三姉妹では私だけが
着物を着る為、
私は大量の着物を
祖母と母から
譲られました。
祖母の着物は
地味だけれど
どれもとても
上等なものです。
生前の母は
そんな祖母の着物を
「野暮ったい」
「田舎くさい
」と言って
」と言って全く袖を通そうとは
しませんでしたが、
ヤドカリも動物も人も
自分が住む場所に
一番ふさわしい装いを
するものです。
お寺の大黒さんだった祖母が
粋で派手な着物など
着る訳がありません。
祖母の着物はどれも着やすく
私は大好きです。
母は着物で出かけて
百貨店で店員さんと
立ち話をしている時に
働く事をすすめられ、
専業主婦だったのに
４０歳過ぎてから
パートで勤め始めました。
私と同じ客寄せ運なのか
お嬢様育ちの身ごなしと
目利きの良さの為か
母にはすぐに良いお客様が
たくさんついて、
母はあれよあれよという間に
正社員になり、
あっと言う間に課長にまで
昇進しました。
そんな母の着物は
派手ではないけれど
シックでどれも筋が良く、
どれも「わぁ…、
いいなぁ…❤」と
思うものばかりです。
もちろん私は母の着物も
どれも大好きです。
祖母の桐箪笥と
母の岩谷堂の箪笥と
二棹もの箪笥が
我が家の和室には
鎮座していて、
百枚はゆうに超える
祖母と母の着物が
ぎっしり詰まっています。
そして、
恐ろしい事に、
着物を着る人には
着物を譲りたいという人が
我も我もと押し寄せるもので、
２階の私の桐箪笥には
祖父や父や伯父や
友人から譲られた男性着物が
ぎっしり詰まっています。
正直、家族総出で
躍起になって毎日着ても
着倒せないほどの数です。
コロナで全く外出出来ず
コロナ後も母の発病で
外出出来なかった私は
当然ながら着物を着る機会が
何年もなかったのですが、
なぜか今、
猛烈に着物が着たくて
どうしようもないのです。
どうしてこんなに勃然と
着物が着たくなったのか…。
やっぱり、
母が私の所に
来ているのかしら…。
他の人の頼みは
聞きたくないけれど
ほかでもない母の頼みなら
聞いてあげたいから、
忌中が明けたら
四十九日が終わる前に
一度お着物を着て、
コロナが明けたら行こうねと
母と約束していた銀座へ
出かけようかと
思っています。