
●ちゃんの場合は❔


●ちゃんは今まで
散々ママの事を振り回して
迷惑かけたよね❔


それでもママは
●ちゃんの為に
親としてガッツリ
孫の面倒も見てたし、
ずいぶん支えてあげてたよ。」


「客観的に見ればそうでも
親を振り回すのは
子供の特権だし、

どんなに愛情を注がれても
子供の方で
それでも愛情が足りないと
感じるんなら、

残念だけど
駄目なのかもしれない。」


「●ちゃんって、
自分の事しか考えないからね。


自分の用がある時しか
昔から
連絡して来ないし。


お姉ちゃんとは昔から
気が合ったし
なんでも話せたけど、

私は●ちゃんとは合わないし
ママも、
もしママが私の同級生だったら
多分仲良しには
なってない。


だからママと●ちゃんは
お互い様って感じ。」


「この間
毎日新聞の人生相談読んでたら、

『姉2人が
母親と断絶状態。
自分だけが親とは
良好な関係を築いてるけど、
姉達と母を和解させるには
どうしたらいいか』って
いうのがあったのよ。」


「まさにうちじゃん。
で、回答は❔」


「『あなたは十分親に
愛されているが、
お姉さん2人はあなたと較べられて
お母様から愛されていないのが
文面から感じられます。


あなたとお母様の関係は
仲が良すぎて
密過ぎる結果、

2人で結託してお姉さん2人を
批判している状態に
なってしまっています。


そこにはお姉さん達の
入る余地はないし、
仮に入っても
自分が愛されていないのを感じて
余計傷つくだけです。


だからお姉さんは
自分の心の平安を得られる
家族をそれぞれ見つけて、
お母様とは
距離を取ったのです。


親は往々にして
子供をえこひいきしますが
片方が親と密着し過ぎている場合は
一体化しているので、
もしもあなたの願いを
解決したい場合は
あなたがお母様と心理的
物理的距離を取ることが
必要です。


そうすれば、
あなたが望むような密着は
お姉さんは出来ないかも
しれないけれど、

お姉さん達はお母様に近づき
それなりの関係を築く事が
出来るでしょう。


ただ、
ご相談を見る限りでは
お母様はあなたと
夫婦のように密着した生活を
望んでいるし、

あなたもそれを受け入れているので
現状では解決は
難しいでしょう。』だって。」


「(笑)
私とママだね。


ただ、
私の場合は
お姉ちゃん達がママから
離れていったから
受け入れざるを得ないという面も
あったんだけどね。


実際、
◉ちゃんが◯んで
私がふるさとを出てからは、

お姉ちゃんも●ちゃんも
ママとの距離が
近づいてたしね。」


「うん。

うちの場合に当てはめると
◯子はママから
十分愛されてきて、

それを感じられるから◯子は
ママとの関係が保てた。


私は愛される為の条件が
えらい過酷だったけど、

いびつでも愛されている事は
感じていたから、
今もママとは
関係性が保ててる。


●子の場合は
ママとは元々合わないし
悪い方にえこひいきも
されていたから、
修復は多分
出来ないんだと思う。


ぶっちゃけ、
私と◯子とママの3人で
今のこの関係性は
安定しているし、

●子がいない事で
揉め事も起こらないから
ある意味平和。


それから、

ママは夫と不仲で
孤独だから
子供に夫婦と同じくらいの
密着を求めるけど、

ママは◯子と密着しているのが
一番幸せなんだ、

私と一緒にいたい訳じゃ
ないんだって
私は子供の時にもう
気づいてたから、

だからあえて
私はママからは
身を引いていた部分も
あるんだよ。


もしもママが私に対して
◯子にしたのと同じように
接してくれていたら
私も◯子みたいに
なれたと思うけど、

ママが相手に選んだのは
私じゃなかったから。


ママは私に遠慮があるし
私が怖いから、
言う事も素直に聞くし
ご飯も完食するんじゃない❔
(笑)ニヤリ


「(笑)
親子も人間だから
仕方ないよね…。


私も■(甥っ子)とは
いつもぶつかる。
似たもの同士だからね。

でも、
性別が違うから
まだ大丈夫。


私はずっと一緒にいるのに
ママの生命保険の受取人が
お姉ちゃんだってわかった時、

やっぱりママが
頼りにしてるのは、
長女なんだなって
思ったよ。」


「家の事も墓の事も
私が跡取りだからって
ずっと言われてて、

なんか長女って
負担ばっかりで
いいことないなーって
思ってたけど、
迷惑料かな(笑)


まぁ、どっちも継ぐ必要は
なくなったけどね。」


「(笑)
なんだかんだ言っても
お姉ちゃんの事は一番
ママは頼りにしてるし、
自慢の娘なんだよ。


私はいつまでもただの
可愛いだけの末っ子(笑)」


「私はそっちの方が
良かったんだけど、
長女に生まれちゃったんだから
もうしょうがないね(笑)


ママは私が生まれた時は
初めての子育てで
妄想マックスだったんだから
仕方ない。」


「うん。
そうだよ。


前に、
●ちゃんがママに
『子供の頃ママにされた
こんな事が嫌だったから
謝ってほしい』って
言って来た時、

ママは
『自分がその時
自分なりに考えて
一生懸命やって来た事を
子供に対して謝るつもりは
今後もない。』って
突っぱねたの。


その時は、
『意固地にならないで
子供が傷ついたって
言ってるんだから
謝ったらいいのに』って
思ったけど、

ママはママなりに
矜持があるんだよね。」


「自分が■(姪)達に
やって来た事を考えたら、
●子は自分の事を棚に上げて
そんな事
よくママに言えるなって
思うけどね…えー


私ね、

いつも人の事は
トータルで見ないといけないって
思ってるの。


私のオシメを替えてくれて
おっぱいをあげてくれて
離乳食を食べさせてくれて
服を着せてくれて
学費を出してくれて
ここまで育ててくれた人だから、

たとえ嫌な所があっても
ママは私のたった1人の
大切な親。


本当はパパとママには
仲良くしてもらいたかったし
ずっと一緒にいて
ほしかったけど、

たとえ実の親子や兄弟でも
うまくいかない事もあるし、

人間みんな
パーフェクトじゃなくても
仕方ないって
思ってるよ。


だって私が、
いつでもパーフェクトを求められて
キツかったから。


だから私は
謝られなくても
水に流す。


パパもママも
そして私も
みんな人生1年生で、

わからないなりに一生懸命
頑張ってやった
だけだからね。」


「そう思うよ。


自分が親になったら
親って意外とダメダメだって
よくわかる。


だから私なんか
すぐに子供に
謝っちゃうけどね。」


「私も❗(笑)


西原理恵子もそうだけど
ママもさ、

本当は子供が
傷ついたから謝ってって
言って来たら、

居直らないで
素直に反省したり、

書くのやめてあげたら
良かったのにって思う。


西原理恵子の娘も、

作品が残り続けるし
晒され続けるから
私達よりもっと
ずっと辛いだろうけど、

愛されてなかった訳じゃなく
ただどうしようもなく
自分の親はダメな人なんだって
もうサッサと切り捨てちゃって、

どんどん前に進めば
いいのになって思う。


難しいのかも
しれないけど。


多分、
西原理恵子とお兄ちゃんが
密着してて仲良しなのが
作品として目に入るから、
余計辛いんだろうね。


私の場合、
近づくと傷つくから
ママがお金持ってて
はっちゃけてる時は、
ママのそばには
近寄れなかった。


ママが歳取ってお金なくなって
弱ってきたら
近づけると思ってた。


そして実際
その通りになった(笑)」


「(笑)
ママ、丸くなったもんね。
感謝出来るようになったし。」


「そう。
お金も家もなくして、
やっとよ(笑)」


「元気だった時のママを
操れた私は
猛獣遣いだね(笑)」


「そうそう。
物欲が強いママは
手に負えなかった(笑)


何もなくなったママは
カオナシみたいに
大人しくなった。」


「良かった良かった(笑)」


「他人が作った文脈の中でないと
生きられなかったのは
何でだったんだろうね。」


「さあ。

終わり良ければ
すべてよしだよ。」


「そうだね。

葬儀の時は
私がママの仰せの通り
喪主やるから、
◯子は弔辞よろしく。」



「了解。
じゃあまた明日
行ってくるね。
おやすみ。」


「ありがとう。
よろしく。
おやすみ。」


続きます。