ひとつ前のブログからの
続きです。


下の妹が前の夫と
結婚する時は、
親類が多いからと
特に婚家の指示があり
喪服は結納金から
婚家の家紋をつけて
夏冬誂えたという話は、
母から何遍も
聞かされていました。


私は結納がなかった為
花嫁道具の着物は
すべて女紋(母の実家の家紋)
だったので、
その話を聞かされる度に
「本当はやっぱり
婚家の家紋に
変えるべきなの❔」と
不安になり、
落ち着かない気持ちに
なりました。


だから
気に病む程ではないけれど、
お茶会の時などは
人の着物の家紋に
目がいくのでした。


それが、
下の妹の前の夫が
突然亡くなるという
もっとも起こってはならない
痛ましい出来事が、
妹の身に
降り掛かりました。


私と夫と長男は
仕事や学校を早引けして
慌てて義弟の通夜に
駆けつけました。


この時、
ショックで呆けたのか
元々考えなしに
何でも思ったままに
言う性格だからか、
通夜の席での
母の失言の数々が
本当にひどくて、
ショックもさることながら
私は怒りと恥ずかしさで
めまいがしました。


下の妹からは
「もうママには
耐えられない。

ほっとくと何を口走るか
わからないから、
ママがこれ以上
何も言わないように
お姉ちゃんはママから
目を離さないで、
明日はずっと
見張っていて。」と
隅で懇願される程でした。


(その時の母の
失言のエピソードだけで
二つくらいブログが
書けそうですが、
色々思い出すので、
今は書けません。)


私はその席で
妹の婚家の仏壇の
家紋を見て、
さらに大変な事に
気づきました。


母が和室に用意していた
妹が明日着る絽の喪服は
「丸に鷹の羽」という
家紋でした。


私がその日、目にした
妹の婚家の家紋は
「亀甲に蔦の葉」
だったのです。


今まで見たことがないほど
たくさんの人が参列して
今まで見たことがないほど
たくさんの人が号泣している
果てしなく長く辛い
お通夜が終わり、

葬儀には出席しない
夫と長男を見送って
車で母と二人で
母の家に帰ってから、

私はあらためて母に
「ねえ、
家紋が違うよね。

一体どういうこと❔むかっ」と
尋ねました。


「結婚前に誂える時
○ちゃん(義弟)から
『鷹の羽』って聞いたと
思ったんだけど、

間違えたみたい。」と
母はきまり悪そうに
答えました。


「えっ…。

○子(下の妹)が結婚してから
●さん(義弟の弟)が
亡くなったり、

ちっちゃいおばあちゃん
(義弟の祖母)が
亡くなったり、

ちっちゃいおじいちゃん
(義弟の祖父)が
亡くなったり、

今までたくさん葬儀は
あったじゃない❔

せっかく結納金まで
出してくれて
向こうの家紋でって
わざわざお願いされたのに、

誰のでもない家紋じゃ
○ちゃんに
申し訳が立たないよ。

どうして今日までに
直さなかったの❔」


「それが、
直さなくちゃ
直さなくちゃとは
思っていたんだけど、

もう呉服課もやめたし
デパートもなくなったし、
お金もかかる事だから
つい忘れてしまったのよ。」


妹の婚家の地域では、
お通夜は洋服でも
大丈夫だけれど、

葬儀では
遺族と遺族の身内は
全員着物の喪服という
きまりです。


母と妹は二人とも
着物の喪服を何遍も
着ているだけでなく、

母は人に何着も
着せ付けており、

お墓にも仏壇にも
何度も行っているはずです。


私は今までの
妹の婚家の葬儀では
家が遠いのと、

亡くなったのが
妹の婚家の親戚だったのとで
お通夜だけ出席していて、

母と妹の喪服を
全く見ていなかったので
家紋が違うということに
その日まで全く
気づけませんでした。


「信じられない…。

私、
今まで◎(姪)達に
訪問着を仕立てたり、

ママに色留袖や
紬を仕立てたり、

コツコツ反物から
着物をみんなに
誂えてきたよね❔

なんで今まで
言ってくれなかったの❔

話してくれたら、
私がすぐに直したのに。

明日が葬儀じゃ、
いくら何でも
もう間に合わないよ。

○さんが亡くなって
○子が妻として
喪主を務めるのに、
○子が不憫じゃない。」


母は黙っていました。


「ねぇ、
いい事考えた❗

鷹の羽はやめて、
せめて明日は
桔梗の喪服を
着せたらいいじゃない❔

私の喪服をかわりに
○子に着せてあげてよ。」と、
私は提案しました。


私は中学校の同級生と
結婚したので
もし夫か私の身内に
葬儀があったら
母の家に泊まって
着替える段取りに
なっていた為、

その時までは
喪服はすべて
母の家に置いていました。


私の喪服の家紋は
夏冬とも女紋の
桔梗の筈でした。


すると、
母は今度こそ
本当に言いにくそうに
切り出しました。


「それがね…。
ママもそう考えたんだけど、

あなたの喪服は
どうも着られそうにないのよ。」


「えっ、
どういう事❔

着られそうにないって、

私の喪服、
今どうなってるの❔」


私は義弟を失った
慟哭の気持ちはどこへやら、
すっかり動揺して
焦ってしまいました。


続きます。